黄昏症候群
沈んでいく夕日がとても綺麗で、私は思わず足を止めた。
帰り道に土手沿いを歩くのはいつものことだったけれど、こんな景色があるということを久しく忘れていた。
同時に、鈍くなっていた感情に気づかされた。摩耗する日々は思考停止を友としていたのだ。結ばれた手を振り払えるほどの力が、さっきまでの私には無かったのだろう。
足早に姿を消そうとする夕日を眺め、反射する銀の小波に遠い過去を見た。
幻影は蟲に喰われており、ところどころで穴を開けている。
夕日が完全に死んだのを確認した夜は、そっと帳を下した。
私もまた同じように、右手に持っていたナイフを突き刺した。
流れていく赤は、私のものとは思えないくらいに綺麗だった。