足枷の鎖。
ドン引きされた後、当然理由を追求された。
理由とは?
そりゃ、突然ステータスの数値が跳ね上がった理由だ。
「所でコージ。その鎖は何?何だか跳ね上がったステータスに関係ありそうだけど…」
「あぁ、コレは『足枷の鎖』って名前の魔道具だよ。」
「足枷?」
「そう、これは昨日…
□■□■
「コレは…このままじゃ、日常生活に支障が出そうだな…」
ステータスを確認し終えたコージは頭を捻る。
確かに、今のステータスに慣れないうちは日常のちょっとした行動で大事故になりかねない。
「一番良いのは…武器を装備してしまうことだけど…」
『素手の極み』の効果を消してしまうには武器を持つ事が一番の近道…と言うか唯一の方法だ。
「でも…武器かぁ…」
浩二は正直乗り気では無かった。
彼は『素手の極み』に選ばれる程『素手』が好きなのだ。
しかも、武器は装備しなくてはならない。
この『装備』とは、携帯するのでは無く、『手で持つ』事を意味する。
実際浩二は残り少ないオリハルコンで短剣を作り腰に装備してみたが、数値は変わらなかった。
余談ではあるが、この時オリハルコンが粘土でも捏ねるようにヌルヌル加工できてしまった事にも驚いたのだが。
「うーん…手に装備出来て、邪魔にならず、武器らしくない武器…か。」
頭を捻り腕を組み考え込む。
その時、ふと思い出す。
『半減の呪い』を覚えるきっかけになった魔道具を。
「鎖…か。良し!作ってみるか。」
浩二は残り少ないオリハルコンを手に取り思い浮かべる。
鎖…なるべく細く…色は黒…
両端に5cm程の球体の分銅…
分銅の中には魔核を埋め込む…
込めるスキルは『半減の呪い』…
鎖にも呪いの効果を持たせる…
更に多少の伸び縮みも出来るように…
やがてオリハルコンが光り輝く。
その隣で二個の魔核が生まれ…オリハルコンがそれを包み込む。
そして、みるみるうちに形を変え…
眩い程の光が収まると、浩二の手には球体の分銅を二つ備えた漆黒の鎖分銅が握られていた。
「…うん、成功だな。」
浩二は細い鎖を手に巻き付けステータスを確認する。
すると、『素手の極み』の効果は消え、更に『半減の呪い』の効果により数値が半分になっていた。
「…良し…コレなら指の動きの邪魔にもならないな。」
パッと見黒いワイヤーに見える程細い鎖が掌全体を包み、まるで黒いオープンフィンガーグローブのようだ。
分銅も手首辺りに二つ仲良くぶら下がっている。
「取り敢えず、訓練以外では慣れるまでこれで行こう。」
□■□■
と言う訳だ。」
鎖を再び手に巻き付けながら説明を終える。
「まぁ、確かにあのステータスじゃ慣れなきゃ何を壊すか分からないもんね。」
「だろ?」
ニカッと笑う浩二。
「それはそうと…」
「ん?」
「見事に銀に染まったわね。」
「あぁ、髪か。俺も朝鏡の前で思わず二度見したよ…」
そう。
浩二はハイドワーフになった時点で髪が銀髪に変わっていた。
当然眉も。
まさかのイメチェンである。
「ふふっ、似合ってるわよコージ。」
「お兄さん銀髪も似合うねー」
「格好良いです!」
「…その…良く似合ってます…」
「お、おう。ありがとうな。」
照れ臭くなり頬をポリポリとかく浩二。
「それにしても…もうこんなに細かい細工までオリハルコンで出来るようになったのね…」
浩二の手を取りマジマジと鎖を観察するソフィア。
「あぁ、粘土みたいにヌルヌル加工出来たよ。」
「それに…着色まで…オリハルコンに着色とか聞いたことないわよ…」
「そうなのか?単純に黒くなれ…って想像しただけなんだが。」
「しかも…この細かい鎖全てに魔導文字が刻まれてるし…」
「え?…あ、本当だ。文字が刻んであるな。読めないけど。」
「…はぁ…まぁ、コージが知らずに凄いことサラッとやっちゃうのはいつもの事だしね。」
相も変わらず浩二の意志とは無関係にとんでもない事をしているらしい。
まぁ、それが浩二という人間…いや、ドワーフなのだが。
「今度、私達にも何か作って欲しいわ。オリハルコンなら腐る程あるんだしね。」
「そうだな…うん、皆に何か作ってプレゼントするよ。デザインなんかは…期待しないでくれると嬉しい。」
「コージがくれるものなら文句なんか無いわ…ね?」
ソフィアが三人に確認を取るようにウインクする。
「おー!お兄さんからのプレゼント!」
「楽しみですっ!」
「…岩谷さんが…私に…」
どうやら皆楽しみにしてくれているようだ。
責任重大だな。
「それじゃソフィア。またあの倉庫からオリハルコン貰うな。後、隣の小部屋も貸してくれ。」
「えぇ、好きに使って構わないわ。」
「ありがとう。」
この後浩二は一流魔道具職人が気絶する様な魔道具を四人にプレゼントするのだが…
当の四人は知る由もない。
「この機会に俺も色々試してみようかな…」
ふと湧いて出たような機会にこの際だからと色々試すつもりらしい。
新たに得た『至高の創世主』というスキルをもっと試してみたい…という気持ちもあるのだろう。
浩二の瞳はいつの間にかキラキラと輝き、まるで新しい玩具を手に入れた子供のようになっていた。
「良し!行ってくる!」
凄く良い笑顔になった浩二が四人に挨拶を済ませ足早に倉庫へ向かってしまった。
「あの…私、嫌な予感がします…」
「奇遇ね舞…私もよ…」
「どうしたんですか?二人共。」
「楽しみだなーっ!」
果たしてどうなるのやら…
文字通り神のみぞ知る…いや、あの女神ですらわからないだろうか。
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