スレイ
「…」
奴隷を買ってみた物の、やはりまだ仕草がぎこちない。とりあえず先ほど忘れていた鑑定をかけてみる。「《鑑定》」
そしていつも通りにウィンドウが――現れたことには現れたのだが、そこに書いてあるのは
『鑑定に失敗しました』
の文字だけだった。あれ?なに?プライバシーの保護?…とりあえず本人から話を聞いておこう。
「で?お前さんの名前は?」
単刀直入に聞く。
「名前はありません。どうぞご自由にお呼びください。」
なん…だと…?名前がついてないのか。なんて呼ぼうかな。はっきり言って俺自身に誰もが敬服するようなネーミングセンスを持っているとは思わないしな。
よし。困ったときの神頼み、もとりテスラ頼みだ。
「そう言ってるけど、テスラ、名前を付けてやったらどうだ?」
「えっと…あまり自分で名前を付けることに不安があるので、クリダさんがやってくれませんか?」
だめだった。もうなんか適当でかっこよく聞こえるやつでいいよね!
うーん。インスピレーション、インスピレーション…
「じゃあ、スレイ、なんてのはどうだ?」
奴隷の3文字をとっただけの、自分でもあきれるほどのネーミングセンス。
「スレイ、ですか。」
「わかりました。今からスレイ、と名乗らせていただきます。」
そしてどちらも微妙な反応。まあいいや、名前を決めることに時間をかけるつもりもないし。
「じゃあとりあえず俺の質問に答えてくれ。」
…なんか尋問してる気分になってきた。
「お前は魔術が使えるか?」
「はい。黒魔術と三色魔法を少々。」
「自身のステータスは分かるか?」
「いえ。主人は伝えてはくれませんでした。」
「俺自身のことはどう思う?」
「どうもなにも、主人と奴隷の関係でしょう?」
「じゃあステラ―彼女のことは?」
「女性ですね。お見受けしたところ冒険者仲間、といったところでしょうか。」
「好きな女性のタイプは?」
「クリダさん?」
「ゴメンナサイ」
すっごいテスラににらまれた。素直に謝っておく。
…しかし本当に言われたことしかやらないな。この場で「死ね」と言えば舌を噛んで死んでしまいそうな雰囲気まで持ち合わせている。
でもなんか心から忠実って訳でもなさそうなんだよなぁ。鑑定もブロックされたし。
もやもやした気持ちを抱きながら日課へと向かった。




