後ろで操る者。
「あのな?舞が「気持ち悪いです。」って言ってたぞ?」
「なっ!?バカなっ!彼女がそんな汚い言葉を使うはずがない!貴様か?…貴様が拐かしたんだなっ!」
どうすりゃ良いんだよコイツ。
本気で困ったぞ?
仕方ないな…
「もう、良いからさっさと戦おうぜ?使えよ…『千里眼』でも『透視』でも『催眠』でも『生贄』でもよ?」
「!?何故俺のスキルが見える!?隠蔽は完璧な筈だっ!」
コイツ…迂闊すぎるだろ…
自分で全部言っちまった。
「後は…『強奪』か…?」
「っ!?!?」
声も出ないぐらい驚いている。
何か…心配になって来た…
これ…
裏に誰か居るんじゃないのか…?
ちょっと鎌掛けてみるか。
「なぁ、結城。お前じゃ話にならんわ…出せよ、居るんだろ?参謀がさ…」
「なっ、何を言っている…っ!」
「だってさ、今のお前見てたら…絶対この計画立てたのお前じゃないだろ?」
「お、憶測で物を話すのはやめろっ!」
うわぁ…
凄い動揺してるんだが。
等と考えていたその時、
「ぐ…っ!」
突然金縛りにあった様に身動き一つ取ることが出来なくなった。
そして、不意に聞こえる男の声。
〈結城よ…今の内にスキルを奪うのだ!〉
「おおっ!助かったっ!」
動けない浩二にそれなりのスピードで距離を詰めた結城は、彼の肩をポンと一度だけ叩く。
そして、聞こえてくる女神様の声。
《ああぁ~、奪われちゃう~》
《…何やってるんですか…女神様。》
《いやいや、今結城に私が強奪されたんだよ!『女神の加護』が強奪されちゃったんだよ!》
《…でも、話してますよね?今。》
《もう、ノリが悪いなぁ…ま、それだけ信頼されてるって解釈で良いのかな?》
《はい。女神様ですし。間違ってもあんなカスにどうにかされないでしょう?》
《まぁね。それじゃ、色々調べて来るよ。君はちゃんと魔族領に戻って『強奪』のレベル上げとく事。いい?》
《了解しました。女神様も気を付けて。》
《はいはーい!それじゃ、行ってきまーす!》
そう言い残して女神様は結城に強奪された。
相変わらず緩いというかなんと言うか…
でも、お陰で落ち着いた。
この金縛りもちょっと気合入れれば簡単に…待てよ…うん、いい事思い付いたぞ。
「ハハッ!ざまぁ無いなクソがっ!お前はこれから俺にスキルを全部奪われた挙げ句にステータスも奪われて死ぬんだよっ!簡単に死ねると思うなよ?」
下卑た笑みを浮かべながら浩二に近付き息巻く結城。
(そうだ、今の内に『強奪』の説明見とくか。)
浩二は結城の言葉など気にも留めず、鑑定でたった今見習いになった『強奪』の詳細を確認する。
□■□■
『強奪』
他人のスキルを奪うスキル。
スキルを奪う対象の身体に触れることで所有するスキルをランダムで一つ奪うことが出来る。
奪えるスキルは一人につき一日一つ。
奪ったスキルは奪われた段階のレベルで固定され、スキルを使ってもレベルが上がることは無い。
再び対象に触れることで任意でスキルを所有者へ戻す事も出来る。
□■□■
(へぇ…色々制約があるんだな。一日一回、しかもランダムか。これ、見習いだとどうなるんだろ?失敗したりするんだろうか?)
「おい!貴様聞いてるのか!」
(取り敢えず目的も達成したし…御暇しますか。…でもその前に…)
「クソッ!馬鹿にしやがってっ!」
反応を示さない浩二に馬鹿にされたと思い激昂した結城は、動けない…と思っている浩二に殴り掛かる。
結城のそれなりに痛そうな拳が顔面に当たる寸前に、浩二は強引に金縛りを破り首を捻り躱す。
そのまま結城の腕に被せるように腕を振り抜くとゴリッ!と嫌な音を立てて浩二の拳が結城の顔面にくい込む。
「ぐべあぁっ!」
アニメの悪役が出す様な聞いたことの無い声を上げ、錐揉みしながら反対側の壁まで数m吹っ飛んだ結城は、そのまま壁に激突して崩れ落ちる様に意識を失った。
実に綺麗なクロスカウンターだった。
「ふう。スッキリした。」
清々しい顔で結城を一瞥した浩二は、取り敢えず空を見上げ口を開く。
「何処にいるか分からんからこのまま話すけど…お前は何者だ?結城を使って何をする気だよ。」
暫くしても返事が無いので「外したかな?」等と考えていると、
〈お前…何者だ…?我の拘束をあれ程簡単に跳ね除けるなど…有り得ん…〉
「あー…そっちか。何者って…それはこっちの台詞なんだが。」
浩二は若干左側から聞こえた声の方向へ振り向きながら答える。
〈我はリッチー。死者の王よ。〉
「ふーん…で?その死者の王様が何で結城なんかのお守りしてんの?」
〈そ奴は我の計画の為の駒でしかない。随分と波長が合ったのでな…それより貴様は何者だ?〉
「俺は只のドワーフだよ。」
〈…まぁ、言いたくないならば構わん。〉
「信じろよ。」
〈…馬鹿を言うな。魔力の低いドワーフに、そんな馬鹿げたことが出来る筈が無い。〉
「出来ちまったんだから仕方ないだろ?」
〈…ふん。まぁ、今回は引く。まだまだこ奴にはやって貰わねばならんことがあるからな。〉
姿の見えない声がそう言うと、反対側で気絶していた結城がむくりと立ち上がる。
酷い顔だが、どうやら乗り移られているようで呻き声一つあげない。
五月蝿くなくて助かるが。
〈貴様とはまた相見えるだろう…この国を取り返したいならばな。〉
「いや、別にこんな国に用なんか無いが…」
〈戯れ言を…では、然らばだ。〉
「人の話を聞けよ。」
浩二の言葉を全く信じていないリッチーは、別れの言葉を口にすると、黒い霧に包まれ結城ごと姿を消した。
「…何なんだ?…まぁ、後からソフィアにでも聞くか。…帰ろう。」
やっと用事の済んだ浩二は六角形のゲートを開くと、そこに飛び込むように魔族領へと転移した。
やっと帰れる…と心から喜びながら。
読んでいただきありがとうございます。




