魔王と勇者召喚とスキル。
「さて、何から話そうかしら…」
銀髪の美少女…ソフィアはメイドの入れた紅茶を一口口に含み、早速と言わんばかりに話し始めた。
「そうねぇ~、まずは私達の素性からかしらぁ~♪」
「うん、そうね。それじゃ、まずは私から。」
ソフィアはそう言って佇まいを正すと、真面目な顔付きで口を開いた。
「私はソフィア。ハイドワーフで、ここから東の崑崙山脈の麓にあるルグルドって言う城塞都市に住むドワーフ達を束ねる『鍛冶の魔王』よ。」
「私はぁミラルダ。サキュバスクイーンでぇ、ここから西の魔の森に仲間のサキュバス達と一緒に住んでるわぁ~♪肩書きはぁ『魅了の魔王』よぉ~♪」
「俺はドルギス。カイザーアーマーだ。ここから北にある古都バルへイムを部下共々根城にしている。皆には『鎧の魔王』と呼ばれている。」
「「「…………」」」
「ん?どうした?三人とも。」
口を開けたまま言葉一つ発さない三人。
浩二だけが不思議そうに首を傾げている。
「これが正しい反応ね。」
「食べたりしないから大丈夫よぉ~♪」
「うむ。」
「そんなに驚く事か?」
「コージは色々普通じゃないのよ。」
「失礼な。」
肩書きはともかく、人格としては別に恐怖も畏怖も感じない。
むしろ、勇者達より好感が持てる。
助けてもらった事も含めてだが。
「お兄さんっ!魔王だよ?魔王っ!しかも三人とも!」
「うん、そうだな。そう言ってたな。」
「しかも、三人とも上位種ですっ!」
「上位種?なんだ、凄いのか?」
「多分ですけど…彼等三人だけで人族を滅ぼせます…」
「マジか!?」
それ程の面子が揃って何故俺なんかを助けに来たんだ?
不思議で仕方が無い。
「一番最初に聞こうと思ってたんだが…何で俺を助けてくれたんだ?」
だから、聞いてみた。
すると、ソフィアが最初に口を開いた。
「最初はただの監視…と言うか調査だったの。魔族領内で『人族が勇者召喚を行う』って噂が広がってね。だから、召喚された勇者の中に危険なスキルや力を持った者がいないかどうかを調べる為に使い魔を放って監視してたの。」
「なるほど、でも監視してまで意識する程の勇者なんて居ないんじゃないか?」
「今回は…ね。」
「つまり、昔は強い勇者がいたって事か。」
「そう。単騎で私達三人を簡単に殺せるぐらいのがゴロゴロね。」
「それはまた…危ないな…色々と。」
あの勇者達の性格でそんな馬鹿みたいな力を持ってしまったら…
世界が色々ヤバイ気がする。
「でも、ここ数百年そういう輩は現れてないのよ。一応召喚が行われたら監視はしてるけどね。」
「理由は分からないのか?」
「全く。昔は一人でスキルを山ほど持った勇者が沢山いたのに何故かここ数百年は目立ったスキル持ちがいないのよ。」
「スキルを沢山…ねぇ…」
何か引っ掛かる。
複数のスキルを持つ理由…
複数…
まさかっ!
コージは自分のステータスプレートを取り出し、あるスキルの詳細を見た。
『見様見真似』
複数人とのスキルを用いた戦闘を短期間に繰り返す事で得られるレアスキル。
集中してスキルを見る、もしくは身に受けることで『見習い』として習得することが出来る。
習得した見習いスキルは本来の威力の10%で行使でき、LV10まで上げると見習いが消え、自身のスキルとしてLV1になり覚え直す。
一定の期間使わなかった見習いスキルは消失する。
多分これだ…
それに、勇者召喚の人数が40人ってのも多分…
スキル持ち同士を闘わせて『見様見真似』を習得させ、勇者召喚で手に入る個人のレアスキルを複数覚えさせる為…
なら何故勇者達は『見様見真似』を習得しなくなったのか。
おそらくパワーレベリングのせいだ。
実際、短期間にステータスを上げられる。
しかし、伸び代が極端に少なくなる。
『見様見真似』で覚えたスキルは最初は全て『見習い』。
だが、時間さえかければ、それらは全て自分の血肉になる。
「コージ…?どうしたの?ステータスプレートなんか見て。」
自分のステータスプレートを見ながら何やら考え込んでいる浩二を見てソフィアが尋ねる。
浩二は自分のステータスプレートにある『見様見真似』のスキル説明を見せながら自分の推理を話して聞かせる。
「なるほどね、じゃあ今回の勇者達は心配無いわね。ヤル気ゼロだもの。」
「そうなのか?」
「えぇ。監視してても、本当に魔王を倒す気のある勇者なんて全くいなかったわ。単純な強さならコージの方がずーーーっとマシだしね。」
「そ、そうか。」
「そうよっ!皆で寄って集ってコージを虐めてっ!だからこそ『見様見真似』がコージを選んだのかも知れないけどさ!」
「ソフィア、まぁ落ち着いてくれ。それで話は戻るが、どうして俺を助けてくれたんだ?」
脱線しまくった話を戻す。
「そんなの、ドワーフだからに決まってるじゃない。」
「え?」
「他種族の国で同族が困ってるのを知ってて知らない振りなんて私には出来ないわ。」
「ソフィアは身内に甘いもんねぇ~♪」
「うむ。それは悪い事ではないがな。」
手伝った二人も揃って頷く。
種族は違っても、根っ子の部分が一緒なんだなきっと。
「俺達はこれからどうしたらいい?」
「んー、どうしたい?…そうね…なら、何がしたい?」
「何と突然言われても…なぁ…」
浩二が腕を組んで困っていると隣に居た舞が恐る恐る口を開いた。
「あの…私は、回復魔法をもっともっと上手く使えるようになりたいです!」
「回復魔法かぁ…なら、兵士の訓練所でぶっ倒れるまで回復魔法使いまくれば良いわ!魔法は使えば使うだけ上手く強くなるから。」
「訓練所…ですか…」
舞は困る。
あまり人付き合いが得意ではないのに、知らない人の中に取り残されるのは流石にキツい。
そう思っていると、隣に居た蓮がすかさず声を上げる。
「訓練所っ!私も一緒に行っても良い?もっと火魔法強くなりたい!」
「良いわよ。訓練所の方には明日までに伝えておくわ。」
「やったーっ!舞っ!一緒に頑張ろうね!」
「蓮ちゃん…ありがとう。私もがんばる!」
「お兄さんも、たまには私と戦ってね!お兄さんに勝つのが私の目標なんだから!」
「おう!何時でも言ってくれ。」
こうして取り敢えず舞と蓮の予定は決まった。
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