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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第六章 蘇る悪魔

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魔法は苦手。


「なんて事するのよ。」



腰に手を当て無防備に笑う浩二の首筋に蠍の毒針が突き刺さる…筈もなく、硬質な何かに完全に弾かれ、レフトは不意打ちを諦め距離を取る。



「…お前…何者?…明らかに普通じゃないわ。」


「只の『ドワーフ』で『魔王』だよ。それより、見た目が随分と変わったな。」



先程まではまだ人に見えなくも無かったが…今は綺麗で長かった白い髪ごと黒光りする厚い粘膜に覆われ野太い両脚で立ち、両腕と呼ばれる物はなく何故か尻尾だけは蠍だった。



「あんまり美しくないからこの姿は嫌なんだけどね…この姿だと、物理攻撃が効かないの♪今は亡き『アンギラサーペント』の身体よぉ♪」


「へぇ…」



浩二の姿が一瞬で消え、何やら自慢しているレフトのガラ空きだった土手っ腹に浩二の拳がめり込む。

まるでピンポン玉のようにスッ飛んでゆくレフトを先回りして待ち構える浩二。

すかさずナチュラルカウンターで真逆へとスッ飛ばす。


繰り返す事数分。



「うげぁ…」



四つん這い…いや、二つん這いで気持ち悪そうにするレフトの姿があった。



「なんだ、物理も効くじゃないか。」


「うっぷ…コレは物理とは言わないわよっ!」



三半規管を嫌という程揺さぶられ揺れる世界を気分悪く過ごすレフト。

一応あんな姿でも三半規管はあったようで安心だ。



「確かに無傷ではあるが…あと2、3時間それ繰り返すか?」


「止めてもらえるかしら?気が狂いそうになるわ。」


「なら好都合。死にたくなるまで付き合ってやるよ。」



そう言って再びピンポンラッシュを始めようと土手っ腹に拳を入れて…違和感に気づき殴るのを止めた浩二は、少し距離を取る。



「あらぁ、気を付けてねぇ♪今の私に触れたら、拳が即座に溶けて無くなるわよぉ?…ってもう遅かったわね!アハハハハッ!」


「……本当に変わった身体だな。」



浩二は、溶けて崩れ落ちた自分の右手を見ながら呟く。



「私はこの世界で『魔物』と呼ばれるほぼ全ての生物の特性を自由に使えるからねぇ♪今のは『アシッドスライム』の粘液よぉ♪」



今度は気分良さげに自分の能力を語る。



「そっかぁ…それじゃ殴れないなぁ。」


「その前にその右手じゃあねぇ。」



ニヤニヤ笑うレフト。

彼女(?)もそろそろ学習した方が良い。



「ん?あぁ、右手なら…」



何事も無かったかのように生えて来る右手。

まぁ、実際は最初から腕ごと無く、気で出来た義手だったのだが。

最近は鎧ではなく、出来る限り生身に見せかけていた為…



「はぁ!?アンタこそ変わった身体してるじゃない!」



気持ちいいくらい驚いてくれた。



「そっか…それじゃ魔法かぁ。あんまり得意じゃないんだよなぁ。」



相変わらず浩二の魔法に対する苦手意識は続いているようで…

今回も例に漏れず勘違いによるオーバーキルが始まる。



「それじゃ私は倒せないわよ?そ・れ・にぃ…」



何故かレフトはここで間を置く。

魔法が苦手と聞いて気を良くしたのかも知れない。

間違って勝てる・・・と勘違いしたのかも知れない。



「私の身体は魔法を高確率で反射するの。弱い魔法じゃ通っても効かないし、精々強い魔法を射って自爆すればいいわ!」



そして、言わなくても良い情報を浩二に提示した。

これを言わなければ…



「コロン!フィー!サヤ!ミラ!」



浩二は妖精を呼ぶ。

土、風、水、火の四属性の妖精を。



「ちょっと攻撃魔法を使いたいんだけど…補助をお願いできるか?」


「任せるのです!御主人!」


「私はいつでも行けるよー!」


「頑張りますね、御主人様。」


「んっ!」



それぞれが返事を返す。

言葉は違えど気合いが入っているのだけは分かる。

そして…



「それじゃ行くぞ…」



言わなければ良かったのだ。

そうすれば…



「全力でっ!!」



こうはならなかった。



□■□■



「妖精が…4体…?嘘でしょ…?」



露骨に怯えるレフト。

やっと気付いた。

既に遅いが。



「1人が攻撃魔法補助!残りの3人はこの足元のクレーターの範囲を物理と魔法の両方の結界で包んでくれ!それを…」



キッ!とレフトを気合いの篭った瞳で睨みつける。



「アイツが跳ね返せなくなるまでローテーションだっ!!」



もう、誰も止められない。

出来るのは…早めに逃げる事のみ。



「ヤバイわっ!アイツは絶対にヤバイっ!!」



そして、クレーターから出ようと走り出したが…何か硬い目に見えない物で進路を塞がれた。



「何っ!?」



ふと頭上を見上げる。



「やったーっ!久しぶりに暴れられるぞーっ!」


「ほら、皆は一緒に結界を張るのです!」


「分かってるわよぉ。」


「ん!」



既にジャンケンで決まった1番手の妖精以外が張っていた結界がそこにあった。

浩二の馬鹿げた精神力をポンプで吸い上げるように遠慮無しに使って作った結界が。


そして…



「1番手はヒューか。頼むな!」


「任せて!御主人!」



容赦の無い無慈悲な魔法連撃が始まろうとしていた。



不意に風が吹く。

それは浩二が前に突き出した右掌に集まる様に。

本来色の無い風が密集し密度を持ち、景色を歪める。


最初は風だったそれは、嵐へと姿を変える。

浩二の右腕から先は既に吹き荒れる暴風により姿を捉えることさえ出来ず、圧縮された空気同士の激しい摩擦で時折雷の様な紫電が走る。


そして、それは始まった。

竜巻。

絡み合う様に仲良く渦巻くそれは互いに逆回転しており、放り込まれた者を容易く引き千切る。

しかし、安心して欲しい。

渦巻く高圧縮された風は極薄で無数の刃と化し引き千切られる前に微塵に刻んでくれるだろう。


なのに…



「何それ!可愛いっ!!」



ヒューの感想だ。

確かに、現在2つの竜巻は上を向けた掌から約1m弱程しかない小さな物だが…



「……何よ…ソレ…っ!?」



必死に結界を破ろうとしていたレフトが何かを感じ取ったのか物凄い勢いでこちらを見て口を開く。

ついでに目も見開いている。


分かる奴には分かるらしい。

この竜巻がどれ程の物か。

この子が成長・・したらどうなるのか。

読んでいただきありがとうこざいます。

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