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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第六章 蘇る悪魔

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『絶対物理防御』式カウンター。


これだけのスピードで吹っ飛ばされてしまえばナオに対して物理攻撃反射も機能せず、八つ当たりのように激突した建物を派手に破壊して姿を現す皇帝スライム。

直ぐにでもナオに向かい飛び掛ると思いきや、何かを警戒しているのか唯でさえ遅い歩みを更に遅くしてゆっくりとナオに向かい歩を進める。



(…見る…見る…)



浩二に言われた事を反芻するナオ。

浩二が見えると言ったのだから見えるのだ。

全く信じて疑わないナオは、瞳を軽く閉じて言われるまま『操気術』を使い始める。


鼻から空気を吸い込み…口からゆっくりと吐き出す。

下腹に意識を集中して…呼吸と同時に身体に取り入れられた何かを渦を巻くように回転させる。


ナオには見えていた。

瞳を閉じていてもはっきりと。

細い光の糸のようなものが束になり下腹のなかで渦を巻いているのが見える。

綺麗な青白い光が。


試す様に全身に光を巡らせてみれば、まるで当たり前の様に思うがままに身体中を移動する。

濃くしたり、薄くしたり、厚くしたり、形を変えたり…様々な事を只黙って黙々と試す。


そして、



「あー…これが『操気術』の肉体強化なんだな、きっと。」



何かを理解しその場から掻き消えるように移動したナオは、ゆっくりとこちらに近づいて来ていたスライムを又もや景気良く蹴り飛ばす。

何となく攻撃を予測していた皇帝スライムは触手を地面へとアンカーの様に突き刺していた…のだが、『操気術』によるブーストが掛かっている今のナオに先程までの予想では不足しており、再び雪のオブジェへと一直線に帰って行った。



「なる程なぁ…『気』は見える様になった。次は…『魔素』かな?」



再び瞳を閉じて念じる様に頭に思い描く。

『魔素』を見るのだ。

『火』は赤、『水』は青、『風』は緑、『土』は茶。

閉じた両目に『気』を送り込む。

瞳が熱くなるのを感じる…そして。



「うわぁ…これは凄いわ…」



瞳を開いて見えた景色の最初の感想がこれだ。


ターコイズブルーもしくはターコイズグリーン。

世界のほぼ全てが青と緑の合成色で出来ていた。



「…流石はベーア地方。見事に風と水の魔素しか無いや…あ、流石は浩二、あの辺は茶だね。」



浩二の立つ石壁を見て少し安心するナオ。

霧と言えばいいか…靄と言えばいいか…

ナオの視界は辺りの景色が見えないほど風と水の魔素で満たされていたのだ。


すると、こめかみの辺りに人差し指を置いて呟く。



「もうちょい魔素の感度下げようか…あー…うん、そんな感じ!」



どうやら視界に映る魔素の光量を下げた様だ…器用な事をする。



「それじゃ…次は…」



そして…ナオは20m程離れた瓦礫の下敷きになっている標的を視界に入れた。


二度に渡りまるでボールの様に無雑作に蹴られ、憤慨しているのだろう…瓦礫を吹き飛ばすように現れたスライムは、自己最高速度でナオへと襲い掛かる。



「おお…っ!」



ナオは驚きの声を上げて霞のようにその場から姿を消す。



「ヤル気満々じゃんっ!!」



ニヤリと獰猛な笑みを浮かべ、挨拶替わりに唯の拳を力任せに叩き込む。

今回はちゃんと反撃を受けることが前提なので、特に何も考えずに殴る。

水がパンパンに入った水風船の様な皇帝スライムの身体が細かく波打ち、直後に極太触手の反撃が来る。


待ってましたとばかりに触手を凝視するナオ。

一般の兵士ならば十数人薙ぎ倒し吹き飛ばす程の威力を叩き出す極太の触手による一撃を突き出した左手1本で受け止める。


そして、ナオは見た。



「おおおっ!!」



触手が左手に触れた瞬間、まるで真っ白に輝く光の糸が絡まりながらナオの左腕を真っ白に染め上げる。



「凄い!綺麗ーっ!」



喜ぶナオを他所に光は彼女の身体を包み込み…やがて大地に繋がる両足から地面へと抜けてゆく。

どうやら、絶対物理防御によって無効化された衝撃は糸状の光となり体表面を滑り回転するように手足や身体に絡まりながら…やがて大地に吸い込まれて行った。


一頻り感動したナオは、切り替えも早々実験に取り掛かる。


先ずはぶん殴る。

次に反撃を受ける。

身体に絡みつく輝く糸がどの様なルートを辿り抜けて行くかの観察と、この時いかに衝撃の糸を足から大地に返さず身体に循環させ続けるか、そして…


その衝撃を攻撃に転換させられるか…だ。


循環については、案外簡単に解決した。

無意識下で『絶対物理防御』が発動した場合は、衝撃が身体を巡りある程度威力が殺されると足から自然と抜けて行くが、意識した場合…一定の時間、つまり衝撃の威力が低くなるまでは腰の周りをグルグルと回り続けていることが分かったのだ。



「ぱっと見、眩しいフラフープみたいだなぁ…」



腰を回さなくてもフワリと宙に浮き身体から一定の距離を取りつつ何かを…そう、何かを待っているようにさえ見える。

所謂スタンバイ中の様な…


左手から受けた衝撃はそのまま身体を反時計回りに巡っており、腰でスタンバイ中の衝撃の糸も同じだ。


ナオはゆっくり腰溜めに構える。

ゆっくりと腰を回し、右拳を引いてゆく。

やがて正面からは見えなくなった拳に力を込める。



「さぁ!初披露だから、ちゃんと見ててねっ!」



恐らく浩二に言ったのだろう、そう叫んだナオは腰溜めしていた拳を真っ直ぐにスライムへと叩き込んだ。

見た目は普通のパンチ。

少し引き過ぎた正拳突きの様な感じだろうか。


しかし、ナオから見たそれは全く違っていた。

ナオの腰を高速回転していた衝撃の糸は、ナオの突き出した腕に巻き付くように伝わり…そして拳からスライムへと叩き込まれた。


突然ボコボコと沸騰した様に身体のあちこちを不自然に膨らませ若干後ずさる皇帝スライム。


ナオから見れば、スライムの内部に伝わった衝撃は体内で眩く輝きながら暴れ回り、幾つもの気泡を作り外へと飛び出していったように見えていた。


それでも飛び出さずに抑え込んだ衝撃を再び触手攻撃へと転換させる。

ナオはその触手すらあっさり受け止め再び似たような手法でスライムへと叩き返す。


もうすっかり慣れたナオは、動きを止め浩二を見た。



「コロンちゃん!そろそろ良いよー!」

読んでいただきありがとうこざいます。

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