図書室
文学少女×サッカー部
初恋未満?
夕暮れの日差しが差し込む図書室。窓際に置かれた3台のテーブル、その一番左端がいつもの指定席。
そこで読書をするのが菜子の日課だった。
菜子は所謂、文学少女というやつだ。小さな頃からいつも本ばかり読んでいたので、気がついたら眼鏡をかけていたし、いつのまにかクラスでも目立たないグループに属していた。
もともと、他人と話すのが苦手だったこともあり、目立ちたいとも思わなかったので問題もなかった。
そんな菜子に最近、一つの変化が起きた。
毎日、図書室に通い好きな本を数冊借りていくのはいつも通りのこと。ただ、そこに窓際のテーブルで読書をしていく、という行為が増えただけ。周囲の人から見れば、そんな小さな変化なのだが、菜子の中では限りなく大きな変化といえた。
何故なら、窓際に座って読書をしているはずの彼女の手元の本のページは先程から1ページもめくられていない。もう一つ付け加えるのならば、菜子の視線も本に向けられてはいなかった。視線の先、それは窓の外、グラウンドに向けられていた。
グラウンドでは、さまざまな部活動が行われているのだが、見つめている先はいつもサッカー部のとある人物。
名前も学年も知らない、ただ部活動にひたむきに頑張る姿にいつの頃からか気になって仕方がなかった。
彼がボールを追う姿を無意識に探して、心の中で応援する。本ばかりだった彼女はまだその感情の意味を理解してはいない。
ただ、今日も手元の本のページがめくられることはなかった。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします。
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