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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
最終章 未来

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401/405

温泉の魔力。


「いやぁ…温泉ってのは良いもんだなぁ…」


「だろう?私も肉体を貰ったら一度は入ってみたいと思っていた。」



ミディアムくらいのエメラルドグリーンの髪を湯に浸からないように上で纏めたイラが、顎まで浸かりながら何とも言えない声を上げると、それに同意したリルが青いセミロングの髪を湯に揺らめかせながら流石は水龍、器用に水面に浮いている。



「成程…肉の身体は不便な事ばかりではありませんね。先程の団子といい、この湯といい、エネルギー体では絶対に味わえませんから。」


「いや本当、温泉どころか一番最後に風呂に入ったのが何時だったか既に記憶に無いよ。」


「エネルギー体は汚れませんからねぇ…あぁ…これが極楽って奴かぁ。」



3つ並んだ同じ顔が、もれなく皆弛緩する。

右から翠の髪のインキュナ、薄い茶色の椎名、白髪のシイナの順だ。



「浩二は「風呂は魂の洗濯だ!」っていつも言ってるよ。」



短めの銀髪から飛び出す猫耳をピクピクさせながらナオは一卵性の三子のような三人に話し掛ける。



「あー…魂の洗濯…言い得て妙ですね。」


「…本当に。」


「…白の部屋にも作ろうかなぁ…」



浩二屋敷にある少し広めの温泉露天風呂には、神が作り上げた抜群のプロポーションを持つ女神達が、生まれて初めての温泉を堪能していた。

自分の身体も含め製作者が全て椎名という事もあり、その体型は身長以外は特に変わりは無く、裸で湯に浸かっている今その違いは髪色と顔つき位だろう。



丁度30分前位になるだろうか、応接間へと少し衣服を汚したナオが顔を出した。


椎名や龍種達が世界の真下で色々としていた頃、浩二とナオは女神様に手渡された複数の細かいチェックポイントが書かれた紙を頼りに世界中を飛び回っていた。


何やら長時間時間を止めた影響で世界中の特殊な地形に魔素が引っかかり滞るという事態が起きているそうで、それらの魔素溜まりを散らしてきて欲しいと頼まれたのだ。

それをしなければ、世界のバランスを無視した様な強い魔物が突然湧き始める事態にもなりかねないらしく、二人も二つ返事でOKした。


浩二とナオが二手に別れ、虱潰しに散らして周り先日やっと浩二の担当箇所が終わり、残るはナオの担当するサーラ地方南側の沿岸部だけとなっていたのだが、それも先程終わり帰り際に農場の様子を見て来たそうだ。

そしてナオに限って様子を見るだけで済むはずもなく、案の定服が土や埃で汚れていた。



「ナオ、先に風呂に入ったらどうだ?」


「んー…そうするかな。」


「先程温泉露天風呂の清掃が終わりましたから、いつでも入浴が可能ですよ?」



ナオについて来ていた袈裟懸けをしたままのガンマが長いポニーテールを揺らしながら進言して来る。

彼女がナオについて来ていたのも汚れていた彼女を見兼ねて先に風呂を勧めていたからだ。


しかし、その温泉露天風呂というワードに食い付いたのはナオでも浩二でも無く、水龍リルと白龍シイナだった。



「温泉!?この屋敷に温泉があるのか!?」


「あ、はい。この屋敷の風呂は天然温泉掛け流しの露天風呂です。」


「頼む!是非、是非入らせては貰えないだろうか?龍の姿だった頃から温泉に浸かる人間や動物達を見ていて、いつか自分もと思っていたんだ!」



それを聞いたリルは、パァッ!と満面の笑みを浮かべ団子そっちのけで浩二へと詰め寄る。

何処か女騎士を思わせる凛とした表情をしていた彼女の豹変ぶりに若干引いていると、以外にも女神様から声が掛かる。



「私も温泉には興味があるなぁ。知識でしか知らない事だし、どうだろう?私達も入浴しても良いだろうか?」


「ええ、それは全く問題ありませんよ。広さも十分ですし…ガンマ、女神様達を風呂場に案内して貰えるか?それから湯上りの浴衣も。」


「はい!かしこまりました。」



ガンマは、瞳をランランと輝かせる女性メンバーを離れにある露天風呂へと案内して行った。

応接間に残される男性メンバーである浩二、ルドラー、ドハラとカグヅチ。



「ルドラーさん達はどうします?」


「あぁ、風呂か。折角だから飯の後にでも入って行くよ。」


「…俺はいい。」


「俺もだ。水は好かん。」



男性メンバー側はルドラー以外あまり風呂が好きでは無い様子だ。

女性達とは違い反応の薄さがそれを物語っている。



「なら、夕飯の後にでも入りましょう。背中流しますよ。」


「そうだな。たまには裸の付き合いも悪くは無い。」



こちらはこちらで風呂好きの二人は楽しそうだ。

そしてドハラとカグヅチはと言えば、相も変わらず大食い選手権ばりに団子を頬張り続けていた。



□■□■



「あぁ…気持ちいいねぇ…マキナも来れば良かったのに。」


「えーと確か…「椎名様に作って貰った新しいジェネレーターの出力調整と、使わなくなった核融合炉を非常用として使う為の改造とメンテナンスをしなければならないので…」と。」


「あの子はクソ真面目だねぇ。」


「多分、今まで休暇や休息というものとは無縁で生きてきたからだろうね。まぁ、元が人工知能ならそれで仕方の無い話なんだけどね。」



椎名が慈しむような表情でそう語る。



「ま、浩二君の屋敷が無くなるわけじゃ無いんだし、その内紹介も兼ねて引っ張って来るよ。」


「私からもお願いしよう。あの子を連れてまたお邪魔しても良いかな?」



シイナの頭に手を置きワシャワシャしながらナオに尋ねる。



「大丈夫ですよ。浩二だってこのお風呂を独り占めする気なんて無いだろうし、何時でもいらして下さい。」


「ありがとう。」


「私達も良いかしら!?」


「勿論、何時でもどうぞ。…あ、でも、たまに他の人が入って居たりしますけど…」


「私達は構わないわよ。」


「なら、大丈夫ですね。」



ナオのこの発言が切っ掛けで、ソフィア及び人族組メンバーが入浴中に龍種達にエンカウントするという事件が起こったのだが…それはまた別のお話。


読んでいただきありがとうございます。

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