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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第七章 大地を行く。

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価値。


「あそこが入口よ。」


ソフィアが指差す先には、切り立った崖に寄り添う様に城壁で囲まれた宿場町が見えた。

鉄製の立派な門構えの城門は今は開け放たれており、商人、旅人、冒険者、下級貴族など、その身分を選ばず全てを受け入れている。


名前こそ宿場町だが、その規模は軽く街の規模を超えている。

下手をすればガストンの街と同レベルの規模だ。

切り立った崖に張り付くように幾重にか重なるルグルドの城壁、その一番手前の城壁と繋がるような形で崖沿いに縦長に伸びた少し歪な形をした街だ。

それは、この『崖沿い』というのに理由がある。


門を抜け暫く進むと左手に大きな鉄製の扉が見える。

その扉は崖の壁面に埋め込まれる様に設置されていた。

ソフィアの案内でその扉の前まで行くと、その重厚な扉がゆっくりと開き猛達を迎え入れてくれた。



「おおおっ!!」


「凄い凄いっ!!」



徐行運転でゆっくりと扉を潜り、中の光景を見た猛と蓮のテンションが爆上がりする。



「此処が大型馬車専用ドックよ!」


「…猛や蓮じゃないけど…コレは凄いわ。」


「うん。」


「機械がいっぱいだね!」



ドックの中をゆっくりと進むエアトラック。


天井まで優に十数mはあり、魔法の明かりだろうか?天井から吊り下げられた球体のライトがドック内を煌々と照らしている。

同じく天井からはいくつもの滑車と鎖がぶら下がり、レールにより縦横無尽に移動可能の様だ。

広さで優に体育館1つ分程の空間が綺麗にくり抜かれており、エアトラックの巨体でも余裕を持って収納出来そうだ。


先導するのはドワーフの技術者だろうか?ハンドサインでエアトラックを誘導し、丁度ドックの中央付近で静かに停車させた。



「皆、ご苦労様。」


「ソフィア様、おかえりなさい。で?コレが例の?」


「えぇ、『傀儡の魔王』の最新作よ。」


「…ほぉ…しかし、こう言ってはなんですが…」



エアトラックから降りたソフィアを迎えた技術者の1人がエアトラックを見て何やら少し不満げに呟く。



「まぁ、見てなさい。猛!もう『隠蔽』を解いても良いわよ!」


「アイマム!!」



猛は妙な返事と共にエアトラックの隠蔽を解くと同時に栞へ目配せすると、彼女は静かに頷き首元の真っ白な鼬を優しく撫でる。

それが合図だったかのように、イナリの隠蔽も同時に解除された。


一瞬空間が歪む。

と次の瞬間、空間が剥がれ落ちるように徐々に仮初の姿は削ぎ落とされてゆき…やがてそこには銀色に鈍く輝くエアトラックが堂々とその姿を現した。



「なっ!」



先程ソフィアと話していた技術者を筆頭に当たり前の様に驚き目を丸くする技術者達。

何故か誇らしげなソフィア。

技術者達は、エアトラックを見れば良いのか、その上にあるゴアゲイルの巨体を見れば良いのか分からず、視線が上下に激しく移動する。



「ふふっ、驚くのも無理はないわ。相当強力な隠蔽魔法が掛かっていたもの。まぁ、コージらしいわよね。」


「ソ、ソ、ソ、ソフィア様っ!!アレは一体っ!?」


「落ち着きなさい。アレは『傀儡の魔王』が作った新しい乗り物よ。実は私も実物を見るのは今日が初めてなの。猛、色々説明お願い出来る?…っとその前に上に乗ったゴアゲイルと荷物を下ろしちゃいましょ?」


「あぁ…やっぱりアレはゴアゲイルなんですね…?」



まだ何もしていないのに既に疲れた顔の技術者達。

この数分で数日分は一気に疲れただろう。



「ほらほら、チャッチャと終わらせるわよ!私は上からゴアゲイルを下ろしちゃうから、大型の台車をお願い。後、後ろに回って石英ガラスの木箱を降ろして頂戴。多分そっちの方が人数が必要よ。」


「わ、分かりました!お前ら、やるぞーっ!」



気を取り直した技術者のリーダーはソフィアの支持に従い人員を振り分けてゆく。



「コンテナ開けるから離れてなーっ!」


「こんてな?」


「あぁ、荷台だよ荷台!荷台の蓋が開くから離れててくれ!」



エアトラックの最後尾、コンテナのドアが縦に開く…つまり、上が開きそのまま手前に倒れて来てドアがタラップになる仕組みだ。

扉の横側のレバーを倒すと、空気圧式のサスペンションで勢いを殺しつつ静かに扉が開いてゆく。



「おお…凄いな…まさか、後ろのスペースは全て荷台なのか?」


「あぁ、この間の石英ガラスが入ってた木箱が360個積んである。」


「360個!?」



驚き又もや目を剥き、ソフィアの言った人数が必要の意味を理解する。

普通の幌馬車や荷馬車なんかでは精々50個程を載せて運ぶのが限界だろう。

もっと追加で積むこと自体は可能だろうが、馬車の動力は文字通り馬であり、馬が引けなくなれば意味が無い。

複数の馬で引く大型馬車も存在するが、その場合馬の餌の事も考えなくてはならなくなり、運ぶ距離が長くなればなるほど時間と金が掛かる。


猛達が走って来た道は間違えても幌馬車7台分の荷物を1週間で運べる距離では無いのだ。



「うっし!やるぞっ!」



猛は拳を掌で受け気合いを入れた。



□■□■



「…ふぃ〜、やっと終わった…」


「だから私がやろうか?って言ったじゃない。」


「いやいやいや、いつもいつも『剛力』持ちだからって姉御を頼ってばかりもいられないっしょ?」


「ふふっ、ありがとう。」



あれから猛は石英ガラスの運搬作業を手伝い…とは言ってもエアトラックのコンテナから木箱を下ろすだけだが、それはそれで間違いなく肉体労働だ。

降ろされた木箱は全てドック内に併設された魔法式エレベーターでルグルドの街まで運ばれ、そこから商業ギルドを経て各買取先へと運ばれて行くのだ。



「あ、そうそう…」


「ん?なんかあったん?」



何かを思い出したようにソフィアが口を開いた。



「お土産のゴアゲイルの査定がさっさ終わったわ。」


「へぇ、どのぐらいになった?」



この時猛は何の予想もせずに簡単に聞き返したが、金額を聞いてひっくり返ることになる。



「ミスリル貨40枚よ。」


読んでいただきありがとうございます。

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