表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第六章 蘇る悪魔

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

213/405

やり過ぎ。


「コージ。そこに座りなさい。」


「ん?なに?」



最近では珍しくソフィアが日中に屋敷へ訪れたかと思えば、座った目で浩二に言い放つ。



「なに掘り炬燵に座ろうとしてるのよ…正座よ?正座。」


「え…?あー…はい。」



これは叱られる奴だと理解した浩二は、大人しく指示に従う。

こういう時は下手に逆らわないのが基本だ。

それにしても、畳文化の無いこの世界で何故に正座を知っているのだろうか。



「先に聞いておくわね。何か叱られるような事をした記憶は?」


「………えーと…ドワーフ達への対応に問題があったでしょうか…?」



目の前で腕を組み仁王立ちしているソフィアを見上げるようにして答える。



「……どれか分かる?」


「…えーとですね…この件に関しては当方の全力をもって当たらせてもらいました故、何卒恩赦を頂きたく…」


「分からないのね?」


「…はい。」



どうやら許しては貰えないようだ。



「前から常識がないっ思ってたけど、今回のは余りにも酷いわ。コージは今回来たドワーフ達が普段どんな場所で生活してるか分かる?」


「いや、知りません。」


「でしょうね。広ささ自体はあの位だけど、設備が圧倒的に違うわ。ジャグチ?エアコン?フカフカのベッドにお湯のお風呂?…馬鹿なの?どこの貴族よ。」



畳み掛ける様に矢継ぎ早に口にしたソフィアは力無くその場に座り込んだ。

そこへさり気なく冷たいお茶を差し出すベータ。



「あ、ありがとう。」



喉を鳴らして茶を飲み干すソフィア。


お礼とコップを受け取ったベータは、ニッコリと微笑み厨房へと引っ込む。

多分茶菓子を取りに行ったのだろう。



「はぁ…全く。」



一息ついたのだろう、正座する浩二の横を通り掘り炬燵に腰掛ける。



「もう正座は良いわ、こっちに来て座りなさい。」



自分の隣の席をトントンと指で叩くソフィア。

浩二が隣に座ると、座卓に突っ伏したまま首だけ浩二の方に向け口を開く。



「ねぇ、コージ?さっき働きに来た皆に話を聞いたらなんて言ったと思う?」


「んー…分かんないな。」


「「ここに住んだらもう他では暮らせない。」ですって。」


「なんだ、いい事じゃないか。」



思ったよりも凄く喜んでくれているようで安心する浩二。



「そうね。いい事よね。この場所にずーっと住む事が出来るならね。」


「ん?どういう事だ?」


「もし、何らかの理由でこの領地に住めなくなった場合…彼等は一気に前の生活に戻る事になるわ。毎朝の水汲み、身体を搾った布で拭いて、暑ければ窓を開け寒ければ窓を閉め火をたく、火を付けるなら薪割りも必要ね、そして布団なんてとても呼べない厚い布の上で眠るの。」


「………」


「そして何より!塩気の強い肉や魚、硬いパンを食べて過ごすの。まぁ、コレは極端だけどね。大抵は魔法で氷を作って木箱に保存しとくのが普通よ。ルグルドみたいに住民の3割がエルフならそれも出来るけど、普通の村なんかは魔法を使える人の方が珍しいのよ。」



想像していたより遥かに低い生活水準だ。

ソフィアが危惧する事も何となく想像出来る。



「…この領地で生まれた子供達は…他所では暮らせないな。」


「分かってくれた?」


「うん。ある程度大人なら我慢で済むだろうけと…何にも知らない子供にそれは酷だな。…エアコンはやり過ぎか…蛇口は撤去だな、大灯台まで少し遠いから近場に水場でも作るか…」



納得した浩二は、顎に手を当ててブツブツと思案し始める。



「タロス、あんたもちゃんとコージの暴走を止めなきゃ駄目じゃない!」


「すみませんソフィア様。…私が気付いた時には全て出来上がっていたもので…」



たまたま通り掛かったタロスにも飛び火した。

項垂れるタロスを見て浩二は非常に申し訳ない気持ちになってくる。


そして、決めた。


全ての生活設備を見直す事を。



□■□■



「いや、本当にすみません。」



深々と頭を下げる浩二。



「いやいやいや、頭を上げてくださいコージ様っ!少し驚いただけで、見直しした今だって別に不便でも何でも無いんですから!」



目の前に見える浩二の後頭部にワタワタしながら慌てふためくドワーフの代表者。

回りにいる皆もウンウンと頷いている。



「それぐらいにしときなさいコージ。皆困ってるじゃない。」


「あぁ…本当にすみませんでした。自分の無知が恥ずかしいです。」


「いえ!そんな事は!コージ様は我々の事を考えた上で作って下さったんですよね?なら、我々に文句なんてある筈も無い!こちらはお礼を言わなければならない立場ですから。」



そう言って逆に謝られてしまう浩二。

お互いが頭を下げ合う変な光景に笑い出す周りの人達。

どうやら、新たな住民達も浩二の為人を理解したようだ。


結果、

エアコンの撤去。

これは明らかにやり過ぎだと判断。代わりに窓を増やし風通しを良くすることで改善する。この領は基本的に気温が高いので暖炉等は必要無い。


蛇口を撤去し代わりの水瓶を設置。共同で使う水場を新たに設置する。

日常的に水を使う仕事では無いので水瓶に生活用水を貯めて使うようにした。

本来水場は大灯台周りにあるのだが、少し遠い為近場に共同水場を新たに設置し、浅い水場も用意して洗濯などに利用して貰う。


冷蔵庫の撤去。

これは少し揉めた。この領地は基本的に気温が高いので、食材の痛みが早い。

なので、1棟につにつき1つ大きめの共同冷暗所を用意するという事で落ち着いた。


布団と浴場は現状維持。

風呂は魂の洗濯。布団は夢の世界への入口。これは譲れない。

アルファ曰く「特別高価な素材を使っている訳ではなく、現状この世界では使われていない技術を使った編み方をしているだけですので、対価と言われましても私の労力程度なので、幾らでも追加致しますが?」と。

50組の布団一式をその程度・・・・扱いなので思い切って任せる事にし、追加の場合のみ料金を取る事とした。


そして、共同浴場。

ソフィアに「領地は暑いんだから湯じゃなくて良いんじゃないの?」と言われたが、それは違う、断じて違う。

簡単な話、暑い夜に水風呂に入ってから寝るのと、湯に浸かって寝るのとを比べてもらえばハッキリと分かる。

水風呂は身体への負担が半端ではないのだ。

何より、血行改善による疲労回復が望めない。

よって却下。


ソフィアに「それじゃ、ソフィアも明日から温泉禁止で水風呂な。」と言ったら、超真面目な顔で「は?」と言って動かなくなった。

どれだけショックだったんだろう。

読んでいただきありがとうこざいます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ