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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第七章 大地を行く。

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アロー。


「っっ!あの馬鹿っ!!」



それはイナリによるゴアゲイルへの催眠が完了して直ぐに起きた。

ショックなのは理解できる。

ずっと一緒にいた仲間なのだから。

それ以前に、クラスメイトが目の前で3人同時に死ねばパニックになって当たり前の話だ。


棒立ちで呆然と佇む猛に対して麗子がキレる。

仕方が無いとは分かっているが、この場所は戦場でありいつ誰がどうなっても不思議では無いのだ。

優しいと言えば聞こえは良いが、言ってしまえば覚悟が足りないだけの話であり、悲しむならば後から幾らでも出来るのだから。


そんな事を考えつつゴアゲイルの様子を伺えば、案の定最悪の事態が進行中だった。



「あ”~~っ!!どうする、どうする!?」



頭を抱えつつ猛へ自分達の無事を知らせる手段を考える暇すら無く、恐るべきバネで巨大な弾丸と化したゴアゲイルは、3人を屠った時と同じ様に無防備な猛へと迫る。

そんな中、麗子の視界の隅にアローの姿が写る。

何かを待つように真っ直ぐに麗子を見つめて。

次の瞬間には叫んでいた。



「アロー!!お願いっ!!」



麗子が全てを言い終える前に動き出していたアローは、彼女の胸元で光る『エアコン』目掛けまるで1本の矢の如く空気を切り裂いた。


そして止まる世界。


いつの間にか麗子の顔は青いバイザーで覆われており、胸元に飛び込んで来たアローの姿も無い。



「…え?」



何が起きたか分からない麗子。

そんな彼女を畳み掛けるように突然目の前に表示される数字。

バイザーの内側に表示されたその数字はコロンで区切られ、その右側の数字が高速で減ってゆく。



「え?何?これって…タイムリミット…?」



何とか理解しようとするも無情に時間だけが過ぎてゆく。

30だった左側の数字が今はもう20を切っている。



「あ〜~っ!もう知らないっ!考えるの止めたっ!!」



気持ちを切り替えた麗子は余計な事は全て其方退けて、仲間の救出のみに全力を出す事にする。

まずは手始めに、猛を突き飛ばして今にもゴアゲイルの大顎の餌食になりそうになっている蓮を助けようと思い脚に力を入れた瞬間、20m以上先に居た筈の蓮が目の前にいた。



「嘘ぉっ!?速っ!?」



驚きながらも右腕で蓮を抱えた麗子は、そのまま上空へと離脱する。

頭で考えるだけで驚く程スムーズに、何の抵抗も無く空中を移動出来る事に軽く感動していると、視界の邪魔だと考えた途端視界の右端に移動したカウントダウンが遂に0になる。

途端に動き出す世界と重くなる身体。



「はぇ?あ?え?」



そして奇妙な声を出して蓮が動き出した。



「蓮、とりあえず皆の所に行こう。」


「え…あー、うん。」



何が何だかわからないが、とりあえず返事をした感じだ。

まぁ、蓮が猛を突き飛ばしてからこの場所へ舞い上がるまでほぼ一瞬の出来事だったのだから仕方が無い。


麗子は虚空を蹴り音も無く滑空すると本来のエアトラックの荷台へと着地した。



「…このスーツ…空中を蹴れるのね。…本当、もっとマシなデザインなら素直に喜べたのにっ!」



未だ目を白黒させている蓮の隣で麗子は某科学忍者隊の格好でキレるのだった。



□■□■



これは不味いかもしれん。


パニクる麗子を見ながらアローは思った。

この中で今から動いて間に合うのは自分だけだろうと。

しかしながら、あの体格の人間を1人抱えて飛ぶのは些か骨が折れる。

もしかしたら、離脱が間に合わない可能性すらある。


他に手が無い訳では無い…が、少々冒険が過ぎる。

間違っても主には試したくは無い方法だ。


我々と違い人間は肉体が脆弱過ぎて恐らくあの場に辿り着く前に急加速の負荷に耐えられないだろう…


その時、麗子の胸元で光る『エアコン』がアローの目に入る。


あの姿の主ならば…あるいは。

某科学忍者隊姿の麗子思い出し不思議と胸が熱くなるアロー。


自分を創り出したあ奴の作り上げたあのスーツの力を借りれば恐らく短時間であれば我々と同じ世界へ行けるだろう。

そして本来の皇帝鷲ではなく、マシナリーとして蘇った皇帝鷲である自分だからこそ、主をあの世界へと連れて行けるのだ。

あのスーツと一体化する事によって。


ならば話は早い。

早く私を呼ぶのだ主よ!

共に行こう!

風を超え、距離を超え、時間さえ超えた世界へ!



□■□■



何度目だろう?


轟音を伴った正面衝突が起きて、小さい方が地面を数回バウンドしながら吹っ飛ぶ。

しかし、身体を引き釣りつつもニヤリと笑いながら再び立ち上がり右腕を回し力を込める。



「サンキュー、マジロ。さっきより随分マシになったよ。」



持ち上げた右腕をポンと叩き礼を言うと、腕の真ん中辺りにある水晶球のようなものがチカリと点滅した。


最初は腕が根元から無くなるかと思う程の激痛を感じたが、回数を重ねる毎にマジロによる改良が加わり、今回は吹っ飛びはしたが痛みという痛みは感じずに済んでいた。

初撃は腕の『紅蓮の篭手』を覆うのみだったものが、今では右肩周りから脇腹に掛けてゴツい鎧に覆われている。

もう、初見さんなら右腕が歩いていると錯覚してもおかしくないレベルだ。



「グラァアアァッッ!!!」



ゴアゲイルの怒りに満ちた雄叫びが聞こえる。

身体のあちこちが黒く焦げ付き、左眼に関しては既に視力は無いだろう。

散々吹っ飛ばされながらもただひたすらに殴り続けた2人の成果だ。


不思議な感覚だった。

ゴアゲイルを殴る度に、奴に吹っ飛ばされる度に冷静になってゆく自分がいた。

本当はもっと泣き叫んで怒り狂う様な場面な筈なのに。



「…はは、俺って案外薄情なのかも……なぁっ!!!」



気のせいか勢いの衰えて来たゴアゲイルの飛び付きを瞬動も使わず躱した猛はもう何回目になるだろうか…下から突き上げる様に凶悪な形に生まれ変わった拳をその腹に捩じ込む。

そして当たり前の様な大爆発。

ゴアゲイルは腹から煙を吹きつつ横向きにゴロゴロと転がり引っ繰り返るも、身体のバネで素早く起き上がる勢いのまま丸太のような尻尾を、アッパー気味の攻撃だった為吹っ飛ばずに済み未だ側に居る猛へ振り回してくる。



「ハッ!いい加減覚えたぜ?」



その尻尾に合わせる様に綺麗に拳を出した猛は、再び大爆発を起こし丸太のような尻尾を爆風で吹っ飛ばしつつ尻尾とは逆方向へと吹っ飛んでいった。

読んでいただきありがとうこざいます。

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