新たな身体。
「えーと…ソフィア?聞きたいことがあるんだけど…いいか?」
「なによ?別に遠慮なんて要らないわよ?」
「ありがとう、助かる。…じゃなく、オリハルコンってこっちではそんなにポピュラーな金属なのか?」
「あー…一応『神代の金属』って言われてるわね。」
やっぱりオリハルコンってこっちでも伝説の金属なんだな。
「そんな金属をポンポン渡して良いもんなのか?」
「大丈夫よ。私物だし。」
「私物って…大事なものなんだろ?」
「別に今の所使い道も無いし…あぁ、コージ私のスキル知らないのよね、うっかりしてたわ。」
「スキル?」
何か特別なスキルなのだろうか。
そう言えばソフィアってハイドワーフで魔王なんだもんな。
金属関係のスキルだろうか?
「私は『金属の英智』ってスキルを持ってるの。」
「金属の英智?」
「そう。この世界にある有りと有らゆる金属のレシピとそれを瞬時に精製するスキルよ。」
「それはまた…まさか、オリハルコンのレシピも?」
「ええ、当然知ってるわ。ネタバレすると、オリハルコンって半分以上はミスリルなのよ。後、アダマンタイトと数種類の金属で出来た合金よ。」
「そうだったんだ…」
「まぁ、スキルが無い場合は気の遠くなるような細かい作業を繰り返して錬成するんだけど…私の場合は材料さえあれば一瞬だし。」
一瞬とのたまう。
正に紛うことなきチートスキルだ。
「ちなみに、在庫は如何程…?」
「ん?オリハルコン?…えーと…多分一軒家が建つくらいかしら。」
「は?」
「だから、総オリハルコン製の一軒家が建つ位はあるわ。」
やっぱり魔王は半端じゃなかった。
しかし、総オリハルコン製の一軒家とか悪趣味極まりないな。
「とりあえず…ミスリルを下さい。」
「オリハルコンじゃなくて良いの?」
「オリハルコンなんて、身に余る素材だよ。一応加工できるか位は試させて貰いたいけど。」
「分かったわ。それじゃ、倉庫に行きましょ。この城の地下に私専用の倉庫があるから。」
ソフィアはソファーから立ち上がると、浩二を連れて地下倉庫へ向かった。
□■□■
「うーん…やっぱりまだ無理みたいだ。」
「そう、残念ね。まぁ、いくらか自室に持って行くといいわ。スキルの訓練にはなるでしょ?」
浩二は手に持った黄金色に輝く金属を片手に頷く。
今の浩二の『黄昏の傀儡師』LV3ではオリハルコンゴーレムは作れないらしい。
改めて辺りを見回すと、無造作に金属のインゴットが詰められた木箱がそこら中に並んでいる。
ソフィアはその木箱の中から一つを選ぶと無造作に中のインゴットを浩二に投げて寄越した。
「うわっ…っと!…おぉ…軽い…」
「それがミスリルよ。どのぐらい使う?」
「えーと、ゴーレム一体分あれば充分。」
「そう、ならこのぐらいあれば充分ね。」
そう言って小さめの木箱を軽々と持ち上げる。
いくらミスリルが軽いと言っても金属だ。
そのインゴットが数十本入った木箱を軽々持つとか。
「もしかして…ソフィアって力持ち?」
「なっ!?失礼ね!スキルよスキル!私は金属に関しては重さを殆ど感じないのよ!」
「ごめん!…それにしても…そのスキルって、かなり凶悪じゃないか?」
「そうね、戦闘では数百トンの大金槌を振り回したりするわ。」
ソフィアには逆らわないでおこう…
「また何か失礼な事考えてない?」
「そんな事ないよ。普段の可愛さからのギャップが凄いなぁって。」
「ま、また可愛いって!もう!冗談は止めてよねっ!」
顔を真っ赤にしてそっぽを向くソフィア。
相変わらず打たれ弱いようで。
「こっちよコージ。そこに小さめの部屋があるから、そこでゴーレム作っちゃいましょ。」
「あぁ、分かった。」
部屋に入り簡素なテーブルの上に木箱を乗せたソフィアは近くに置いてあった椅子に腰掛ける。
「見ててもいい?」
「構わないよ。それじゃ、早速始めるか。」
浩二はテーブルの上にミスリルのインゴットを全て乗せると、ゴーレムの魔核を上に乗せて手を翳す。
想像する…
新しいゴーレムの姿を。
前のウッドゴーレムよりも、もっと人型へ近付ける。
姿はスリムな中性…
細身のフルプレートメイルに鼻先までフェイスガードの付いたハーフヘルム。
顔は…
ふとソフィアが目に入る。
まぁ、口元だけだし、いっか。
口元をソフィアに似せる。
「よし…『クリエイトゴーレム』っ!」
ミスリルのインゴットが光に包まれ形を変えていく。
「ぐっ…結構キツい…な。」
身体の中から何かがごっそり吸い取られる感覚。
浩二は丹田に力を込めて耐える。
やがて、光が収まるとそこには想像した通りのゴーレムが横たわっていた。
「…やっぱりコージは普通じゃないわ。これだけ精巧なゴーレムをものの数分で作っちゃうんだから。」
「そう…かな?…あー…キツい…」
そう言ってテーブルに手を掛けたまま膝を付く浩二。
「大丈夫!?コージ!」
「大丈夫だよ…ソフィア。多分…ミスリルを使ったせいだと思う…」
ソフィアが駆け寄り浩二の背中に手を置きながら、心配そうに顔を覗き込む。
心配性だなソフィアは。
「大丈夫、大丈夫。後からポーションあおるから。心配かけたねソフィア。」
「もう…!無理しちゃ駄目よ?」
「あぁ、ごめんな。…さて、ゴーレムを起動させてみるよ。」
再び立ち上がった浩二はゴーレムを起動した。
むくりと身体を起こすとゴーレムがこちらを見る。
瞳はフェイスガードで見えないが、綺麗な顔立ちだ。
「調子はどうだ?身体に不具合は?」
「はい、マスター。全て良好です。ありがとうございます。」
「良かった。またよろしくなゴーレム。」
「はい、マスター。」
立ち上がったゴーレムは胸に手を当て軽くお辞儀をした。
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