並んで歩く為に。
「蓮ちゃん、岩谷さんとナオちゃんは?」
猛と蓮が座り込んで少しした頃、舞と栞が二人の所へ駆け寄って来た。
手には何やら包を持って。
「んーと…あの辺かな…?」
蓮の指差す人差し指が微妙に左右へと振られる。
「え?どこどこ?」
「あ!ほら、今少し見えた!」
「え?どこよ!」
「あの辺をずーっと見てればたまに見えるよ。」
「?」
舞と後ろで話を聞いていた栞が蓮の指差す方向を凝視する。
丁度緩やかなカーブを描いている城壁辺りだ。
二人が凝視する事数分…
「…あ!今のナオちゃんだ!」
「えー!栞には見えなかったよー!」
「ほらほら、あのカーブの辺り…よーく見てて…ほら!今!」
「…あ!本当だ!」
光に煌めく銀髪を靡かせ一瞬城壁を走るナオの姿が見えた。
…城壁を…走る?
「…えーと…ナオちゃん何をしてるの?」
姿が見えた事に喜んでいた舞が壁を走っている事の異常性に気付き問い掛けてきた。
「何かな、走るスピードが早過ぎて城壁使わなきゃカーブを曲がれないみたいだわ。兄貴に関しては壁を使って曲がるの上手すぎて少し前から姿が見えないし…」
「え!?岩谷さんも一緒なの!?」
「…多分な。用があるなら呼んでみれば?アレは多分…夢中になり過ぎて止め時見失ってる感あるし…」
呆れ顔の猛がヤレヤレと首を振る。
やがて舞と栞は顔を見合わせせーので二人を呼ぶ。
「岩谷さぁーーん!ナオちゃぁーーん!」
「お兄ちゃぁーーん!ナオちゃぁーーん!」
すると、遠くに少しボヤけた二人の姿が見えたかと思った次の瞬間にはもう目の前まで来ていた。
「どした?」
「舞ちゃん!栞ちゃん!どうしたの?」
息も切らせず普通に問い掛けてくる二人。
「………二人は何処を目指してるんです…?」
舞の辛辣な質問に苦笑いする浩二。
実際には別な用事があったのだが、余りの事に口から出た言葉がコレだ。
「いやぁ…何か途中から楽しくなっちゃって…瞬動使わずに何処までスピード出せるか試したくなってさ。」
「酷いよ浩二!どんどん先に行っちゃうんだもん!」
「ゴメンな。でも、ナオも結構速かったぞ?大分慣れたんじゃないか?」
「んー…どうかな…前を走る浩二の真似してただけだしね。」
「兄貴の真似が出来る段階で色々おかしいからな?」
ナオの発言に思わず突っ込みを入れる猛。
「えー…だって、折角こんなに凄い身体作って貰ったんだよ?ずっと夢見てた事が出来るようになったんだから、手を抜くなんて事出来ないよ。」
「ナオちゃんの夢って…何?」
舞は、ナオの言う夢というものが気になり思わず聞いてしまう。
すると、少し寂しそうな顔を浮かべナオが口を開く。
「浩二と一緒に歩く事。猫の時には出来なかったから…」
「…ナオちゃん…」
「だから、これからも色んな事を一緒にしたい。こんな世界だもん、浩二の隣に並ぶなら…もっと頑張らなきゃ!」
「…ナオ。」
浩二は優しく笑いながらナオの頭を撫でる。
そして、ナオが猫の時の癖なのか耳の後ろ辺をコリコリと引っ掻くようにする。
ナオは気持ちが良いのか、顔をフニャっとさせて浩二に擦り寄る。
「あー…アレは完全に猫だな。」
「だね。いいなー!私もナオちゃん撫でたい!」
猫の時からナオに撫でさせて貰えなかった蓮が羨ましそうに浩二を見る。
そんな蓮を見てナオが口を開く。
「だって、蓮ちゃん撫で方が乱暴なんだもん…猫の時一回撫でさせてあげたら…痛かったんだからね?」
「…そうだったの?」
何故か撫でさせて貰えない理由がこんな所で明らかになった。
「ゴメンね…ナオちゃん…」
ガックリと項垂れる蓮。
その姿が余りにも不憫だったのだろう、ナオは名残惜しそうに浩二から離れると項垂れる蓮の元へと歩み寄るとその場でしゃがみ頭を差し出す。
「優しく撫でてくれるなら…良いよ…?」
「…っ…ナオちゃんっ!」
瞳を輝かせナオに飛び掛りそうになる自分を押さえ付け、ゆっくりとナオの頭に手を伸ばす。
「…ん…っ…」
「はあぁ…っ…柔らかい…幸せぇ…」
余程良い手触りだったのだろう、完全に顔が緩みまくっている。
まぁ、控えめに言ってナオの毛並みは手触りも最高だからな。
そんな蓮の姿を羨ましそうに見ていた舞が思い出した様に口を開く。
「あ、ナオちゃん服の調整済んだみたいだから持って来たんだった。」
「本当!?やったぁ!」
舞の言葉に耳をピクッとさせたナオは素早く舞の元へと走り寄る。
うん、走る時の力加減も上手くなってるな。
「はい、ナオちゃん。…麗子ちゃんも言ってたけど…本当にこの服で良いの?」
「うん!ずっと着てみたかったんだぁ!」
舞から包を受け取り早速その場で着替えようとするナオ。
「ナオちゃん!ダメだよっ!」
白いワンピースを捲り上げようとしていたナオを舞が慌てて止める。
「えー!良いじゃん!」
「良くないよ!女の子なんだからっ!」
舞は包を拾い上げるとブーブー言っているナオの背を押し近場にある訓練所の小部屋へと連れて行ってしまった。
「…なんつーか…流石兄貴の飼い猫だな…」
「…色々奔放だよね。」
「…兄貴に似たんだなきっと。」
「失礼だなお前ら。」
蓮と猛の呟きに食いつく浩二。
「でも、すっごく可愛いよ?」
「うんうん、ありがとうな栞。」
「へへへー」
浩二に頭を撫でられてご満悦の栞。
そんな会話をしていると、着替えが終わったナオと舞が戻って来た。
「…ナオ?」
「どう?浩二っ!似合う?」
その場でくるりと回転して見せるナオ。
スカートが舞い上がり色々と見えたが…下着はちゃんと履いているようだ…いや違う。
「何でメイド服なんだ?」
「この城のメイド服見てからずっと着てみたかったんだ!…似合わなかったかな?」
俯き加減に上目遣いでこちらを見るナオ。
小聡明い…が可愛い。
「いや、似合ってるよナオ。」
「本当っ!やったぁ!ほら、見て見て!ここに穴開けて貰ったんだ!あと、スカートにスリットも!」
お尻を向けて尻尾をフリフリと動かす。
成程、尻尾を通す穴を開けて貰ったのか。
あと、良く見るとスカートの両脇にスリットが入っているようだ。
布同士を重ねるようにしてあるからパッと見は分からないが。
「あのままだと動きにくかったからね。」
確かに活動的なナオならではかもな。
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