骨折り損。
「えーと…俺、フリーですよ?」
「…え?…本当ですか…?しかし、ミラルダ様がそんなにご執心な所、初めて見ましたが…」
浩二は腕に絡み付くミラルダを見る。
笑顔で「んふふぅ~♪」とか言ってる。
「あー…確かに気に入られてはいる様ですが…本当にフリーです。」
その言葉を聞いて騒めくサキュバスさん達。
「ではっ!私達にもチャンスがっ!?」
「は?」
「駄目よぉ~、コージ君はぁ私のだものぉ~♪」
「ズルいですよっ!ミラルダ様っ!あんな美味しいのを独り占めなんてっ!」
サキュバスさん達は「そうだ!そうだ!」と口を揃えて抗議する。
中にはあの時の事を思い出し、自らの身体を抱き締めハァハァ言ってる人も居る。
「えーと…俺はもう帰っても良いですか?」
「「「「ええっ!?」」」」
「いやいやいや、用事は済みましたし…」
「そんな事は言わずにっ!せめて後一日…いや、半日でも良いですからっ!」
サキュバスさんが縋り付いて来る。
その時、ミラルダが浩二の腕に抱きつきながら口を開く。
「ねぇ~♪コージ君はぁ♪サキュバスのぉ~、だ・ま・ら・せ・か・たぁ♪知ってるわよねぇ~♪」
「……アレですか…?」
「そぉ♪ア・レ♪」
「…はぁ…」
浩二は深く溜息をつくと、手始めに腕に絡み付き余裕そうにしていたミラルダの肩に手を置く。
「え?えぇ?ち、ちょっとぉ~、私は良いの…はぁあんっ!!」
最後まで言い終わる前に浩二の右手が青く輝き、その光が『エナジードレイン』によってミラルダの身体に注ぎ込まれると、危険な嬌声を上げてミラルダが痙攣しながら崩れ落ちた。
ゆらりと浩二の身体が揺れ、青く輝く両手をワキワキしながらサキュバスさん達に近付いていく。
「あ、あの…コージ様…?」
「…欲しがり屋さんは…何~処だ…」
「ひっ!?」
一瞬で身を翻そうとしたサキュバスさんの肩に手が置かれる。
「まぁまぁ、遠慮しないで。」
ニッコリと笑う浩二がそこに居た。
□■□■
「容赦無いわね…」
一部始終を見ていたソフィアが呟く。
浩二は瞬動を使い、次から次へとサキュバスを仕留めてゆく。
やってる事は彼女達の肩にに手を置く…ただそれだけなのだが…
時間にして数十分。
この場にいた全てのサキュバス達は…
「…全く…困ったもんだ。」
腰に手を当て仁王立ちする浩二の周りには、ピクピクと痙攣しながら幸せそうな表情を浮かべたサキュバス達が転がっていた。
「コージ…貴方本当に底無しね…」
疲れた様子も無く仁王立ちしている浩二に呆れた声で話し掛ける。
「まだまだ行けるぞ?」
「行かなくても良いわよ…さ、帰るんでしょ?」
「あぁ、そうだな。」
浩二はそう言うとソフィアを自分に引き寄せ、足元に六角形のゲートを作り出す。
「ふえっ!?」
それは浩二に引き寄せられたからなのか、突然無重力になったからなのかは分からないが、ソフィアが可愛い声を上げると同時に二人の姿はサキュバス領から消えたのだった。
□■□■
「今度やったらぶん殴るからねっ!」
「…既に殴られましたが…すみません。」
ぐわんぐわんする頭を撫でながら謝る。
ソフィアの部屋に開いたゲートから落ちてくる二人。
すぐ様ソフィアを抱き上げ着地する浩二。
浩二を見て真っ赤になるソフィア。
ワナワナと震え出しお姫様抱っこされながら浩二の頭を殴るソフィア。
とまぁ、こんな感じだ。
「もう!…まぁ、良いわ。取り敢えず私は人族領の様子を見てくるわね。」
「あぁ、頼む。俺は助けた勇者達の様子を見てくるよ。」
「分かったわ。それじゃあね。」
ソフィアがそう言って部屋を出た後、浩二は訓練所に向かう。
人族へと貸与えた棟が訓練所の先にあるのだ。
やがて訓練所へと到着してすぐに異変に気付く。
魔族側の兵士と人族側の兵士が向かい合い何やら騒いでいるのだ。
ただ事ではない雰囲気を感じた浩二は駆け寄る。
それに気付いた人族の兵士が浩二に向かい突然怒鳴りつけて来た。
「貴様だなっ!こんな場所に我々を送り込んだのはっ!」
「は?…えーと、そうですが?」
「今すぐ我々を人族領へ帰せっ!この魔族のスパイがっ!」
「………」
言葉が出ない。
別に苦労をした訳じゃない。
ただ、こいつ等を助ける為にどれだけの魔族側の人達が協力してくれたと思ってるんだ…
勝手だな…
勝手過ぎる…
「聞くか聞かないかは任せる。今、人族領では勇者の一人が城を乗っ取り好き勝手している。お前等はそいつに催眠で操られ王女様を襲っていた。だから王女様を助けた。お前達も呪いと催眠を解き助けた。悪い事か?」
「出鱈目を言うなっ!王女様まで拐かしたのかっ!」
「…はぁ…分かった。帰してやる。もう知らん…勝手に死ね。」
浩二は目の前の五月蝿い兵士を『転送』で、人族領へ送る。
出口は城の前だ。
目の前で起きた事が理解出来ないのか、残りの兵士達は黙り込む。
「どうした?後送って欲しい人はいないのか?」
「…貴様っ!彼を何処へやったっ!」
「人族の城の前だよ…お前も行けば分かるさ、ほら。」
また一人人族領へ送り返す浩二。
「…………」
「もう良いのか?それとも全員送ろうか?言っておくぞ?俺はこれからその勇者を倒しに行く。そいつの裏にはリッチーもいる。もしそこで催眠状態のお前等が居たら…容赦なく倒すからな?」
黙り込む兵士達。
浩二は振り返ると魔族側の兵士達に頭を下げる。
「すみません。こいつ等が失礼をして。」
「いやいや、コージの旦那が頭を下げるなんて!大丈夫ですよ。気にしてませんから。なぁ?」
魔族の兵士さんの言葉に皆笑顔で頷く。
本当にいい人達だ。
浩二は振り返り人族の兵士に向け口を開く。
「謝れとは言わない。だから、騒がず大人しくしててくれ…恥ずかしいよ、お前等…」
「…………」
無言のまま動かない兵士達を見て溜息をついていると、突然ソフィアが血相を変えて走って来た。
「どうした?ソフィア。何かあったか?」
「はぁ、はぁ、はぁ、結城が…動いたわ。それも最低の方向に…」
浩二は頭を抱えた。
何だか…面倒臭くなって来た…と。
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