最上位種二人。
ジト目の女神様に諭され離れる2人。
抱き着く前より微妙に距離が近いのは秘密だ。
「えー…コホン。ナオは最上位種と言う事で、ステータスも根刮ぎ増えてるからちゃんと後から確認する様に。」
「はーい!」
「…で!」
女神様が浩二の方へと視線を送る。
「問題はコージ君なんだが…」
「へ?」
浩二の口から変な声が出る。
まさか問題がナオだけじゃなく自分もだとは…
「今話した条件だと君も『自分よりも高位の存在』に勝ったことになってしまうんだよ。」
「…あ!」
確かに『最上位種』である浩二が『最上位種以上』であるレフトを倒したのだから、進化条件を満たしたことになる。
「流石に困ったよ。…一応あるにはあるんだよ?進化先。でもねぇ…」
何やら話ずらそうにしている女神様。
「…ヤバいんですか?」
「…普通では無いね。あ、だからまだコージ君の方はレベルアップだけで留めてあるんだけど…」
「ならそれで良いです。」
キッパリ、ハッキリ答える浩二。
先を聞いてはいけない…と言うか、嫌な予感がするのだ。
「…良いのかい?」
「……何だか嫌な予感が…」
「はははっ、了解した。取り敢えず保留という事にしておくよ。」
「…保留…ですか?」
「流石に無かった事には出来ないからね。その辺りは諦めてくれ。」
「…はい。」
強くなるのは嬉しいが…正直これ以上の強さは要らない。
「それじゃ、そろそろ帰る時間だよ。」
残った紅茶を一気に飲み干すと女神様が笑顔で2人を送り出す。
「ふふっ、『最上位種』同士お似合いだよ。2人の子供楽しみにしてるからね。」
「はーい!」
「ちょっ!?女神様っ!?」
女神様の爆弾発言とナオの元気な返事を耳に残しながら浩二の意識はゆっくりと闇の中へと沈んでいった。
□■□■
名前 岩谷浩二
年齢 26
種族 エルダードワーフLV35
職業 人形師 氣法師
筋力 81340(+73206)
頑強 80250(+72225)
器用 7515
敏捷 8243
魔力 7332
スキル
『操気術』LV10
『火魔法』LV10
『風魔法』LV10
『水魔法』LV10
『土魔法』LV10
『重力魔法』LV6
『パワースラッシュ』LV10
『パワースラスト』LV10
『瞬動』LV10
『縮地』LV8
『鑑定』LV10
『半減の呪い』LV10
『物理結界』LV10
『エナジードレイン』LV10
『マナドレイン』LV10
『透視』LV7
『千里眼』LV5
『隠蔽』LV5
『至高の創世主』LV--
『剛力』LV--
『転送』LV--
『諸手の極み』LV--
『絶対魔法防御』LV--
『掠奪』LV--
『拳聖』LV--
『見様見真似』LV--
□■□■
「…アイツ倒しただけでレベル35も上がったんだなぁ…」
勇者達がせっせと頑張っていたパワーレベリングですら30まで上げるのに何週間もかかっていた筈だ。
経験値が美味いのか…はたまた浩二とのレベル差の影響だろうか。
まぁ、何はともあれ浩二にとって初のレベルアップだ。
「うん、段々麻痺してきたな。もう、数字がどうとかスキルの数とか比べる相手が居なきゃ訳が分からんよ……しかも…」
スキル欄の下から2番目を見て溜息をつく。
いつの間にか手に入れつつ、いつの間にか見習いすら終わり、自らのスキルとして定着した『拳聖』のスキル。
素手の時に限り攻撃力が10倍になる破格のスキルだ。
今の浩二の『諸手の極み』と掛け合わせてはいけないスキルの筆頭でもある。
今の浩二は…両手の鎖を外せば、10倍になった筋力で放った攻撃が10倍の威力になる…という事になる。
文字通り、見まごう事無き『化け物』となった。
浩二はドワーフ領の方向に頭を向けると…
「ギルさん…本当にすみません。」
布団に顔を沈めるように深々と土下座した。
□■□■
名前 ナオ
年齢 0
種族 マシナリークイーンLV1
職業 氣法師
筋力 7000
頑強 7000
器用 6000
敏捷 6000
魔力 5000
スキル
『操気術』LV10
『火魔法』LV10
『風魔法』LV10
『水魔法』LV10
『土魔法』LV10
『パワースラッシュ』LV10
『パワースラスト』LV10
『瞬動』LV10
『縮地』LV10
『鑑定』LV10
『半減の呪い』LV10
『物理結界』LV10
『エナジードレイン』LV10
『マナドレイン』LV10
『激運』LV--
『絶対物理防御』LV--
『生命の揺り籠』LV--
□■□■
「むっふっふーーっ♪」
枕に顔を埋めながら隠し切れない喜びが口から漏れる。
ずっと夢だった。
神社の軒下で初めて出会ってからずっと。
猫に生まれ変わった事を呪った事さえある。
でも、ひょんな事から異世界に飛ばされて…
そこでは普通の猫じゃなくて。
『幸せの猫』なんて浩二は私にぴったりって言ってくれたけど…そんな事は無かった。
浩二も私自身も幸せになんて出来なかった。
非力な自分が浩二に迷惑をかけている事も分かっていた。
それでも浩二は私の事を守ってくれた。
大切にしてくれた。
そして、気付けばびっくりする程若々しくて、可愛くて、高性能な猫の獣人の身体をくれた。
猫の獣人なのは、私が元人間で猫だったからみたい。
浩二は顔は私が人間だった頃のだって言ってたけど、ごめんなさい浩二…私こんなに可愛くなかったよ。
でも!これで夢に随分と近付いた!
頑張ってもっともっと強くならなきゃ!
ずーっと側で私を守ってくれている浩二の隣に並ぶ為に!
そして、遂にそれは来た!
まるで棚ボタのように!
この身体に生まれ変わったばかりの頃、女神様に聞いたことがある。
「この身体で浩二の子供は産めますか?」と。
言われたよキッパリと「無理だね。」って。
でも女神様はこうも言った。
「今の君の種族の最上位種ならばあるいは…可能性があるかもね。…その『激運』で引き当ててごらん。」って。
だから私は誓ったんだ。
チャンスが来たら絶対に物にしようって。
必ず最上位種になってやるって。
そして、来た。
まるで全てがガッチリと噛み合うような相手が。
そして…今私のスキル欄には『生命の揺り籠』のスキルがある。
人間だった頃からの夢だった。
いつか好きな人の子供が欲しいって。
そんな人現れる前に死んじゃったけど。
こう見えて私は精神的には浩二よりお姉さんなんだ!
さっきは嬉し過ぎて痛い事この上ない感じになっちゃったけど。
何よ…「子供作ろう!」って…馬鹿じゃないの恥ずかしい。
でも、やっぱり浩二は優しかったなぁ…
ナオは再び枕にグリグリと顔を埋める。
そして、
「……大好き、浩二。」
そう呟いた。
読んでいただきありがとうこざいます。




