提案。
「お帰りなさぁ~い♪」
「あ、はい。ただいま。」
浩二の姿が見えたミラルダは首に絡まるように抱きつき出迎える。
新婚の奥さんみたいだ。
「コージもミラルダも場所を弁えなさいよねっ!」
そしてソフィアが怒る。
もう一連の流れの様に定着しつつあるこのやり取りに何処か癒される浩二。
先程までいた場所が場所だけに助かります。
首に絡まるミラルダを優しく引き剥がしながら浩二は先程思い付いた事をミラルダに話してみることにした。
「ミラルダさん。真面目な話があります。」
「…は~い…」
ミラルダは名残惜しそうに浩二から離れると、近くにあった椅子に腰掛ける。
一緒にいたパルメとソフィアも同じ様に椅子に座る。
「えーと、あの場所を見て来ました。で、新たな罪人の確保が滞っている今、このままではマナドレインを使えないサキュバスが出始めても不思議じゃありません。そうなると、満足に食事すら出来なくなりかねません。」
「……続けて。」
ミラルダの言葉使いが変わった。
真面目に聞く体制に入ったらしい。
「そこで、俺からの提案です。まずミラルダさんが俺にマナドレインを使います。俺がそれを覚えて、そのマナドレインを魔核に込めて魔道具化します。このマナドレインの魔道具を必要数作り、マナドレインを使えないサキュバス達に使ってもらおうかと。」
「…魔道具にするのは良いし、それを皆に使って貰うのも良いわ。でも、魔道具が壊れた時どうするの?これから先永遠にその魔道具をコージ君が修復してくれる訳では無いのでしょう?」
「えーと、魔道具はあくまでも補助具と考えています。魔道具を使って正しいマナドレインの使い方を実際に感覚として学べば習得も早まる筈です。しかも、魔道具を使えば犯罪者を使わなくてもマナドレインを使えますので更に習得が早まります。」
「…成程。あくまでも魔道具はマナドレインを習得する為の補助に使うのね?」
「はい。しばらく魔道具を使ってマナドレインを使い続ければ、やがては魔道具無しでも使えるようになる筈ですから。」
「…分かったわ。コージ君のその提案、有難く受け取るわ。でも、先ずは実験的に数人の若い娘達に使わせてみましょう。」
良し。取り敢えずこれで暫くは大丈夫だろう。
丈夫で壊れづらい魔道具を作らなきゃな。
等と頭の中で構想を練っていると…
「そ・れ・でぇ…私はコージ君のマナを吸い取れば良いのよね?」
「あ…は、はい。」
気付くと超至近距離にいたミラルダが耳元で囁く。
浩二は慌てて右手を差し出す。
「抱き付けないのは…残念ねぇ。まぁ、仕方ないか。それじゃぁ~頂きまぁす♪」
ミラルダは浩二の気で出来た濃紺の義手を優しく両手で包む様に握ると目を閉じる。
やがてゆっくりと身体から何かが吸い取られる感覚がしてくる。
「…ん…っ…コージ君のは…マナまで美味しいの…ね。」
時折身体をビクッと震わせながらゆっくり味わう様に浩二の精神力を吸い取ってゆく。
そして十数分程してミラルダは瞳を開く。
頬は薄く紅潮し、何故かその瞳は潤んでいるように見えた。
「…ふぅ~、ご馳走様…コージ君♪」
「はい、お粗末様でした。」
「ふふっ、ちゃんと「マナドレイン」は覚えられたぁ?」
撓垂れ掛かるように身を寄せ、潤んだ瞳で舌舐めずり…
この人…分かっててやってるな。
ドキドキする心臓を押さえ付け、平常を装う浩二。
「えーと…はい、覚えました。ありがとうございます。後はレベル10まで上げるだけですね…この辺りに魔物って出ますか?」
「出るわよぉ。だって此処は「魔の森」だもん♪」
「ですよね。ちょっと行ってきます。小一時間位で帰って来ますから。」
纒わり付くミラルダを引き剥がしながら浩二はチラリとソフィアを見る。
あー、やっぱり睨んでる睨んでる…
「…もう…コージ君ったら、つれないんだから…ええ、行ってらっしゃい。」
「…私はここで待ってるわ。…ふん、馬鹿コージ。」
ちょっと残念そうなミラルダさんと不機嫌なソフィアに見送られ、浩二は魔の森へと向かい走り出そうとした所で声が掛かる。
「あ、お待ち下さい、私が道案内致します!」
パルメがそう言って浩二に歩み寄る。
「ありがとうございます、それじゃ道案内よろしく。」
「はい、任されました。」
二人は軽く挨拶を交すと、パルメの先導で魔の森に消えていった。
そして残った二人。
「ねぇ、ミラルダ。」
「なぁに?ソフィアちゃん♪」
「…言葉使い…戻ってるわよ?」
「もう、普段の姿も見せちゃったし良いかなぁっ…て。」
「…そう。ミラルダが良いなら良いけどね。」
「もぉ~っ♪ソフィアちゃんってばぁ♪」
素っ気なく答えたソフィアに思い切り抱きつくミラルダ。
先程の浩二の様に膨らみに埋まるソフィア。
「ぷはぁっ!苦しいわよミラルダっ!その魔乳で窒息させる気っ!」
「ありがとうね、ソフィア。でもコージ君なら大丈夫でしょ?」
「…多分ね。でも、所構わず誘惑するのは止めなさいよね!」
「ん~?こうやってぇ?」
再び埋まるソフィア。
「むぐっ…!ぷはぁ…っ!だからっ!何なのよこのデカさはっ!腹立つっ!」
何とか魔乳から脱出したソフィアは憎らしげに二つの膨らみを揉みしだく。
「ああん♪ソフィアちゃんのエッチぃ♪」
何だかんだで仲の良い二人が文字通り乳繰り合っていたその頃、浩二とパルメは森の中で魔物を探していた。
そう、探していたのだ。
魔物の巣窟とも言える「魔の森」で。
「…なかなか魔物って居ないものなんですね。」
「……おかしいです。」
パルメは浩二の質問への答えとも取れる言葉を呟く。
「…何か変なんですか?」
普段の森の様子を知らない浩二は首を傾げながら問い掛ける。
「ええ…明らかにおかしいです。普段ならこの辺りに来るまで軽く3、4グループの魔物の群れに遭遇してもおかしくありませんから…」
「…理由は分かりますか…?」
「…今の時点では何とも…取り敢えず戻りましょう!」
「ん!了解!」
短く返事をした浩二は来た道を戻ろうと振り返る。
そして見えた。
サキュバスの街へと大挙して向かう魔物の群れが。
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