表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第七章 大地を行く。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

244/405

試験。


「…久しぶりに会ったと思えば…まさか君達と手合わせする事になるとは…」


「すいません…よろしくお願いします。」



冒険者ギルドの地下にある訓練場にて向かい合い頭を下げる蓮とポリポリと後頭部を掻くシュナイダー。

その周りには溢れんばかりのギャラリーが。



「いやいや、俺は結構楽しみだよ。蓮もどうせなら楽しもう、怪我をしない程度にな。」


「はい!」



蓮は元気に返事をして半身に構える。

この白虎の胸を借りる為に。



話は少し前まで遡る。


取り調べ中だった蓮の元へ訪れた顔見知りのギルド職員さんがギルドマスターへと耳打ちしている。

目を見開いたりこちらをチラ見したりと忙しない反応の後、コホンと一つ咳払いをして口を開く。



「今朝方持ち込まれたゴアゲイルを狩ったのが君達だというのは本当か?」


「あ、はい。そうです。」



蓮の言葉を聞いた後猛の方へも視線を流してくる。

成程、本当かどうかの確認だろう。



「間違い無いですよ。蓮と俺、後は此処には居ないですがあと3人の計5人で倒しました。まだ確認が必要なら『鍛冶の魔王』ソフィア様に聞いてみてください。」


「ソフィア様に!?」


「はい。それなりに知り合いなので。」


「そ、そうか…」



ソフィアの名前を出したのが効いたのだろう、蓮に対するギルドマスターの対応が軟化したように感じる。

普段は虎の威を借る様な真似をしたくない猛も、今回は少し面倒に感じていた為、遠慮なくその威を貸していただいた。



「それで、まだ何か必要な取り調べがあるんですか?俺達はこのギルドに冒険者登録をしに来ただけなんですが…」


「冒険者…登録?」



ギルドマスターの額に汗が流れ落ちる。

冒険者登録をする際必要なのは、簡単な問診票と実技試験の二つとなり、一番最初に冒険者カードに刻まれるランクはこの実技試験で決まる。

問題なのはこの実技試験だ。

ちなみに、猛の冒険カードのランク表記は最低である『D』だが、一応その隣には『仮』の判が押されている。

これは、急いで仮登録をした猛への救済処置であり、正式な実技試験の後ランクの書き換えが許される証となる。

となれば、蓮だけではなく猛も一緒に受けてしまいたい…2人で冒険者ギルドへ来た理由はこんな思惑があったからだ。

まぁ、早々に不名誉な理由でギルドマスターにお目通りが叶った訳だが。


話を戻そう。

ギルドマスターは頭を悩ませる。

実技試験をするには二人の相手が必要だ。

誰が?

冒険者ランクBクラスを後ろ回し蹴り一撃で沈める相手に誰が?

あのゴアゲイルをパーティーでとは言え討伐したメンバーを誰が?


このままでは自分にお鉢が回ってくる…そう考えるだけで嫌な汗が止まらない。

一応仮にも冒険者ランクAの彼ならば相手が出来なくもない…いや、無理か。

先程の蓮の回し蹴りだって、怒っていたとはいえ絶対本気では無かったのだから。


ギルドマスターの視線が激しく泳ぐ。

取調室と言う個室が完全に裏目に出た。


こうなったら…覚悟を決めるしか無い…



「……分かった…実技の試験は…俺……」



そこまで言って不意にノックされる背後の扉。



「…ったく…誰だ…?」



折角覚悟を決めたのに邪魔をされたギルドマスターは、額の汗を袖で拭いながらドアを開くと、そこには…



「「シュナイダーさん!?」」



取り調べ室の中、二人の声が綺麗にハモった。



■□■□



「頼む!シュナイダー!!」


「…まぁ、構わないが…」


「本当か!?」



取調室前の廊下の角を曲がって直ぐの所。

ギルドマスターが目の前で両手を合わせシュナイダーに何か懇願していた。

それは必死にもなろう、ここで彼を逃せば生贄は自分なのだから。

そう、蓮と猛の実技試験の話だ。



「しかし、こういう時に力を見せ付けておかないと色々威厳の話で面倒臭いんじゃないのか?ロイ?」


「いやいや、相手が悪い!俺はまだ死にたくない!」



ロイと親しげに呼ばれたギルドマスターはは凄い形相で辞退する。



「そんな大袈裟な…」


「そんな事は無いぞ!?うちのギルドの『剛腕』を回し蹴り一撃で沈める相手をどうしろと言うんだ。」


「『剛腕』を!?……ほぉ…」



この『剛腕』とは、先程蓮の蹴りで医務室送りにされた熊の獣人の二つ名だ。

どうやらこの界隈では有名な人物だったらしい。

少なくとも力を比べる上で指標になる程度には。

シュナイダーはその話を聞いて少し興味が湧いた。

自分が最後に彼らに会ったのは浩二が魔王になった時だった筈だ。

それから彼等が一体どれだけ成長したのだろう?

あの過酷な地で一体どんな生き方をしてきたのだろう?



「…分かった。2人の実技試験は俺が引き受けよう。」


「本当か!?助かる!ありがとう!!」



あの規格外な魔王と一緒に生活したらどうなるのか。

話を聞くよりも手を合わせた方がきっと理解できる。


どうやらシュナイダーも感覚派のようでいて…脳筋の様である。



□■□■



後ろ足に力が入った素振りすら見せず、瞬く間にシュナイダーの懐に飛び込む蓮。

しかし、まるでそこに飛び込んで来るのが分かっていたかの様に薙ぎ払われる空間。



「あっぶなぁーーっ!!」



空を切った五本の鋭い爪。

間一髪何かを感じた蓮はソレをバク転で躱す。



「ほぉ、今のを躱すか。」


「まだ何とか見えるよ。でも、どっちかと言えば勘かな?」


「ふふっ、獣人じゃあるまいし。」



2人は軽く言葉を交わし再び相見える。

蓮はひたすら飛び込んでは離脱を繰り返し隙を伺うが、何故だろう?攻撃が入る気がしない。


シュナイダーはまるで蓮が何処を攻撃しようとしているのかが事前に分かっているかの様な対応をしてくるのだ。

回し蹴りを放てばクリーンヒットする前に潰され、突きを打てば危うくカウンターを喰らいそうになる。

そんな中、シュナイダーが少しイラつきながら話し掛け…いや、怒鳴りつけて来る。



「蓮!お前は体術だけで俺をどうにか出来るとでも思っていたのか?馬鹿にするなっ!!」



今までとは段違いのスピードで蓮へと迫り、縦横無尽に鋭い爪で逃げ道を塞いで来る。

何故シュナイダーが怒っているのか分からない蓮はただひたすら彼の攻撃を避け続ける。



「お前には魔法があるだろうが!!」



そんな言葉が耳に飛び込む。

そして、驚く程スムーズに炎を纏った右拳がシュナイダーの五本の爪の根元たる掌に吸い込まれ、爆発した。

読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ