表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第八章 交易と発展。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

280/405

バシリスク。


バシリスク。


本来深い洞窟の深部にのみ生息している見た目は蛇の様な魔物だ。

艶のある漆黒の体躯は野太く、優に数mは下らない。

唯でさえ暗い洞窟内でその体色は視認しづらく、気付けば逃げられない状況だった…と言うことも有り得る話なのだが、今のところその様な報告は非常に少ない。

それは何故か?


答えは実に単純で、単に個体数が少ないからである。

個体数が少ない上に、唯でさえ光源処理が成されていない洞窟の深部など、余程の用事が無い限り普通は入ったりしない。

そして、個体数が少ない理由としてその発生の理由にある。

そう、発生(・・)なのだ。


バシリスクとは、実はガスト等と同じ闇の魔素の集合体であり、より濃くより高圧縮されたものがバシリスクとなる。

しかし、本来普通の洞窟では魔素の高圧縮等は起きず、圧縮が起きる前にガストやスライムなどの魔物が先に発生する。

だが、稀に洞窟等の広範囲にわたる崩落が起きた際、発生していたガストやスライム等が強制的に1箇所に押し込められる事態となる場合がある。

これにも条件があり、ガストは闇の魔素の集合体、スライムは地下で染み出す水に魔素が染み込みスライムとなる。


つまり、どちらも多少の崩落程度ならその不定型な身体を生かし、隙間を縫うように何処へでも抜け出せる。

しかし、発生して間もない頃ならば話は別であり、「集合体になる前の魔素」や「染み出した水に定着する前の魔素」ならば、抜け出す等の意思も無く、ただひたすらに其れ等が纏まり一つの塊となる。

言わばバシリスクとは『蛇の形をした馬鹿デカいガスト』なのだ。


その身体が高圧縮された闇の魔素である特性上、その性質は酸や毒が殆どであり、其れ等を液体や気体に変えて攻撃手段とする。

口から吐き出す毒は非常に強く、触れれば瞬く間に爛れ腐れ落ちる。

そして、その身体の艶は強酸性の体液を纏っているからであり、その酸はミスリルすら容易く溶かす。


その存在自体が厄災であり、一度地上に現れればありとあらゆる生物の天敵となりうる存在だ…が、そうはならなかった。

それはバシリスク自体が光を嫌う性質があり、間違えても好んで地上へは出ない。

松明や篝火に敵意を向け、それ等を消し去り真の暗闇を好む。

そして、その暗闇から生まれるガストやスライム、ゴーレム等を溶かし捕食して生活しているのだ。


過去から今までバシリスクと遭遇したと言う例は極めて少なく、やはり主に採石や鉄鉱山等の坑道と繋がった自然洞窟の深部にて遭遇する事がほぼ全てだという。

間違えて出会った場合、手に持つ松明や明かりとなるものを即座に投げ捨て、逆方向へと逃げ出せば運が良ければ助かるだろう。

だが、ほとんどの場合はバシリスクに直接攻撃を受けるのでは無く、その根城となる暗闇の洞窟内に充満する気化した毒や酸でダメージを受けやられてしまうのだ。


しかし、其れ等の事故すら無くなったのにはやはり訳があり、ドワーフ単独による鉱脈探索がほぼ無くなった事が関係しているのだ。

その昔、鉱山とはドワーフの住処であり仕事場でもあった。

鉱山内に住処を作り、揺らめく篝火の中で生活をする種族だからだろうか他種族との関わりはあまり無く、住処となる坑道へと招き入れるなど有り得ない話だった。

しかし、とある事件を切っ掛けに犬猿の仲であったエルフとの密な交流の末、効率からも事故率からも他種族の手を借りるのが最善という結論に至った訳だ。


現在ドワーフから依頼を受け同行する冒険者やエルフ等は、魔法を使えないドワーフとは違い光魔法にて光源の配置も容易に可能な事に加え、洞窟内に気化して漂うバシリスクの酸や毒を中和する術を持つ者が殆どなのだ。

それは、冒険者ギルドにて冒険者に対し対処法取得が必須となっており、それすら出来ない者は『割の良い仕事』と言われる鉱山探索同行の依頼から弾かれてしまう。


そもそも真正面から戦えば勝ち目すら無いが、事前にバシリスクの存在が明らかなら、近寄らずかつ無駄な光源を置かなければ向こうから襲って来る事も無いのだ。


元々暗くて静かで闇の魔素が多い場所を好む存在なのだから、そっとしておくのが最善手だろう…互いの為にも。



が、既に出会ってしまった場合がは仕方が無い。

しかも目の前で無造作に光源を設置しまくっていたりすれば尚更戦闘は回避できないだろう。


しかし浩二の不意討ちによる一撃が入ったのだろう、確かに鳴き声が聞こえた筈だが、それから一向にバシリスクから動きを見せる気配が無い。



「ん?いい所に入ったか?」



何の警戒もなしに一歩踏み込んだ瞬間、横向きに開かれた蛇の顎が浩二を挟み込み…バクン!と効果音がするかのような勢いで閉じられた。

完全に油断していた上、猛毒が滴る牙がズラリと並ぶ大顎に噛みつかれれば、普通じゃなくてもその場で即死の一撃だ。

なのに、浩二を口に咥えたまま辺りを暴れ回るバシリスクは更なるダメージを与えるべくトンネルの壁面へと何度も浩二を打ち付ける。

しかし、その口元からは平然とした声が響く。



「毒もセーフで良かったわ。」



純白の鎧で全身を包み一安心と言わんばかりに軽く宣う。

高圧縮されたトンネルの壁面が崩れる程の力で打ち付けられる方は問題無いと言わんばかりに。


恐らく驚いたのだろう、一瞬その動きを止めたがバシリスクは再び浩二の身体をトンネルへと打ち付け始めた。

その噛み付く口の端に黒い手が掛かる。

全身純白にもかかわらず右腕だけは黒いその手が。



「取り敢えずそろそろ良いだろ?」



徐々に力を込めると簡単に開いてゆくその顎。

更に掛けられた左手により締め付けが無くなった大顎からスルリと脱出した浩二を目を丸くして見詰めるバシリスク。




今日生まれたばかり…と言うか、生まれたのは数十分前だ。

気付けば周りには餌となるガストやスライムが溢れ、光も無く辺りは闇が包む。

幸せなど知る程長くは生きてはいないが、何不自由ない住処だと理解出来た。

自分の住処の状況を理解すべくより闇が深い方と進んでいた最中だったが…それは唐突に訪れた。


背後から猛烈なスピードで迫る光。

躱す隙間など無く、真正面から受けたそれは眩しいだけでは無く痛かった。

身体の数カ所を裂かれ、無理矢理隙間に捩じ込むように自分を追い越し先へと進むソレ。

追おうとしたが気付けば今度は周りが腹が立つ程明るい。

先ずはこの邪魔な光を消そうと既に傷の癒えた身体を打ち付ける様して消して回っていると…今度は光を追加しているヤツがこちらに向かって来るのが分かった。


読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ