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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第七章 大地を行く。

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道中。


「…へへっ。」



アップダウンの少ないなだらかな草原地帯を絶賛走行中のエアトラック、目指すは1500km程先の『城塞都市ルグルド』だ。

本日の運転席は栞で、舞が助手席でそれを羨ましそうに見ている。

そしてその後、横長のソファーに腰掛け1枚のカードを眺め二ヘラと笑う猛。



「…何よ、気持ち悪いわね。」


「うっせー!」


「…良いなぁ…狡いなぁ。」



隣に座る麗子の辛辣な突っ込みに反応した猛の手元を見た蓮が羨ましそうにカードを見る。

つい数時間前、ガストンの街を出発した一行。

その際、猛にギルドマスターであるガイウスがとりあえず1人だけでも登録しておけば街の出入りが楽になると言うので、代表して猛が登録したのだ。


代表選抜はジャンケンで行われ、蓮との壮絶な決勝戦の末猛が勝ち取った。

早々に負けた…というか、それ程乗り気でも無かった3人はさっさと負けて2人の試合の観客に回るのが恒例だったりする。

余談だが、この2人のジャンケンの強さは異常であり、猛と蓮がジャンケンをするとあいこ確率が9割を超える。

つまり、残り1割を引き当てた方が勝ちなのだ。

因みにこの2人でもナオにはジャンケンで1度も勝てていない。

恐るべし『激運』


決勝戦で数十回のあいこの末準優勝に甘んじた蓮は本当に羨ましそうにカードを見る。



「ルグルドにも冒険者ギルドがあるんだから、蓮もそっちで登録すれば良いじゃない。」


「するよ!するけど…なんか悔しい!」


「…気持ちは分かるわ、アレは見ててムカつくもの。」


「ねー!!」


「うっさいわ!お前ら!」



それでもギルドカードを眺めるのを止めない猛。

時折ニヤニヤするのが確かに気持ち悪い。


そんな下らない遣り取りも挟みつつ、窓から差し込む光がオレンジ色に変わり始める。



「俺、前から思ってた事があるんだけどよ…」



外の焼ける様な夕焼けを見ながら猛がボソリと口にする。



「…何よ?」


「この世界に来てから、この時間帯って必ず夕焼けになってねーか?」


「……確かに…何でだろ?」



猛の言葉に窓に齧り付いていた蓮も、麗子と顔を見合わせ夕焼けに目をやる。



「確か…空気が汚いと夕焼けが赤く見える…って聞いた事がある…」


「…え?…この世界の空気ってあっちより綺麗じゃないの?」


「いやいや、違うよ!汚いって言うのは、塵なんかが沢山舞ってるって意味だよ!でも雨が降れば夕焼けの色は薄くなるんだって。」


「…へぇ。」


「…でも、何で赤いんだろうね。」



舞が夕焼けに対する薀蓄を披露したのを見て栞が純粋な疑問をぶつけた。



「あ!それ前に聞いたことあるぞ!確か青より赤の光の方が遠くまで届くから…だっけ?」


「…遠く?…太陽の位置変わって無いよね…?」


「お?…確かに…」



2人で首を傾げる。



「はぁ…通る空気の層の厚さが変わるのよ。」


「厚さ?」


「そう。地球は丸いでしょ?その丸い地球に沿って空気の層があるけど、真上からと横からじゃ通る層の厚みが違うでしょ?」


「あっ!戦車が射線を斜めに取って装甲の厚みを稼ぐのと一緒か!!」



隣で大人しく聞いていた蓮が変な方向で理解を示す。



「おお!成程な!!」



続いて蓮のその言葉で理解する猛。



「アンタら…」


「…戦車?…装甲?」


「あぁ、栞はこっちに来ようね。あっちに混ざっちゃダメだよー。」



呆れる麗子と隣で首を傾げる栞を救出する舞。



「要は、塵の中に光を通して先に青い光が届かなくなるから残った赤だけが目に届くんだよ。」


「光は色んな物で乱反射しちゃうからね。届く距離の短い青は途中で見えなくなっちゃうんだ。」


「へぇー!」


「そっか、雨が降ると水蒸気が増えて更に乱反射しちゃうから夕焼けが薄くなるんだ…」



何故か5人で夕焼けを使った科学の授業が行わる中、いつの間にか夕焼けは終わりを告げ辺りは真っ暗になっていた。

街灯など人工的な光が殆ど無い為、世界は本当に闇夜に包まれる。

しかし、空に浮かぶのはいつも満月な月。

月明かりのみが暗い夜を淡く照らしてくれる。


そんな草原のど真ん中、自然光とは明らかに違う眩いばかりの光の中を足早に走り回る5つの影。



「さっさと始めないからもう真っ暗じゃない!何が夕焼けよ!」


「テメ…阿呆か!テメーも食いついてたろうが!」


「そこっ!口動かさないで手を動かす!!」


「「はい!」」



口喧嘩を始めた麗子と猛を指差しビシッと注意する舞。

その手にはお玉が握られ、魔導コンロの上でシチューを掻き混ぜている。


本当ならば明るい内に済ませるべき家事…何時もは出発前に済ませる事を後回しにした結果、夕食前にそれらを片付けることになってしまった。

とは言っても、少量の洗濯物と洗い物位なものだが…

幾ら何でも装備されているエアトラックとは言え、大きな洗い物や洗濯は外にある蛇口から出る水を使って行っている。

まぁ、蛇口を捻れば水が出る段階で贅沢過ぎるのだが…

魔法使いが自分の洗濯物や飲み水をチャチャっと済ませる程度ならば出来るだろうが、生活用水全てをカバーする等とは正気の沙汰では無い。

そんな事をすれば、魔法使いが戦闘中に魔法が使えないなんて馬鹿な話になりかねないからだ。

全ては『魔素高速収集』と浩二の高純度魔核の成せる業なのだ。

シャワー室と水洗トイレとか頭がおかしいレベルである。


そんなこんなで夕食が用意されたエアトラックへと駆け込む2人。

内側から鍵を掛けてしまえば、その辺の砦よりも堅牢な城と化すエアトラックへ。

夕食後、雑談の後座席をフルフラットにして女性3人は雑魚寝、猛は運転席を倒して眠る。

今日の見張りは舞だ。



「皆おやすみー。」


「「「おやすみー。」」」「うーぃ。」



舞がそう言ってハシゴを登り丸いハッチを開けエアトラックの天井へ。



「アロー、今夜は宜しくね。」



いつもの様にゴアゲイルの頭の上で見張りをしていたアローへと声を掛けるとコクリと静かに頷く。

その隣へと移動するスパルナ。

そうして葉鳴りと虫の鳴き声しかしない静かな夜が更けていく。


時折アローが仕留めて来た獲物を見せびらかす以外は。

読んでいただきありがとうこざいます。

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