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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
最終章 未来

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食事会。


「どうして俺の家なんですか…」



サーラ領浩二屋敷の応接間にて、掘炬燵に足を突っ込んで座る錚々たる顔触れに頭が痛くなる。

しかも、そのうちの何人かは面識すらない。

別に屋敷を訪れることに何の不満も無いが、せめて大勢で押し寄せるなら家主である自分に一言欲しかったのだ。



「いやぁ…一回でいいから彼女の作るスイーツを食べてみたかったんだよ。」


「俺は一言入れてからにしようと言ったんだがな。」


「ルドラーは良いよね、この中で一人だけ食べた事あるんだからさ。」



真っ白な女性はわざとらしく頬を膨らませ彼を非難する。



「しかも、椎名さんとインキュナさんまで…」


「いやぁ、何やら美味い物が食べられるって言うからさ、しかしスイーツなんて1000年振り位に食べるよ。」



少しスケールのズレた感想を述べる神様こと椎名。



「旅立ちの前に一度寄りたいと椎名様が言うものですから。」



串を器用に持ち団子をいっぺんに二つ口に入れながらインキュナが甲斐甲斐しく椎名の口元に着いたみたらし団子のタレをハンカチで拭いている。


今日出されているスイーツはみたらし団子。

餅米の栽培が軌道に乗り、今回初のもち粉を使った団子が完成した。

今までの米粉を使った物も試行錯誤が見られ、あれはあれで美味かった。

しかし、やはりもち粉を使ったものは別物だった。

弾力、歯応え、米自体の甘味、全てにおいて上回っている。

しかも今後の改良でまだ美味くなる可能性があるとタロス&コロンが鼻息を荒くしていた。

食が豊かになるのは本当に有難いが、無理だけはしないで欲しい。



「この間出されたものと…違うな?明らかに美味い。」



頻繁に食事をしないというルドラーですら気付く明らかな味の違い。



「みたらし団子の材料が遂に揃ったので、今お出ししたその団子が完成形です。この間までは代用品でしたから。」


「だそうだぞ?良かったなシイナ。前に俺が食ったものの数倍は美味い。」


「だからと言って独り占めは良くないよね。」


「独り占めとは人聞きが悪い。お前が出不精だっただけだろうが。」


「お土産くらい持って来てくれても良いじゃないか!」


「土産と言うのは頑張って仕事をしている奴に持っていくものだろう?」


「ちゃんと働いているじゃないか!」


「あれで精一杯ではあるまい?手を抜き過ぎだ。」


「何をっ!!」


「何だ?」



隣り合わせで座りながら言い争いに発展し始めた黒と白。

そしてその背後にスーッと現れた椎名。


ゴッ!!ゴッ!!


物凄い硬いもの同士をぶつけた様な景気のいい音がして椎名の拳が二人の頭に沈む。



「「〜〜〜〜っっっ!?!!!」」



頭を抱えてシンクロするようにテーブルに突っ伏す黒と白。

団子と茶はひっくり返さない様に向かいに座る浩二がしっかり避難させている。



「二人とも、静かに食べられないのか?恥ずかしい。今なら浩二君は白の部屋まで転送が使えるんだから、いつでも『御供え』という名目の差し入れを貰えば良いじゃないか、意地汚い。」



椎名がそう言って目配せをしてくる。

浩二は小さな溜め息を一つ零すと、シイナ…女神様に向かって口を開く。



「お気に入りでしたら、何時でもお届けに上がりますよ。それにいつ遊びにいらして頂いてもかまいませんから。ベータも喜びますし。」



今度は浩二がたった今新しい団子を持って来たベータへと話を振る。



「はい。神様や龍種の方々に食事や甘味を振る舞えるなど有難い事です。何時でもいらして下さいませ。」



一度テーブルに大き目の角盆を置くと、膝をつき指を立てて丁寧にお辞儀をした。

そして再び体を起こすと、角盆から種類の違う団子が二本乗った皿を皆に配って歩く。



「細かい粒の黒い方が『胡麻餡』で、照りのある滑らかな黒い方が『漉し餡』です。どうぞお召し上がり下さい。」



そう説明して促した直後に数名の皿から団子が消失した。



「おかわり御座いますが…」



そこまで言ったベータの目の前に空になった皿が一斉に差し出される。



「ふふっ、かしこまりました。少々お待ち下さいね。」



それはもうニコニコと満面の笑みで皿を回収した彼女は、気合いの入った仕草で厨房へと引っ込んで行った。



□■□■



「…ねぇ、あの黒い人って黒龍帝よね?」


「そうだろうな。前にシュレイド城で見た。」


「なら、その黒龍帝と口喧嘩してる隣の白い人は?」


「知らねーよ。…でも、何か何処で聞いた声なんだよなぁ。」


「あ、猛っちも?」


「わたしは…あの姿どこかで見た気が…」


「舞ちゃんも?栞も何処で見た気がするんだぁ。」



遅れて帰宅した人族組メンバーが、好奇心に負けて襖の隙間から中を覗けば、黒龍帝ルドラーの姿が見え隣の女性と口喧嘩を始めれば、そりゃ気になる。

ルドラーはこの世界のナンバー2、タメ口で喧嘩が出来る人物など数える程しか居ない筈なのだ。


そしてその二人に景気良く拳骨を見舞う白い女性によく似た女性。

この辺りから覗いている人族組メンバーの口数が極端に減り始める。



「……なぁ、今御供えって…」


「…今ベータが神様とか龍種…とか言ってたの聞こえたわよ?」


「あ!!!むぐっ!?」



何かに気付いた舞が声を上げてしまったのを慌てて蓮と栞が塞ぐ。



「舞の馬鹿っ!」


「急に大声出さないでよ舞ちゃん!」


「ご、こめん。でも思い出したの…あの白い女の人の顔、アレってルグルドの教会で見た女神像とよく似てるって。」


「「あ!」」



舞の言葉にハッとする蓮と栞。



「…つまりアレか?今この部屋には…女神様が居るってか…?」


「…それだけじゃないわ。他にも龍種以上が少なくとも後7人は居るって事よね…?」


「馬鹿じゃねーの!?帰るぞ?洒落にならん。」


「…同感。」



猛と麗子の目配せに静かに頷く3人。

静かにゆっくりと後退りを始め、二つ隣の客間に全員揃って滑り込んだ。



「あら、いらっしゃい。」



そこには、座布団に腰掛けみたらし団子を頬張るソフィアの、姿があった。


読んでいただきありがとうございます。

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