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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第七章 大地を行く。

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更に上。


「なぁ、アレあとどれ位でここに着く?」



冷や汗をかきながら望遠鏡を覗く猿の獣人は、その丸い窓から見える光景が未だに信じられない様だ。



「…うーん…そうね、大体20分って所かしら?」


「直ぐに準備を始めよう!俺はあの辺で力を貯めておく。お前らも散開して準備だ!」



リーダーと思われるオークが櫓から100mほど先の草原を指差し浮き足立っていた仲間に指示を飛ばす。



「俺も一緒に行こう。」



タワーシールドを背から下ろしガツンと地面に打ち鳴らしたミノタウロスがリーダーに続く。

先鋒と言うには余り素早くなさそうな二人が進んで前へ出たのには理由があり、このチームで多数の敵と戦う時の必勝法なのだ。

そうこうしている内に猿の獣人と猫の獣人が彼方此方に何やら埋めたり模様を描いたりしながら、着々と準備は進んで行った。



「…出来れば、ホイールドレイクがダブルマンティスに追い付いて数を減らしてくれて、尚且つワイバーンの餌になってくれたら最高なんだけどなぁ…」



ボソリと猫の獣人が呟く。



「あぁ、それは無理そうだわ…」



直後に否定したのは猿の獣人。

望遠鏡を縮めて腰のポーチに放り込むと、ヤレヤレと言うように両掌を上に向け首を振る。



「…状況は?」


「…あー、ワイバーンが先にこっちの村を見付けちまった。一番乗りはワイバーン、二番手にダブルマンティス、んで殿がホイールドレイクだ。」


「うわ…最悪。私達はワイバーンの相手しながらダブルマンティスの殲滅までしなきゃならないの?」



一番嫌なパターンで乗り込んで来た魔物の群。

しかし、泣き言ばかりも言ってられない。



「俺がマンティス共に一当てするから、その間ワイバーンの足止めを頼む。その後はひたすら総力戦だ。片っ端から殺るぞ!」


「「「おう!!」」」



気合いを入れるメンバー。

視線の先には黒い霧のように群がるダブルマンティスとそれを追うホイールドレイクが転がる際の土煙、そして先頭にはワイバーンの少し大きめの個体がターゲットを完全にこちらへ固定した様だ。


あっという間に直ぐそこまで迫るワイバーン。

オークの獣人は腕に力を込め目の前を自慢の武器にて凪払おうとした瞬間、それは起きた。


何かが高速でメンバーの目の前を通り過ぎる。

速過ぎてそれが何なのか分からなかった…が、辛うじて鳥類だという事だけは分かった。

そしてそれが足で鷲掴みにしていた物をまるで爆弾投下のように地面へと落とすと、その鳥は身が軽くなったと言わんばかりに雄々しい翼を広げ身を翻す。



「…嘘…」



ワイバーンなど其方退け、棒立ちのまま唖然とする猫の獣人。



「何ボーッとしてんだよっ!!」



肩を掴み激しく揺すられ我に返った彼女は半分パニックになった様に叫び出す。



「逃げるわよっ!今すぐ!!間に合わないかも知れないけど…っ!」


「落ち着け!どうした?」


「アンタ!アレを見て何で落ち着いてられんのよっ!」



今もワイバーンを睨みつけホバリングを続けているその鳥を震える指で指差す。

それを見たリーダーのオークが尻餅をつき口をパクパクし始めた。

額からはダラダラと嫌な汗をかき、擦れる声でやっとその鳥の名を口にした。



「…エンペラー…イーグル…?」



口にしたその名前に猿の獣人もミノタウロスも慌てて走り寄ってくる。



「おい、おい…!ワイバーンなんて相手にしてる場合じゃねーぞ! 」


「しかし、逃げ切れるのか?」



『エンペラーイーグル』

狙われたら最後、視覚外からの音速を超える一撃により、気づく間もなく生命を刈り取られる。

魔物の中では比較的小柄な部類に入るエンペラーイーグルだが、その圧倒的なスピードで自らを弾丸とし、何度と無く相手を貫く。

下手に大きな身体を持てば、見る見るうちに身体が風穴だらけになる。それはもう悪夢でしかないだろう。

今も昔も鳥類系最上位種はエンペラーイーグルとロック鳥だけである。



「ひっ!?」



その時、猫の獣人がエンペラーイーグルと目が合った。

彼女は喉から漏れたような声を出し腰を抜かす。

終わった…と頭に浮かんだが、その時は訪れる事は無くプイッとワイバーンに向き直ると、瞬時に姿を消した。

そして気付けばワイバーンの頭は爆散していた。


一瞬頭が無いことにも気付かずバサバサと数回羽ばたいたワイバーンは、錐揉みしながら地面へ激突した。


たった一撃。

頭を吹き飛ばし満足したエンペラーイーグルは、櫓の上に留まり眼下を見下ろす。

一緒に来た仲間の活躍を高みの見物する為に。


突然落ちてきた頭の無いワイバーンの死骸を前に唖然とする一同。

しかし、そんな暇など与えて貰えなかった。

突如感じる熱気。

左手側の奥、そこには直径5、6mの巨大な炎の車輪が陣取り…そのまま一気に回転を始める。

前には進まず、その場でホイールスピンしながら大地を黒く焦がし…

1度左右にブレた後、猛烈なスピードで大地を搔き今正に迫らんとしていたダブルマンティスを根刮ぎ消し炭に変え、そのまま突き抜けた…かと思いきやその場で綺麗な1輪ドリフトを決め再びダブルマンティスの群れへとっ突っ込んで行った。



「…ねぇ…?今日は何なのよ…」



ガックリと方を落とし、最早戦う意味すら無いように思えた。

今日は異常だ。


「あれは…ホイールドレイクじゃないよな…?」


「えぇ、少なくとも私の知るホイールドレイクは炎を纏って突進したりしないわ。」


「まさか…あれが噂に聞く異常種なのか?!」



コクリと頷く。



『ファイアードレイク』

餌場から餌場への大移動の際、その転がる力で何もかも薙ぎ倒してゆくため名前がついた『ホイールドレイク』のそ異常種。

彼は炎を纏った。

その業火の車輪は全てを焼き、全てを薙ぎ払った。

無数に居る仲間と違い1匹だけ。

直ぐに実力が分かり群れのリーダーとなり旅を続けた彼は最後にはとある人物に倒される。

過去にも現在にも、炎を纏ったホイールドレイクが確認されたのはこの1匹だけだった。


読んでいただきありがとうこざいます。

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