嵐の帰還。
あの後浩二は一旦ミラルダ達の所へ戻り川と泉を修復した事を伝えると、一人で川の下流へと向かい溜池と余剰した水を魔素へ返還する魔道具を作り戻って来た。
「大丈夫、チャチャっと済ませて来るから。」
一緒に向かうと言ったミラルダやソフィア、今日はもう遅いからと止めるパルメとアイリスにそう言って飛び出して行った浩二が戻って来たのは本当にチャチャっと済ませたのだろう、一時間にも満たない時間だった。
「取り敢えず、不具合がある様なら何時でも言って下さい。あ、後これを。」
そう言って浩二はミラルダに小さな皮袋を渡す。
ミラルダは首を傾げながら皮袋を開いて目を見開く。
そこには彼女を誘惑して止まない光を発した魔核が十数個入っていた。
「…これは…?」
「俺の生命力を限界まで込めた魔核です。泉の光が弱くなったら水瓶に放り込んで下さい。」
「…コージ君の…生命力…」
ミラルダがゴクリと喉を鳴らす。
あ、そう言えば女神様に確認するの忘れてたな。
(えーと…女神様?)
《んー?なんだい?》
(サキュバス達が神様にエナジードレインを禁止されているって言ってましたけど…魔核にエナジードレインするのは問題ありませんよね?)
《うん、問題無いよ。そもそも特別何かペナルティがある訳じゃないしね。》
(そうなんですか?)
《あぁ、あくまで抑止する為の方便だからね。じゃなきゃ君にドレインしたミラルダちゃんも罰を受けるはずでしょ?あ、これは彼女達には内緒だよ?》
(あ、はい。分かりました。)
あの時の俺から溢れ出た気を我慢出来なくて吸っちゃったやつか。
案外神様の制約が緩くて助かった。
《あ、後気付いてないみたいだから教えとくね。》
(え?何ですか?)
《『マナドレイン』も精神力を譲渡出来るよ?》
(…マジですか…?)
《うん。マジ。》
うわぁ…ならわざわざ魔物探しに森に行かなくても良かったじゃん…
いや、今回はそのお陰で魔物の大軍が見付けられたんだから結果オーライだな、うん。
ってか、スキル詳細確認しろよ俺…
《やっぱり気付いて無かったね。本当に君は何処か抜けてるんだから。》
(いやぁ…確認ってついつい忘れちゃうんですよ。)
《んー、そうだ!なら、新しいスキルを覚えたりレベルが上がったりしたら私がアナウンスしよう!》
(いやいやいや、女神様にそんなことさせられませんよ!)
《だって君の事だからきっとまた忘れるよ?…それに…君はあんまり私を頼ってくれないから寂しいんだよ…折角君のスキルになったのに…》
(…うーん…分かりました。申し訳ありませんが、よろしくお願い出来ますか?)
《うん!了解したよ。》
快諾した女神様は何処か嬉しそうだ。
なら、これで良かったのかな?
「……ジ!コージっ!」
「うおっ!?びっくりしたぁ…」
「突然黙って顔面百面相始めたからこっちがびっくりしたわよ!それより、ミラルダがブツブツ言いながら固まってるんだけど?」
ソフィアに言われミラルダを見ると、何やらブツブツ言いつつ皮袋の中身を見ながらニヤニヤしたり苦い顔をしたりしている。
あれは吸いたいけど我慢してる顔だ。
「ミラルダさん。今女神様に確認して来ました。その魔核から直接ドレインするのであればエナジードレインを使っても咎められないそうですよ。」
「ホントっ!?」
「あぁ、でも出来れば泉の生命力補充用に取って置いて下さい。」
「そうよねぇ…」
「そんな露骨にがっかりしないで下さいよ。…一つぐらいなら摘んでも良いですから。」
「本当に!?ありがと~っ♪コージ君大好きっ♪」
「うおっ!?」
浩二の視界が急に暗くなる。
単に抱き着いてきたミラルダの魔乳に挟まれ視界が塞がれただけだが。
「ミラルダっ!アンタは一々抱き着くんじゃないわよっ!コージもさっさと離れなさいっ!」
二人の間に割って入って来たソフィアのお陰で魔乳からの脱出に成功した浩二は何処か寂しそうだ。
「…コージ…アンタまさか癖になった訳じゃないわよね?」
「…そんな事はないぞ?」
「なら何でそんなに寂しそうなのよ!もう!ほら、帰るわよ!用事は済んだんでしょ?」
「あぁ、うん。そうだな。それじゃ、今度はマナドレインの魔道具作って来ますね。」
「ええ、色々ありがとうね、コージ君。」
「いいえ、こちらこそ予想以上に迷惑掛けちゃってすみませんでした。」
「そんな事無いわぁ、多分前よりずっと住みやすくなった筈だもの。ありがとう。こっちは一応あの魔物の群れについて調べてみるわ。また遊びに来てね。」
「はい、気を付けて下さいね。それじゃまた!」
浩二は笑顔で手を振るとソフィアの足元にゲートを作る。
「コージっ!アンタま……」とか言いながら落ちていくソフィア。
ゲートに素早く飛び込みソフィアをお姫様抱っこする浩二。
そして、何やらソフィアの喚き声を残しゲートは静かに閉じた。
「…何だか…嵐の様な方でしたね…」
パルメがしみじみと口にする。
「ふふっ♪あれがコージ君よぉ♪素敵でしょ?」
「…はい、ミラルダ様。」
「さ〜て♪それじゃ、早速コージ君が作ってくれた泉で水浴びでもしましょうか。」
「そうですね。…アイリス、貴女もどうです?」
「はい!ご一緒します!」
三人は連れだって泉へと向かう。
この後三人は浩二の生命力が溶け込んだ泉に浸かり過ぎてとんでもない事になるのだが…
それはまた後ほど。
□■□■
シュレイド城へと帰った浩二は、ソフィアに殴られ、遅い夕食を摂り、ベットにて忙しく目まぐるしい一日を終えた。
そして次の日。
訓練所には蓮と麗子の魔法の的になる浩二と猛の姿があった。
「うおっ!ちょっ…待てって!おいっ!」
「頑張れー猛!」
「そのスキル狡いぞ兄貴っ!」
青い火の玉と氷の矢が辺り一面に降り注ぐ中、浩二の後ろに隠れながら猛が愚痴る。
「猛!アンタ往生際が悪いわよ!」
「そうだー!お兄さんに隠れるのは狡いぞー!」
「アホ抜かせ!何で俺が往生しなきゃならないんだよっ!」
うん。今日もシュレイド城は平和だ。
次々と放たれた魔法を身体に触れる前に『絶対魔法防御』でかき消しながら浩二はしみじみと思った。
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