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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第七章 大地を行く。

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サーラ領食料事情。


「ソフィアさん、サーシャさん。気を付けないと一瞬で無くなるから気を付けて。」


「…そうなの?」


「そうね、間違いないわ。」


「…こっちに来てケーキが食べれるとは思わなかった。」


「ケーキ♪ケーキ♪」



女性陣の盛り上がりが半端無い。

サーシャに関しては微動だにせずベータがシフォンケーキを切り分ける姿を見ている。

辺りに卵とバニラの優しい香りが広がり、一緒に紅茶をいれ終わったベータはそれぞれにケーキと紅茶を配り終えるとペコリと頭を下げる。



「では、よろしくお願いします。」



そう口にした途端、物凄い勢いでフォークが動き一口目が口へと放り込まれた。



「んまーい♪」


「…ヤバイわ…この世界でシフォンケーキはヤバイわ。」


「………」


「ふふっ、美味しい。」


「お!美味い。」



若干1名が無言になっている。

そんな中、異世界組2名の反応は劇的だった。



「…お母様…おかしいわ…口に入れたはずなのに…消えたの。」


「そうなのよ、ソフィアちゃん!味だけ残して消えたのよ!」



実に分かり易い反応だ。



「ねぇ、ベータ?」


「はい、何でしょうか麗子様。」


「何でシフォンケーキなの?スポンジケーキより先にシフォンケーキ?」


「それは、試作の段階で材料がスポンジケーキと生クリームしかなかったので、スポンジケーキは果物を仕入れた時に取って置こうかと。」


「正解よ!」



ベータに向かいグッとサムズアップする麗子。

ニッコリと微笑むベータ。



「…今ケーキの試作って、今まで材料が無かったの?」


「はい舞様。最近になって『薄力粉』が手に入りました。この世界の小麦粉は殆ど『強力粉』なので、お菓子作りに優しくないのです。更にほぼ同時に水牛の乳が手に入りましたので。」


「…そっか。」



ずっと無言で食べていた舞は質問の答えを聞くと静かにフォークを置き両手を合わせて口にした。



「ごちそうさま。本当に美味しかったよ、ベータ。」


「はい。お粗末様でした。」



そう言って互いにニッコリ笑う2人。

そして、その周りで明らかに食い足りない雰囲気を醸し出している若干6名。



「お代わりもございますが…この時間にこれ以上はお勧め致しかねます。」



時間は既に午後9時を回っており、間食は控えた方が良い時間帯な事は間違いない。

まぁ、人族組はそれで納得出来よう。

しかし、ソフィア&サーシャはそうはいかない。

この2人は最速でも次にシフォンケーキにありつけるのは明日の今頃であり、今の2人に丸一日のおあずけが不可能な事はその表情を見れば一目瞭然だろう。



「お二人には包んでお渡ししますので、明日の昼食後にでもお召し上がりください。」



流石はベータ。

その辺りは抜かりがないようだ。

全員の紅茶を入れ直し「それでは準備して参ります。」と笑顔でキッチンへと引っ込んで行った。



「私、もしかしたらベータがこの世界最強かも知れないと思ったわ。」


「あー、確かにそうかも。」



やはり胃袋を掴んだ者はどの世界でも強いのだ。



□■□■



「タロス、ここで間違いないんだな?」


「はい、マスター。私がドローンを使い夜になると現れるのを数回確認しております。夜行性…もしくは月光浴辺りが妥当だと判断します。」


「そうだね。確か記録には夜行性って記されてるよ。」



サーラ半島の南の海岸部から人口河川伝いに数十km進んだ辺り、元々辺り一面塩の大地だった場所。

本来は川を作り少しづつ土中の塩分を抜き畑に利用しようとしていた場所。

今現在そこは見渡す限りの湿地になっていた。


原因は…とある人物が本来の姿のまま人工湖へとダイブした際に領内に溢れそうになった水を河川方向に強引に逃がした為、鉄砲水なんて生易しいレベルでは無い量の水が途中の河川を削り、その土砂ごと塩の大地を根こそぎ海へと流してしまったのだ。

その際残された土砂が水を含み、新たに生まれた河川の周りに溜まった為、この様な湿地が生まれてしまった。


まぁ、湿地とは言え相変わらず草木は殆ど生えておらず、単に水分が多めの土壌と言ったところだ。

今はまだ丸坊主なこの場所もいずれは田畑に利用出来ないかと期待していた。


ついこの間の話だ。

タロスが警戒ついでの領内見回りをドローンを使い行っていた際、この場所に奇妙な跡が幾つもついている事に気が付いた。

何か重い物を引きずって行ったような跡が海まで蛇行しながら何本も。

それを日中に発見したタロスはその日からドローンを1機その場所の上空に待機させ観察を続けた。

それから数日経たないある日の深夜、それは姿を現した。


体長約10mぐらいだろうか?

黒くヌラヌラと光る体表面が満月の明かりを照り返している。

前足は無く長い胴体の真ん中より後ろ寄りに少し太めの後ろ足がついており、そこには水掻きが付いた指が4本見えた。

全体的に黒いせいだろうか、顔のあるべき位置にそれらの部品が見当たらない。



「アレは…まさか…」



タロスには心当たりがあった。

と言うか、1度その姿を見た事がある。

その人物は絶滅したと自ら口にしていたが。



「…アンギラ…サーペント…」



思い出すようにその名を口にするタロス。

現在は浩二の屋敷に用意して貰った自室にてドローン越しにその姿を確認している。

そのアンギラサーペントと思わしき個体はその一体だけでは無く、辺りの泥から次々と顔を出しては身体を器用にくねらせ、次々と海のある方向へと這って行った。


数時間後、海から上がったアンギラサーペント達は再び泥の地へと戻り、やがて全てが泥の中へと姿を消した。


タロスは次の日、ソフィアの紹介のもとシルビアに会いに来ていた。



「タロスが単品で会いに来るとか珍しいわね。」



丁度ルグルドに来ていると言うことで、シュレイド城から転移陣で飛んだタロスは、そう言うシルビアに一つの映像を見せる。



「お時間を取らせてしまいすみません。少々珍しい物を発見いたしまして。コチラをご覧ください。」


「…その魔道具も充分珍しいけど……どれどれ…って!?アンギラサーペントぉ!?」


「やはりそうでしたか。」



浩二に念の為にと作って貰っていたドローンの映像を保存する魔道具…まぁ、映像記録のみのスマホみたいなものだが、最初はそっちに興味津々だったシルビアは、そこに映るアンギラサーペントの姿を見た途端、魔道具の事など忘れその画面に齧り付いた。

読んでいただきありがとうございます。

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