いざ魔族領へ。
ソフィア到着後から半時程して2人の魔族が合流した。
「只今到着ぅ~っ!」
「遅くなった、済まない。」
凄く軽い人と凄く礼儀正しい人だ。
浩二は早速挨拶しようとした…のだが
「うわぁーーっ!何、この人っ!恰好いーっ!」
蓮が礼儀正しい鎧の人に激しく食いついた。
「あー、ソフィアよ。彼女は…いや、彼女達はどうして此処に?」
《えーと…話せば長くなるんだけど…》
「分かった。しくじったのだな?」
《…違っ!…わないけど、仕方なかったのよっ!》
「…まぁ、良い。この際一人や二人増えた所で変わりはあるまい。」
この鎧の人…慣れてるな。
心中お察しします。
「え~とぉ、そこの彼がソフィアのイイ人ぉ?」
《なっ!ち、ち、違うわよっ!…仲間…そう、仲間よっ!》
「そうなのぉ?ならぁ~、食べちゃってもいいのぉ~?」
《「駄目よっ(です!)!」》
ソフィアと舞が綺麗にハモる。
ソフィアはともかく、舞も何やら危ない雰囲気を感じたのだろう。
しかし、全く緊張感が無いんだが…
これから脱獄しようかという時に。
とりあえず挨拶はしておこう。
「すみません。お二人は初対面でしたね。俺は岩谷浩二、ドワーフです。そこの思い切り無礼な彼女が蓮、ソフィアとハモったのが舞、そこでどうしていいか分からず涙目になっているのが栞で、俺以外は人族です。今日はよろしくお願いします。」
「ひどいよお兄さんっ!初めまして!刻阪蓮です!」
「あう…すみません…栞は、小鳥遊栞ですっ!」
「…恥ずかしい…あ、私は新堂舞と言います。よろしくお願いします。」
浩二の軽く悪意のある自己紹介に合わせてそれぞれが挨拶をする。
「私はミラルダよぉ~♪見ての通りぃ、サキュバスやってまぁ~す♪よろしくねぇ♪」
「俺はドルギス。リビングアーマーだ。」
《そして私は、ソフィア。訳あって今は彼女の身体を借りてるけど、種族はハイドワーフよ。》
ミラルダは魅惑の肢体を浩二に見せ付けるように、ドルギスはあくまで冷静に、そして最後にソフィアが全員に念話で自己紹介をした。
「ソフィア?ハイドワーフだったのか?魔王としか聞いていなかったが…」
《アレ?言わなかったかしら?》
「「「魔王っ!?」」」
舞、蓮、栞の三人の声がハモる。
きっとこれが普通の反応なんだろうな。
心なしかソフィアが「凄いでしょ?」とでも言わんばかりに偉そうに見える。
「全く…こんな場所で大っぴらに言うものでも無いだろうに。」
《だって…威厳を見せたかったのよっ!》
「そんなだから威厳が無いと言われるんだ。」
《うぅ…だって…》
鎧の人に叱られるソフィア。
この人魔王なのに、なんで叱られてんの?
「まぁ、良い。結局知った人間は皆魔族領へ行くのだからな。」
《結果オーライねっ!》
「ソフィア…」
心中お察しします。
「ねぇ…お兄さん…魔王といつ知り合ったの?」
「そうですよぉ…食べられちゃうかもしれないじゃないですかっ!」
「魔王…知らずに私ったら…さっき…」
おーおー怯えてる怯えてる。
基本無害なんだけどなぁ。
「ソフィアとは昨日知り合った。俺が処刑されるって知らせに来てくれたんだ。」
「「「処刑!?」」」
「何か二日後に処刑が決まってるらしい。」
色々と言葉も出ないらしい。
完全に固まった三人。
「えーとぉ、そろそろお暇しない~?積もる話は城でしたらどうかしらぁ?」
「そうだな、頼むミラルダ。」
「頼まれたわぁ~♪」
興味津々に会話を聞いていたミラルダが、話が長くなりそうなのを察し、先に脱出する事を提案する。
鎧の人…ドルギスも同意のようで、早速移動を開始するらしい。
ミラルダは両手を広げ何やら小声で呟くと、彼女の目の前の空間が捻れたように歪む。
途端に捻れの中心部から黒い穴が広がる。
「開いたわよぉ~♪さぁ、チャッチャと通っちゃってねぇ~。」
そう言うと自らが最初に穴へと飛び込む。
続いてドルギスが後を追うように抜けていく…が、何故か戻って来る。
「済まない。忘れていた。」
そう言って鉄格子を掴み、グニャりと飴細工の様に曲げてしまう。
「あ、ありがとうございます。」
「うむ。急ぐぞ。」
「はい!」
ドルギスは浩二が牢から出るのを見届け再び穴へと消えていった。
「さぁ、行こうか。」
「うん!魔族領!楽しみー!」
「お兄ちゃん…手…繋いでも良い?」
「ナオちゃん…じゃなかった、ソフィアさん。」
《えぇ、行きましょう。》
ソフィアは舞の肩に飛び乗る。
まずは蓮が穴へと飛び込む。
全くこの子は怖いもの知らずというかなんと言うか。
そして、肩にソフィアを乗せた舞が。
最後に栞と手を繋いだ浩二が通り抜ける。
抜けた途端に景色は石造りの大きめの部屋に変わっていた。
後ろを振り向くと、穴が徐々に閉じていく。
浩二は、色々な事があったあの地下牢を黙って穴が閉じるまで見つめていた。
「お兄ちゃん…?どうしたの?」
「何でもないよ栞ちゃん。さぁ、みんなの所へ行こう。」
「うん!」
浩二は先程まで穴のあった場所を一瞥すると、栞の手を引き皆と合流する為歩き出した。
□■□■
20畳程ある石造りの部屋の中央には、豪華なソファーと明らかに高そうなテーブルがあり、転移してきた面々が既にソファーに腰掛け雑談を始めていた。
不意に足元に柔らかな感触を感じる。
ナオが足に擦り寄って来たのだ。
「ソフィアか?」
「ナァーーォ」
「違うわよ」と言わんばかりにこちらを見て一鳴きすると、軽々と跳躍し浩二の肩…彼女の指定席へ飛び乗る。
「ナオ…何か、久しぶりだな。」
「ナァーォ」
愛猫の毛並みを首に感じながら顎を優しく撫でると、彼女は嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らす。
そうして癒しの一時を堪能していると
唐突に部屋の扉がバンッ!と派手な音を立てて開け放たれる。
「来たわよっ!」
そんな事を口走りながら小柄で銀髪の美少女が乱入して来た。
読んでいただきありがとうございます。




