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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第一章 ドワーフは魔族!?

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ソフィアパニック!


城内、城外問わず静まり返る深夜。

電気などないこの世界の明かりといえば、高価な魔道具の灯りか篝火のみ。


不意に城内にある篝火の一つが歪んだように見えた。

正確には篝火の前の空間が歪んだのだ。

そして物音一つ立てず、ちょうど人が一人通れる程の穴が開く。



「さぁ~、着いたわよぉ~♪」



間延びした声を上げて一人の女性が穴から姿を現す。



「……………」



そしてもう一人、大きな鎧の塊のような物が身を屈め穴から無言で出てきた。



「さて~、目的の彼は何処ぉ~?ドルギスは知ってるんでしょぉ~?」


「あぁ。こっちだ。」



ドルギスと呼ばれた鎧の塊のような人物は、迷いなく薄暗い通路を進んて行く。


だが、いくら深夜とはいえ見回りの兵士はいる。

しかし、彼等は…



「フフッ♪おやすみなさぁ~い♪」



という彼女の言葉に応えるように眠りに落ちる。



「…やはり、お前が来るのが一番の正解のようだ、ミラルダ。」


「でしょぉ~♪なのにソフィアったら、こんなギリギリまで私に黙ってるんだものぉ~。」


「能力的には最善だが、お前は性格が色々不味いからな。」


「あらぁ~、酷い言われようねぇ~。」



彼女の名前はミラルダ。

種族、サキュバスクイーン。

夢魔の女王と言われる彼女にしてみれば、人間を眠らせるなど呼吸するより容易い。


桃色のロングヘアーを靡かせ、そこから覗く尖った耳。

絵に書いたような抜群のプロポーションに加え何処か可愛らしさの残る顔立ちが、過激な服装とのギャップを生み男心を鷲掴みにする。

最早服とは呼べない衣装を纏い、彼女は艶のある唇から舌を出しペロリと舌舐めずりをすると



「でぇ、この兵士さんはぁ~、食べてもいいのぉ~?」



と、一応ドルギスに確認をとる。

とは言っても、既にその手は兵士の顎に添えられていた。



「程々にな。」


「やったぁ♪それじゃぁ~、いただきまぁ~す♪」



食前の挨拶を済ませた彼女が顔を寄せると兵士から紫の靄のような物が立ち上り、ミラルダの口に吸い込まれて行く。



「あらぁ~♪溜まってたのねぇ~♪美味しいわぁ~♪」



ある程度靄を吸い込んだ所で彼女は立ち上がる。

足元には何処か幸せそうな顔をした兵士が変わらず寝息を立てている。

夢魔であるミラルダによって淫夢を見せられていた彼は、サキュバスのスキルである『マナドレイン』によって精神力を吸われていた。


彼女は、「殺しさえしなければ兵士ならドレインしてもいいわ!」とソフィアに言われており、更には帰りの『転送』分の精神力の補給も兼ねているので遠慮なく吸わせてもらっている。


吸われる方はと言えば、死なない上に、サキュバスクイーンによる『極上の淫夢』を見られるのだから、そう悪いことでも無いだろう。


そうしてミラルダの数回の『食事』という名の補給も済んだところで二人は改めて地下牢へ向かうのだった。



□■□■



《こんばんは。》


「…あぁ、こんばんは。なぁ、ソフィア…」


《…大丈夫!言わなくても分かるわ。》


「だが言わせてくれ。何故にこの三人が一緒なんだ?」


《し、仕方なかったのよっ!》



深夜に迎えに来る。

そう言っていたソフィアの言葉を信じ、浩二はその日の深夜に地下牢で一人静かにその時を待っていた。


やがて聞こえてくる足音…足音?

てっきりナオの姿で来ると思っていた浩二は驚く。

そして首を傾げる。

足音が一人分じゃないからだ。

それでも、「多分ここから自分を連れ出せる手段を持った誰かと一緒なんだろう」と考えていた過去の自分を殴ってやりたい。


地下牢に現れたのは



「すみません…岩谷さん…」


「お兄さん、やっほー!」


「お兄ちゃん…ごめんなさい…」



ナオ(ソフィア)を先頭に、その後から付いてきた舞と蓮と栞だった。



□■□■



時は遡り…

ソフィアが精神を飛ばし、ナオの身体を借りようとした時だった。



「ナオちゃん…昨日は何処に行ってたの?」



普段は寝ている筈の舞がナオを抱き上げながら話し掛けていた。



(この子…いつまで起きてるのよ…っ!子供は寝る時間よっ!)



少し不味い状態に焦るソフィア。

それもその筈、ソフィアが使う『精神を飛ばす』という行為は非常に燃費が悪いのだ。

しかも、精神体の状態を長時間は維持出来ず故に、憑代となる肉体が必要になるのだが…



「岩谷さん…元気にしてるかな…?」



何やら同居人の少女と憑代たるナオが会話を始めてしまっていたのだから。

まぁ、少女の一方的な問いかけなのだが。



(どうしよう…このままだと強制的に身体に戻されちゃう!)



そして彼女は決断した。

明らかに間違えた決断を。



(ナオっ!借りるわよ!)



なんと、舞に抱かれたままのナオにそのまま憑依した。

しかも、ナオの身体が数回跳ねる様に痙攣するというオマケ付きだ。



「ど、どうしたの!ナオちゃんっ!!」



まぁ、当然こうなる。


舞はナオの身体を抱き寄せ、必死に問い掛ける。

両手には癒しの光が淡く灯る。



(くっ!しくじったっ!慌ててたせいで憑依が雑になっちゃった!)



素早さを意識するあまり、身体の事を考えない雑な憑依。

軽い拒否反応によりナオの身体は痙攣したのだが、そんな事は知らない舞は自分に出来る最高の癒しを続ける。



(あぁ…コレ…気持ちいいわぁ…じゃなくてっ!何とかしなきゃ、この子マインドアウトしちゃう!)



マインドアウトとは、所謂MP不足による失神状態の事だ。

しかし、逆に考えれば失神してくれた方が助かる筈なのに、ソフィアはパニックのせいか舞の心配を始めた。



(もう、仕方ないわねっ!)



ソフィアは決断した。

更に間違えた決断を。



《落ち着きなさい!この子は大丈夫よ!》



ソフィアは舞に念話で話し掛けるのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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