『操気術』の可能性。
『操気術』
気を操り、半物質化した気を武器にも防具にもする事が出来る。
体力を消費する事で持続時間が伸びる。
肉体から長時間離すことは出来ず、物質化した気を投げるなどした場合、数秒で消失する。
スキルレベルが上がれば、気と魔力を練り合わせることにより精神力の代わりに体力で肩代わり出来るようになる。
『操気術』を行使するものを『氣法師』と呼ぶ。
浩二はこの場を使い『操気術』で出来ることを色々験すつもりでいた。
実を言えば、城門破壊の時に使用した爆発も実験的側面が強かったりする。
あれは『紅蓮の篭手』の「火属性魔素を圧縮して放つ」と言うものを「気」で代用した物だ。
終わってみれば篭手よりも遥かに破壊力が上だった訳だが、アレは明らかに「浩二の感情」がプラスされていたからであり、普段からあの破壊力ではないだろう。
何はともあれ、溢れ出す程に余剰しているのであれば使わないのは損というもの…と言うのは建前で、以前よりソフィアに「抑える努力をしなさいよね。」と言われていたからである。
しかしながら、抑えろと言われて直ぐに抑えられるならば漏れ出たりしない。
ならば、常に消費する…もしくは使い続ける他ない。
と、言う事で…
「まずは身体に圧縮して纏うか。」
サラッと口にした浩二は丹田で練り合わせた気を圧縮しつつ体に纏う。
以前地下牢で試した薄い膜とは違い、今回は明らかに鎧の姿を取っていた。
色合いも青と言うより黒に近い。
恐らくは「青」を圧縮…つまりは重ね合わせた事で黒に近くなったのだろう。
見た目も、鎧とは言えゴテゴテした物では無く身体にフィットする様なボディスーツの様な感じであり、意図したつもりは無いだろうが…その姿は以前作り上げた「タロス」のそれに酷似していた。
「タロス」と言えば、現在はシュレイド城内にてメイド達と一緒に色々な事を学んでいる。
種族進化した浩二に低レベルの魂転写を行われた「タロス」は浩二が創り出した初の「マシナリー」となり、思いの外人間的感情を持ち合わせ新たな知識を得る事に貪欲になった。
やはり、産みの親に似るのだろうか…
時折蓮と組手をしている姿を見掛けるが、その姿は何処か楽しそうにすら見えた。
話を戻そう。
浩二が濃紺の鎧を身に纏うと、貴族達に若干の戸惑いが見られた。
しかし、それは攻撃の手を緩める理由にはならず鎧を纏ったまま棒立ちの浩二を四方から串刺しにすべく槍が振るわれる。
「さて、どんなもんかな?」
達人の放つ突きに比べれば覚束無いものの、通常の戦闘ならば優位に立てるレベルの突きを浩二は余裕の表情で待つ。
やがて接触する穂先と鎧。
そして、ギイィン!と金属同士が接触した様な音を立てて鎧はしっかりと槍を受け止めた。
「今の音、物理結界に攻撃した時と似てたな。」
次々と振るわれる槍、剣、短剣、その尽くを弾き返しても尚、濃紺の鎧は傷一つ無く窓からの光を青く反射させていた。
「鎧はこんなもんだな…次は…武器か…」
相変わらず武器となると気の乗らない浩二。
他人の武器は喜び勇み作るのに、いざ自分の武器となると話は違う様だ。
そして、数秒考え込むと、何やら閃いたように拳を握ったり開いたりし始めた。
「確か…身体から離れたら数秒…だっけか?」
そう言って何かを握るようにすると、徐に近くの柱目掛けて何かを投げ付けた。
ゴオッ!という何やら硬いものが当たった音がして直径1m程の立派な柱が半分程欠けて崩れ落ちた。
「うわっ!強過ぎたか…これじゃ死んじまうな…」
初めての事で力加減がいまいち把握出来ていない為か威力が有り過ぎたらしい。
浩二が投げたのは…所謂「気」の塊である。
本来は先端を尖らせたり、スパイクを付けたりと殺傷能力を上げて放つ物だが、今回は相手を殺さずに戦闘不能にしなければならない為不可だ。
しかも、今しがた投げ付けた球体は硬度的に鉄球と変わらない。
「んー…もう少し柔らかくならないかな…せめて硬質ゴム位で…」
そうして出来上がる硬質ゴム球(気)。
操気術マジ万能。
しかし、浩二は次に起きる事を予想してはいなかった。
「これで…どうだっ!」
近場にいた貴族にゴム球を投げ付ける…それなりの力で。
次の瞬間、浩二の顔の横スレスレを物凄い勢いで通り過ぎるゴム球。
「うおっ!」
変な声を上げて身を縮める浩二。
その間にもゴム球は辺りを反射しまくりながら貴族達を沈めてゆく。
言ってしまえばソフトボール大のスーパーボールが超高速で飛び回るのだ…無差別に。
そして、数秒の後に霞のように消えてしまった。
「危ねぇ…」
金属の穂先すら跳ね返す鎧を着ているにも変わらずビビる浩二。
どんなに重装備でも怖いものは怖いのだ。
しかし、今の跳弾で数十の貴族が泡を吹いて倒れたり気絶したりしていた。
「ふむ…ある意味密閉空間では使えるな…怖いけど。」
怖いと言いながらも新たに五個程ゴム球を作り出す。
しかも、先程よりも一回り大きい。
それを見て露骨に怯える貴族達。
浩二の鎧姿より怯えるとはこれ如何に。
「うっし!行くぞっ!うりゃっ!」
少し楽しくなって来ている浩二。
一気に五発のゴム球を投げ終わると、油断なく身構える。
辺りを縦横無尽に飛び交うメロン大のゴム球。
次々とアウトになってゆく貴族達。
そして、楽しそうにその尽くをスレスレで躱す浩二。
やがて、2セット程楽しんだ辺りで貴族達が全てアウトになった。
前歯が折れていたり、肋骨が砕けていたり、目の周りに青アザを作ったりしているが、全て漏れなく生きていた。
「うん。思いの外楽しかったな。」
趣旨が変わって来ているが結果は変わらないのでOKだ。
貴族達の生きたままの無力化に成功した浩二は、軽い足取りで玉座の間へ向かう。
可哀想ではあるが、最早結城とリッチーのみとなった時点で勝ち確である。
「さっさと終わらせて帰ろう。」
怒りの多少鎮まってきた浩二は玉座の間の扉に手を掛けた。
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