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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第三章 勇者と魔王

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サキュバスの歓迎。


「と言う事で、ミラルダさんに会いに行きたいんだけど。」



朝食後、ソフィアの元を訪れた浩二はいつも通り唐突に切り出す。



「相変わらずいきなりね。人族領の方は良いの?まぁ、城下町の方で多少の被害がある位で今は済んでるけど…」


「あぁ、監視役を押し付けてゴメンな?」


「良いわよ。私にはこれ位しか出来ないしね。」


「いや、感謝してる。ありがとうソフィア。」


「べ、別に良いわよ。そ、それよりミラルダになんの用事?」



しどろもどろになりながら話を逸らすソフィア。



「あぁ、『エナジードレイン』について教えてもらおうと思ってさ。」


「『エナジードレイン』?コージ、ドレインなんて…あぁ、あの時覚えたのね?」


「そう。で、何だか雰囲気的に今回のドンパチで使いそうな感じだからさ。」



浩二はそう言って王女とスミスとのやり取りを説明する。



「コージ…貴方またとんでもない事を…」


「…やっぱり?」


「当たり前よ!何処の世界にリッチーとドレイン対決する馬鹿が居るのよ!」



浩二は自分を指差す。

額を抑えて呻くソフィア。



「あぁ、居たわね…馬鹿が。」


「失礼な。」


「しかも、何となく…何とかなるんじゃないかと思ってしまう辺り腹が立つのよ!」


「まぁ、本命は「気」を纏わせた拳でド突き倒すんだけどね。ドレインは保険だよ。」


「リッチーをド突き倒すって段階で頭がおかしいけどね…まぁ、良いわ。案内するから着いてきて。」



浩二は手招きするソフィアの後に続く。


城の丁度中央。

地下一階にそれはあった。



「広いな…それに凄い数の転移陣だ…」


「一応、全ての種族の領土と直結してるわ。中には用心深く中継地点で検問張ってる種族も居るけど…」


「まぁ、どんな事に利用されるか分からないんだから、ある程度の用心は必要だよな。」


「まぁね。さ、ここからサキュバス達の住む魔の森へと飛べるわ。準備は良い?」



数ある転移陣の中の一つを前にしてソフィアが尋ねる。



「準備?」


「えぇ、心の。」


「は?」


「相手はサキュバスよ?コージ自分が男って自覚ある?」


「いやいや、まさか取って喰われる訳じゃあるまいし…」


「…………」


「え?喰われるの?」


「…………」


「ちょっと、ソフィアさん?」


「さぁ、行きましょう!」


「え?ちょっ…」



明確な答えを貰えないまま手を引かれ転移陣へと引きずり込まれる浩二。

心の準備をする間もなく、目の前に広がる鬱蒼とした森。



「着いたわ。急ぐわよコージ!」


「ちょっと?ソフィアさん?」


「本当に喰べられるわよ?主に性的に。」


「マジか…!」



その時、周囲の茂みがガサガサと揺れる。

そして現れたのは、最早隠す気が無い程の服を身に纏ったサキュバスさん御一行だった。



「コージ…囲まれたわ…」


「え?え?何?」


「絶対に触れられてはダメよ…?」


「…えーと…もし、触れられたら…どうなります?」


「生命力を根こそぎ奪われた挙句、性的にも奪われるわ。」


「…童貞君歓喜の地だな…」



なんて会話をする間もジリジリと近付いてくるサキュバスさん御一行。

目なんて血走ってるし、ハァハァ言ってるし、折角の美人さんなのに…実に残念だ。



「…取り敢えず逃げますか。ソフィア?ミラルダさんがいる場所分かる?」


「このまま真っ直ぐよ。」



ソフィアが進行方向を指差す。



「了解…って!うおっ!」


「コージ!?」


「…へぇ…意外と…よっ!…素早いな…ほっ!」



まるで鬼を捕まえる鬼ごっこの様に彼方此方から群がる手を瞬動は使わずに避ける。



「案外と…イけるもんだな…ほっ!」


「結構余裕ね…コージ…」


「そちらこそ余裕過ぎませんか?ソフィアさん?」



しゃがみ込み顎を手に乗せながら余裕の観戦を決め込むソフィア。



「だって私女だもの。」


「うわぁ…ズルっ!」


「コージ…上からも来たわよ?」


「は?…うわっ!」



浩二の頭をサキュバスの手が掠める。


蝙蝠のような羽根を背中に生やしたサキュバス数人が上空から浩二に迫る。

更に追加でご到着の様です。



「これは…ジリ貧だなぁ…」



それでも余裕があるのか、寸前で躱すのを止めない。

既に浩二の中では「襲われている」では無く「訓練」へとシフトしていた。


しかし、唐突に終わりは訪れる。

油断していたのだろうか…それとも予想外だったのか、地面から突然現れた二本の手に両足を掴まれた。



「何っ!?」



足元には血走った目を光らせ土に塗れた顔が浩二を笑いながら見ていた。



「怖っ!」



それが浩二の最後の言葉だった。

後は雪だるま式にサキュバスに群がられ、あっと言う間にサキュバス団子が出来上がる。



「コージっ!?」



ヤバ気な雰囲気を感じ取ったのか、ソフィアが駆け寄ろうとした時、変化は訪れた。


折り重なる様に浩二に取り付いていたサキュバスが一人…また一人と剥がれ落ちてゆく。

その表情は何処か恍惚としており、身体をビクビクと痙攣させていた。



「へ?」



ソフィアが素っ頓狂な声を上げて立ち止まる目の前で、少しだけ見え始めた浩二の身体からは青く輝く靄が立ち上っていた。


やがて最後のサキュバスが浩二に縋り付くように崩れ落ちると、その場に立っているのはゼェゼェと息を乱した浩二ただ一人だった。


そして、叫ぶ。



「…全く…柔らかいわ…暖かいわ…いい匂いだわ…ただな…」



一拍置いて、



「窒息するわっ!!殺す気かっ!!」



□■□■



「しかし…コージって絶倫よね…」


「ちょっと待て!今の発言には語弊があるぞ。」


「だって…見てみなさいよ…」



ソフィアの顎が指す方向には…

辺り一面サキュバスさんだらけだった。

しかも、皆一様に何処か幸せそうな顔をして倒れている。



「何処の世界にこの数のサキュバスにドレインされて無事な奴が居るのよ…」



自分を指差す浩二。

ソフィアは額を抑えて首をフルフルしている。



「あぁ、居たわね…馬鹿が。」


「えぇ!?」



そんないつも通りのやり取りをしていると…



「あらぁ~、コージ君にぃ♪ソフィアじゃなぁ~い♪」



何時もの間延びした声を上げてミラルダが姿を現したのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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