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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第三章 勇者と魔王

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事の顛末。

今回は少し長いです。


朝食後、三人に自分が眠っていた三日間に起きた出来事等を色々聞かせて貰った。


先ずはこの城へと送り届けた女性達の事。

彼女達は、到着してすぐにサキュバス達に衣服を着せられ一箇所に集められた。

ミラルダが帰るまで意識を取り戻さないように必要最低限のマナドレインを掛けつつ、肉体を治療しながら。

これから行う作業は至極デリケートであり、サキュバスクイーンであるミラルダにしか成し得ないのだ。


やがて城に戻ったミラルダは、人族女性一人一人に丁寧に新たな催眠を掛け記憶を上書きしていった。

純潔は戻らない。

踏み躙られた尊厳も。

しかし、辛い記憶は覆い隠せる。

何も知らなければ無かった事になる訳では無いが…

せめて心安らかに過ごせるように…と。


当然、人族領から送られて来た兵士達は訓練所で行われているサキュバス達の行動に激しく異議を唱えた。

「魔族等に任せては置けない」と。

その言葉に激しく反発したのは王女リリィと驚く事に舞だった。


王女様は、「貴方達に何が出来るというのですか!一体どれだけの施しを彼女達から受取れば貴方達は満足出来るのです!自らの言動を恥なさいっ!」と。


そして舞は…

「人族の城にいた貴方達より、この城の兵士さん達の方が余程紳士的に私に接してくれました。あの頃時折私に向けられていた嫌な視線を私は忘れません。そんな貴方達に身も心も蹂躙された彼女達を癒せるとはとても思えません。もう少し自らの身を清めてから出直して頂けますか?」

と、とても辛辣な言葉を投げ掛けたらしい。

蓮が一語一句忘れずに憶えていたのには少し驚いたが。


そして、最後に「男の俺達に出番はねーよ。」とスミスが締めたそうな。


城にいた貴族達はと言うと、ミラルダがシュレイド城へと戻る前にチャッチャと催眠解除と記憶改竄を行い放置してきたそうだ。

この男女の扱いの差に若干苦笑いした。


兵士達も今は大人しくしており、助けた勇者達と共に貸し出された城の区画で浩二の転送待ちをしているらしい。

これは人族の城の復興もあるし、早めに何とかしないとな。



そして、結城についてだが…

ミラルダがサキュバス領へと連れて行ったらしい。

「それ相応の償いをさせなきゃならない。」と。


凍り付くような冷たい瞳でそんな事を言われたら、流石に誰にも異議を唱える事など出来ずにいた。

そんな中、スキルを奪われたり殺される寸前にまでなっていた勇者達が結城の城での行動を事細かに話した結果、ミラルダに任せる事にする…という話に落ち着いた。


王女様曰く、今回の件は勇者である結城真が乱心しリッチーの封印を解き、共に人族領を混乱に陥れたが、魔族達の助力により一応の決着を見た。と言う事になるらしい。

恐らく領内での混乱は避けられないだろうが…少しでも魔族達への誤解が解ければ…というのが王女様の考えみたいだ。


これから王女様も大変だろうけど頑張って欲しいし…俺も出来る限りの事はするつもりだ。



で、だ。

今のこの状況に繋がる訳だが…



「…やっぱり魔核すら作れねぇ…」



三人が部屋を後にした後、再び暇を持て余した浩二は今出来る検証をすることにした。


右手はあの有様なので、残された左手で魔核を作ろうとするも何らかの力に邪魔され形にならない。

こんな状態じゃ、手伝う所か王女様達を人族領に送り届ける事すら出来ない。



「参ったなぁ…」



こんな所で種族進化の弊害を被るとは思ってもみなかった。



「これじゃ…義手すら作れないよな…」



早速行き詰る浩二。

すると、徐にベットから起き上がり柔軟体操を始める。



「…こういう時は…無心になるに限る。」



軽く柔軟を終えた浩二はその場で立禅を始める。

瞳を閉じ…ゆっくりと呼吸を整え…静かに佇む。

心臓を新調してから暴れ馬の様に出力の上がった気を押さえ付けながら。

そしてふと気付く。



「操気術は…使えるのか…?」



浩二は疑問を解消すべくすぐに行動に移る。

丹田にて練り上げた気を全身に絡み付かせるように纏い鎧の様に物質化するが…



「あれ…?」



浩二は纏った鎧を見て首を傾げる。


白。

今浩二が身に付けている気の鎧は数日前に纏っていた濃紺の鎧では無く、眩しい程の純白の鎧だった。



「んー…個人的には前の色の方が良かったなぁ…」



取り敢えず疑問は其方退けで率直な感想を述べてみる。

そして気付く。


右手だけが前回同様に鈍い青の光を反射する濃紺な事に。

しかも、しっかりと触覚まで備わっていた。



「…もしかして…」



浩二は右手だけを残し、身体の鎧を消してみる。



「おお…っ!いい感じだ。」



まるで新たな右腕の様に自由に動かせる気の義手が出来上がる。

試しに魔核を作ってみると、何の抵抗も無く作ることが出来た。

それどころか、幾分か魔核の純度が上がっている気さえする。


まさかこんな形で問題が解決するとは思っていなかった浩二は、早速色々と試してみようと濃紺の右腕に力を入れようとした所で…



「コージ、ちゃんと大人しくし…て…るの?」



ノックも無しに開け放たれたドアから尻すぼみになった言葉を発したソフィアが現れた。


滅茶苦茶怒られた。



□■□■



「だって…このままじゃ皆に迷惑をかけると思って…」


「言い訳しない!」


「はい…すみません。」


「全く…コージはこの間胸に大穴開けられたこと忘れたの?…普通なら即死なんだからね?」


「それなら…ほら…」



服をまくり上げて胸を露わにしてソフィアに見せた。

そこには既に傷の一つも無く、その内側では新たに生まれ変わった心臓が脈打っている。



「べ、別に見せなくても良いわよっ!…もう!…本当に…大丈夫なのね?」



真っ赤になって顔を背けるも、チラチラとこちらを伺いながら本当に心配そうに訪ねてくる。



「あぁ、もう大丈夫だ。心配かけたね。それに、右腕も…ほら。」



先程出来上がったばかりの新たな右腕をソフィアに見せながらニカッと笑う浩二。



「…はぁ…分かったわ。コージに動くなってのが無理な話だったのよね…」



額に手を当てフルフルと首を振るソフィア。



「でも!」



人差し指を立てて浩二の目の前に突き出す



「全ては明日から!今日はお願いだから大人しくしてて…ね?」


「うん。分かった。」


「なら良いわ!夕食はここに運ばせるから楽しみにしてなさい。」


「おお…っ!」



浩二の反応に満足したのか、ソフィアは笑顔で浩二の部屋を後にした。



「さぁ…明日から忙しくなるぞ…っ!…あと晩飯っ!」



浩二は右手をギュッと握りながら明日するべき行動を頭の中で詰め始めた。



□■□■



次の日。

新しい右腕でスキルを発動出来る事を確認した後ソフィアと人族組三人を呼んでステータスを公開した。

前回のように足枷の鎖でステータスを変化させたりはせず、いきなりのMAX公開だ。


まぁ、結果はドン引きされたが…

確かに半端ではないステータスなので仕方が無い、うん。


そして、現在。

浩二は訓練所にいた。

目の前には人族領から連れて来た兵士達や勇者、そして…



「岩谷さん、今回は本当にありがとうございました。このお礼はいつか必ず。」



そう言って第3王女リリィが綺麗にお辞儀をする。

傍らに控えていたスミスが口を開く。



「世話になったなコージ。また人族領に顔出せよ。」


「はい。必ず。それじゃ…ゲート開きますね。」



浩二はいつもの様に右手を翳し『転送』を使う。

本当にいつもの様にしたつもりだった。

しかし、現れたゲートは…



「あ…れ?」



浩二は唖然とした。

それも仕方の無い話だ。

何せ、現れたゲートは形こそ六角形と変わらないが…

その大きさが違った。



「…コージよ…随分とデカイな…」



スミスが絞り出す様に呟く。

目の前には高さ10mはあろうかという巨大なゲートが口を開いており、その先には人族の城にある訓練所が見えていた。



「…あれ…?何でだろ…?」



未だに混乱中の浩二。



「…コージ…通っても大丈夫なんだよな?」


「あ、はい…多分。」


「多分って…お前…」


「いや、こんなにデカくなるなんて思わなくて。」


「…ま、通りやすくて良いわな。んじゃ行くわ。」



スミスは王女の手を取ると、ゲートを潜る。

遅れて兵士達や勇者達も次々とゲートを通り人族領へと帰って行く。


全て通り終えたのを確認した浩二はゲートの向こうにいるスミスへと声を掛ける。



「スミスさん、彼女達の事よろしくお願いします…」


「あぁ、分かってる。任せとけ、ちゃんと親元に帰しとくからよ。」



彼女達とは兵士達が抱き抱えて運んでいた人族の女性達の事だろう。

未だに意識は戻らないが、いずれ近いうちに目を覚ますとミラルダが言っていたので間違いない筈だ。

後はスミスと王女様に任せよう。



「あ、後…城とか色々壊しちゃったんで…後で直しに行きますから。」


「ガハハハハッ!心配すんなっ!ま、会いに来るぶんには構わんがな。」


「はい。それじゃまた。」


「あぁ、達者でな。」



スミスは黒い義手をブンブンと振りながらニカッと笑う。

その隣で王女がペコリとお辞儀をしている。


その姿を見届けた浩二は静かにゲートを閉じた。

ちょっとした想定外の事態は起きたが一仕事を終え一息ついていると



「いやぁ…流石兄貴、あんな巨大なゲート初めて見たわ。」



その後から聞き慣れた声がした。

慌てて振り返る浩二。



「た、猛!?一緒に帰らなかったのか!?」


「なんだよ…居ちゃ駄目だったか?」



そこには当たり前の様に腰に手を当て仁王立ちする猛の姿があった。

その後には麗子の姿まである。



「麗子まで…良いのか?帰らなくて…」


「何よ、ちゃんとソフィアさんに許可は貰ったわよ?」


「俺は蓮に勝つまで帰れねーよ。それに、兄貴が稽古付けてくれるんだろ?」


「まぁ、二人が良いなら俺は構わないよ。帰る気になればいつでも転送で送れるしな。」


「うっし!早速訓練しようぜ兄貴っ!」



猛は既にやる気満々の様子で胸の前で掌に拳を打ち付けている。



「あー…申し訳ないが猛、訓練は後だ。」


「何か用でもあんのか?」


「あぁ、二つ程な。その内一つは最重要案件だ。」



そう、先ずはミラルダさんの所へ行って結城から『掠奪』で女神様を取り返す事。


そしてもう一つは…



「待ってろよ…ナオ。」



空に向かい呟くように口にした浩二。

魔核の中で浩二を信じて魂のまま待ち続けているナオ。


浩二は全能力を駆使し新しい身体を作ると決めていた。


彼女と再び会う為に。



三章はこれで終了です。


読んでいただきありがとうございます。

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