女神の忠告。
人によっては気分を害するかも知れません。
ご了承下さい。
その頃、人族領では大きな動きがあった。
城下町及び近隣の町村から女性のみが招集されたのだ。
その招集には、身分の差など無く全ての女性が対象だった。
当然の事だが、貴族達は挙って反対して来たが受け入れられる筈も無く、武力で対抗した者達は皆一人として城から帰って来る事はなかった。
《君も、思い切った事をしたねぇ…》
「男なら誰もが夢見る「ハーレム」ってヤツですよ女神様。」
《んー…まぁ、分からなくもない動機だけど、コレはやり過ぎだよ。》
「ハハハッ!今の俺には女神の加護があるんですから!何が怖いと言うんですか!」
《あー、ソウデスネ…》
帰りたい…女神は心底思った。
あの突飛も無い行動をとりつつも、何処か心安らぐ…あの浩二の元へと。
□■□■
彼女…女神が『強奪』されたあの日の深夜、結城はまるで狂った様に笑い転げていた。
「ハーッハッハッハーッ!!あーっ!笑いが止まらんっ!自分の運の良さが怖いぐらいだっ!」
奪ったスキルを確かめた結城は『女神の加護』の文字を見た瞬間に身震いしたかと思えば、狂った様に笑い出した。
「岩谷の野郎っ!ザマぁ無いな!寄りにもよって『女神の加護』を強奪されるんだもんなぁ!」
彼は勘違いをしていた。
浩二の強さの理由がこの『女神の加護』だと。
女神の加護のお陰で全てが上手くいっていたと。
勘違いもここまで来れば滑稽だ。
当然、黙って見ていられる女神では無い。
《えーと、結城君だったかな?》
「はっ!女神様っ!?」
《あー…うん、女神様だけど。》
「嬉しいですっ!俺にもやっと加護が貰えたんですねっ!」
強奪しておいて貰えたとか言い始める。
《えーと結城君?私は特別何もしないよ?》
「良いんです!女神様がついていて下さるなら百人力ですから!」
《…あー…ソウデスカ…》
最早会話にすらならない位の興奮状態だ。
彼は勘違いをしていた。
自らに女神が舞い降りたと。
良くある物語の主人公の様に。
全てが自分の思い通りになるのだと。
《(あー…彼には悪い事をしたなぁ…色々調べて来るなんて言っちゃったし…まさかコイツがここまで頭が沸いてるとは…)》
姿は見えないが、恐らくはソフィアと同じ様なポーズを取っているであろう、女神は溜息をついた。
次の日からの結城の行動は迅速だった。
自らの欲望を満たす為の行動に出たのだ。
『女神の加護』を手に入れた彼は…完全に箍か外れてしまった。
城下町に繰り出し、目に付く女に片っ端から催眠を掛け城内へ連れ込む。
更には有力貴族達を催眠で思いのまま操り、領土中の女性を掻き集めた。
逆らう者は全て『生贄』を掛けた後に催眠を掛けた貴族達に殺させた。
結城自身はと言えば、毎日朝から晩まで肉欲に塗れ自らの欲望を満たしていた。
その相手の女性達は誰一人としてその目に光は無く、全ての女性は催眠で自由を奪われその尊厳さえも蹂躙されていた。
その行為を無関心に眺めていた女神は遂に口を開いた。
《君は『新堂舞』の事が好きなのでは無かったのかな?》
「ええ、彼女は俺の運命の女性ですから。」
周りに全裸の女性達を侍らせながら当たり前の様に言う。
《ふむ。では、その女性達は何なのかな?》
「あぁ、コイツらは「道具」ですよ。肉欲を満たすだけの道具。」
《その光景を見たら…彼女はなんて言うかなぁ。》
「舞なら分かってくれますよ。何せ彼女は俺と結ばれる運命なんです。大丈夫ですよ女神様、ちゃんと舞の事もこうして愛してやりますから。」
そう言って結城は肉人形と化した女性達を貪り始めた。
《……死ねば良いのに。》
女神の口にした辛辣な言葉すら結城には届かなかった。
□■□■
〈全く…あ奴は我より余程闇に近い存在じゃ無かろうか…〉
誰も居ない玉座に一人…いや一体のリッチーが佇んでいる。
〈まぁ、今は好きにさせておこうか。いずれ我が肉体として働いてもらう訳だしな。〉
その一言だけ呟くと、リッチーは音も無くその場から溶けて消えた。
□■□■
《結城君。君に言っておかなきゃならない事がある。》
「あぁ、女神様。おはようございます。」
もう日も高くまで上った頃、やっと眠りから覚めた結城に女神が話し掛ける。
《既に手遅れかも知れないが…女性達を元の住処へ帰し、リッチーと手を切りなさい。》
「何故です?全てはこれからなのに。」
《…忠告はしたよ。コレは一時的とは言え君のスキルになった私のケジメみたいなものだ。》
「優しいですね、女神様。でも、心配は要りません!きっと全てが上手く行きますから!」
《残念だよ。まぁ、死神が来るまで残された余生を楽しむと良い。》
そう言い残して女神は二度と口を開く事は無かった。
最後の忠告はした。
後は待つだけだ。
彼女の…『女神の加護』の本当の持ち主を。
結城にとっての『死神』が来るのを。
□■□■
「もう帰っちゃうのぉ~?ゆっくりしていけば良いのにぃ~」
「そうも行きませんよ。人族領の事も気になりますし。」
浩二の腕に抱きつきながら、本当に残念そうにミラルダは言う。
「またぁ~、遊びに来てねぇ~?」
「えぇ、必ず…あの歓迎さえ無ければですが…」
「それならぁ~、大丈夫よぉ~♪ほらぁ♪」
その光景を見て浩二は言葉を失った。
ミラルダの家を出てすぐの場所にサキュバスさん達が跪くように頭を下げて並んでいたのだ。
そして、皆チラチラと浩二の姿を見ている。
「…コレは一体…」
浩二がその光景に驚いていると、一人のサキュバスが浩二に向けて口を開く。
「コージ様っ!先程は申し訳ありませんでしたっ!まさかミラルダ様の番の方だとはつゆ知らずっ!」
「は?」
番?俺とミラルダさんが?
どうやらサキュバスさん達は勘違いをしているようだった。
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