二対二。
「良し!来い!」
下段に大剣を構えた浩二が叫ぶ。
「よーし!今日こそお兄さんをケチョンケチョンにしてやるよーっ!」
蓮は変な気合いの入れ方をすると、両手を空に向けて伸ばす。
すると、蓮の頭上に青い炎が渦巻きやがてソレは一つの球体の姿を取る。
「…おいおい…っ!」
浩二が焦りの声を上げる。
それもその筈、その火球は直径1mを優に超えていた。
「いくよっ!獄炎弾っ!!」
「ちょ…っ!デカっ!…ってか、速っ!」
獄炎弾と呼ばれたその青い火球は、その見た目とは裏腹に物凄いスピードで浩二に迫る。
「クソっ!正面からじゃ不味いかっ!」
素早く判断した浩二は、自ら瞬動で火球へと向かうと横を通り過ぎ様に一閃、更に追い付いて一閃、今度は追い越して一閃。
合計三回の赤い光を纏う横薙ぎで獄炎弾を相殺した。
「ふぅ…って!まだ来るのかよっ!」
浩二が追い越し様に相殺した獄炎弾の爆炎の影からもう一発の火球が現れる。
相殺しても爆発力がある為、下手な迎撃は出来ない。
浩二は素早く大剣を引き絞るように構えると、素早く三連のパワースラストを放つ。
相殺された獄炎弾は、洒落にならない規模の爆発を伴い相殺されたが、次の瞬間には下段に構えた浩二が少し離れた場所に現れた。
「危ねぇ…っ!なんつー威力だよ…」
「まだまだだよーっ!」
浩二が蓮の方向を向くと、そこには頭上に獄炎弾を二つ浮遊させた蓮の姿があった。
「…おいおい…マジか…」
「ふっふっふー!こっちには極上の精神力タンクがいるからねーっ!」
「誰が精神力タンクよ…」
蓮の物言いに、マナポーションを煽り酸っぱい顔をした舞が突っ込みを入れる。
どうやら蓮は二つの獄炎弾を射出した後更に二つの獄炎弾を捻り出し、素早く舞の回復を受けていた様だ。
「ふむ。連続使用は4回か。」
蓮は不意に聞こえた浩二の声にゾクリとする。
これ程の火力の魔法を立て続けに放たれているにも関わらず、冷静に判断を下す浩二の声に。
「…これだもんなぁ…良しっ!こうなったら全力でやってやるっ!舞っ!回復頼むよっ!」
「うん。頑張って蓮ちゃん!」
「ありがとー!」
いつもの調子が戻った蓮は、作り出した二つの獄炎弾を時間差で浩二に向けて放つ。
浩二は冷静に対処すべく目を凝らして飛来する獄炎弾を見る。
微妙に間の空いた射出。
恐らくは一つ目を相殺している間にもう一つが着弾…って狙いなんだろうが…
「まぁ、良い。まずは最初のだな!」
そう言って浩二は瞬動で獄炎弾に迫る
その時…
「甘いよーっ!」
蓮の声が響く。
と、同時に遅めに放たれた獄炎弾がスピードを上げた。
そして、浩二が相殺しようとしていた火球に追いつき…爆ぜた。
瞬動で通り過ぎ様にパワースラッシュを放とうとした浩二の目の前で二つの獄炎弾が誘爆する。
「着弾しなくても爆発させられるのかよっ!」
いや、違う。
二つの獄炎弾が互いに着弾したのだ。
浩二のタイミングで爆発させられるのを嫌った蓮の奇策だ。
爆風を肌で感じながら浩二は素早く瞬動で距離を取る。
そこにはもう一つの獄炎弾が迫っていた。
「うわっ!ヤバっ!」
そして、その獄炎弾に追い縋るように青い火球が見えた。
やがて獄炎弾は又もや浩二の目の前で爆発する。
「コレは…蓮のヤツ…」
浩二は笑っていた。
身に染みて感じる彼女の成長に。
「負けてられないよなっ!」
再び瞬動で距離を取った浩二に又もや獄炎弾と火炎球のワンセットが飛来する。
頭の中が静かになる。
素早く…舞と蓮には見えない様なスピードで瞬動すると、浩二は追随する誘爆用の火炎球のみをパワースラッシュで相殺し、更に目にも止まらぬスピードで三連のパワースラストを繰り出し獄炎弾をも相殺した。
連と舞が浩二に気付いた時には、爆発する獄炎弾とは逆方向で腰だめに剣を構えていた。
「速っ!」
「…もう、普通じゃないレベルじゃ無いね…」
二人は唖然としながら浩二を見る。
しかし、徐々に笑顔になっていく蓮。
我慢が出来なくなったのか、声にまで出る。
「もう、ヤメヤメっ!こうなったら、小細工は無しだよっ!」
「蓮ちゃん!?」
嬉しそうに叫ぶ蓮に驚く舞。
「我慢比べだよーっ!」
蓮は瞬く間に頭上に数十の青い火炎球を生み出すと、その全てを浩二に向けて放つ。
もの凄い密度で迫る青い弾幕。
浩二はひたすらに大剣を振るいその尽くを相殺していく。
「なんつー数だよっ!」
同時に撃ち落とせるものはパワースラッシュで薙ぎ払い、単発のものはパワースラストで貫く。
まぁ、傍から見れば全ての火炎球がほぼ同時に迫っているように見えただろうが。
□■□■
どれだけ続いただろう…
ひたすら青い火炎球を打ち出す蓮。
それをひたすら大剣で撃ち落とす浩二。
しかし、その均衡は突然崩れた。
浩二が膝を付いたのだ。
流石に彼にも限界が来たようだ。
「「あっ!」」
蓮と舞が同時に声を上げる。
膝を付いた浩二に驚いたのだろうか。
しかし、それは違った。
二人が驚いたのは浩二の後ろにいる存在を見たからだ。
そして、澄んだ凛とした声が響く。
「『癒しの舞《月光》』っ!」
その声が浩二の耳に届いた時には既に彼は薄く煌めく青い光に包まれていた。
闇夜を照らす月明かりのような輝き。
その光が染み込むように消えていくと、浩二はスッと立ち上がり寸前まで迫っていた火炎球を事も無げに薙ぎ払った。
「ありがとうな栞ちゃん。」
「うん!大丈夫?お兄ちゃん。」
「あぁ、スッキリ爽やか絶好調だ。」
「良かった!」
浩二に頭を撫でられながら目を細めて気持ち良さそうにする栞。
「あーっ!栞ちゃん、ズルいよーっ!」
「お兄ちゃんは私が癒しますっ!」
「むぅーっ!これじゃ回復的優位が無くなっちゃったじゃん!」
「まぁまぁ蓮ちゃん。」
拳を握り力一杯叫ぶ栞。
有利じゃなくなり不満を漏らす蓮。
それを窘める舞。
四人の訓練は夕暮れ頃に現れたソフィアの呆れた様な声がかけられるまで続けられた。
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