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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第一章 ドワーフは魔族!?
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俺、ドワーフになったわ。

結城君とか言う男子生徒が数人の生徒を引き連れて生徒の集団に近寄ると、少なくない人数の女生徒が何やら言いながら彼に群がり始め、二言三言会話したと思ったら途端に嫌な視線がこちらに複数向けられた。


明らかに敵意…とまではいかないが、決して好意的ではない視線なのは浩二にも分かった。

中にはチラチラこちらを見ながら憐れみとも嘲笑とも取れる表情をする者さえ。



(んー…これはアレか?取り巻きとか言うモテ男女に群がるアレか…?)



元の世界?では当たり障り無く過ごして来た自負のある浩二だったが、こういう視線は何度か感じたことがある。

まぁ、決まって相手の勘違いか自意識過剰が原因なんだが。



(あー…公園でナオでも撫でて癒されたいわ…。)



座ったままだった浩二は、そんな粘りつくような視線に辟易しながら胡座の中の空間をエアー撫で撫でしていると、それを察した出来た彼女は、素早く肩から飛び降り胡座の空間に滑り込むと「仕方ないわね…ほら、どうぞ。」と言うかのようにその綺麗な青い瞳で浩二の顔を見上げる。



「…………ナオ、本当に俺と結婚しない?」



あまりの彼女の出来っぷりに思わず口にした。

その手は彼女の滑らかな毛並みを撫でながら。



「ナァーーォ…」



プロポーズの返事を返してくれたように鳴いたナオだったが、肯定か否定かまでは分からない。

ただ、彼女は目を細めながら気持ち良さそうに浩二に身を委ねているのだった。



□■□■



そんな時、癒しの一時を邪魔するように生徒の集団と浩二の間の空間に見覚えのある魔法陣が現れる。

鈍い光を放つソレはやがて徐々に光を増し一際大きく光り輝くと、そこには見慣れぬ白い服を着た三人の人物が立っていた。



「ようこそいらっしゃいました勇者の方々。

我々はあなた方を歓迎いたします。」



その真ん中に立つ人物が生徒達に向かい両手を広げ、大袈裟に話し掛ける。


声質から間違いなく男だろうが、白いフードのようなものを被っており、表情は伺えない。



「さぁ!早速国王の元へ参りましょう。」



そう言うと、こちらの意思など無関係かと言わんばかりに広げた両手を胸のあたりで組むと、驚く事に生徒の集団と浩二を含めた全ての人がすっぽり収まるような巨大な魔法陣が足元に現れた。


再び襲う浮遊感と不快感。

前回よりは幾分マシだとは思うが…転移する距離とかも関係するのか…?

前ほど目眩や胃のムカムカはない。


視界が戻ると、そこは正にファンタジー…と言うか中世の城、その王との面会の間みたいな場所だった。


無駄に広い空間に赤い絨毯、その絨毯の先に階段のようなものが3段。

その上には玉座。

そこには、明らかに王様であろう人がドッシリと腰を下ろし、その隣には綺麗な…見るからに高そうなドレスを身に纏った浩二と同じ位の歳の女性が両手を胸のあたりで組みながら少し沈んだ表情をして佇んでいた。


再び転移をさせられザワつく一同を他所に、先程の三人が王様の元へ駆け寄り片膝をつけ頭を下げると辺りに響くような声で



「勇者様方をお連れしました!」



と声も高らかに告げた。

壁際に控えていた兵士達からも「おおっ!」みたいな感嘆の声が上がる中、王様が口を開く。



「よくぞ参られた異世界の勇者の方々よ!

早速で悪いのだが、そなた達のステータスをチェックしようと思うが…宜しいか?」



(は?)



ハッキリ言おう。

なんだこの茶番は。

これはアレか?

人様を道具か何かと勘違いしているんだろうか?

まず全く説明がない。

何故異世界から呼んだのか。

何故この人数なのか。

何をさせるために呼んだのか。

そして、元の世界に帰ることが出来るのか。

いや…そんな事はまぁ、些細な事だ…些細じゃないが。

後からでも説明は出来るのだから。

この場で一番気持ち悪いのが、



誰もそれを不自然だとは思ってない事だ。



異世界の王様や兵士達、迎えに来た三人はまだ分かる。

何故か生徒達までもが王様の言葉に納得したように迎えに来た三人が用意した水晶玉のようなものの前に並び始めたのだ。


そう。


浩二一人が何一つ理解出来ていないのだ。

これから何が始まるのか、何をさせられるのか、全く。


しかし、嫌な予感と共にさっき話した男子生徒の言葉を思い出し確信に近い物が浩二の頭に浮かぶ。



『頭の中に声が響いた。』



男子生徒…結城はそう言った。

きっと彼等は説明されていたのだ。

最初から最後まで大切な事は全て。

それを納得、又は説得された上で召喚されたのだと。


嫌な予感がどんどん膨らんでいく中、呆然としていた浩二に声がかかる。



「さぁ、後はそなただけだ。数合わせとは言え一応勇者召喚された者だからな。」



全く悪びれも無く数合わせと言い切りやがった。

流石にキレそうになる。


周りの生徒は既にチェックを終えているのだろう、何やら手元で薄く青色に光るプレートのようなものを見せ合いながら一喜一憂していた。



「ほら!早くしないか!時間は限られているのだぞ!これだから数合わせは…。」



白い服を着た者の一人が、どうすればいいか解らず呆然としていた俺の背を突き飛ばすように押して、水晶玉の前まで押しやり無理やり浩二の右手首を乱暴に掴むと掌を水晶玉に押し付けた。



「…お前ら…さっきから数合わせ数合わせって…ッ!」



苛立ちが収まらず思わず口にした浩二だったが、男の表情が呆然としたような…青くなったような感じに歪み、何があったのかと視線を水晶玉に向けると…



□■□■



名前 岩谷浩二(イワタニコウジ)

年齢 26

種族 ドワーフLV1

職業 人形師

筋力 25

頑強 40

器用 10

敏捷 5

魔力 1

スキル

『黄昏の人形師』LV1

『黄昏の傀儡師』LV1

『魔核作成』LV1



□■□■



「へ?ドワーフ?」



気の抜けたような声が出た。

何故か…本当に何故か知らないが…


どうやら異世界で俺はドワーフになったようだ。


読んでいただきありがとうございます。

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