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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第六章 蘇る悪魔

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提案。


「…マシナリー?…つまり俺をお前の傀儡にするつもりか?」



ドルギスの鎧の隙間から覗く何かが妖しく光る。

明らかに警戒度が増したようだ。



「いやいやいや、そんなつもりはありませんよっ!ただ、うちの『ナオ』と同じ様に『新しい身体』という括りです。別にドルギスさんをどうこうするつもりはありませんよ。」


「………」



慌てて否定したのがかえって怪しかったのか、警戒が解ける様子もない。



「…まぁ、無理にとは言いません。実際、マシナリーとして生まれ変わるとしたらドルギスさんの魂を1度魔核に移さなければならないですから、信用が無ければな成り立ちませんしね。」



それが少し悲しかったのか、浩二はそれを隠すように捲し立てる。



「それに、ステータスに『従属』という物がつきますし…まぁ、こっちは付けないように出来なくは無いはずですが…」


「従属?…やはり…」


「違いますよ。何となく言いたいことは分かりますが、それは多分『隷属』の方です。『従属』は俺に攻撃手段が取れなくなる…ただそれだけです。主の強制力もありませんし…と言うより…」



浩二は俯きそれ以上言葉にするのを止めるとドルギスに背を向ける。



「今日は帰ります。色々すみませんでした…例の件、気を付けて下さいね。…それじゃ!」



それだけ言うと足元に開いたゲートへと逃げる様に飛び込んだ。

今の顔は誰にも見られたくない…ただその一心で。



だから気付かなかった。



ドルギスの背後に伸びる影から現れた一体のマシナリーに。



□■□■



「…で?」


「…で?とは?」


「このまま放置するのか?と言う意味だ。」


「…分かりません。」


「まぁ、それだけ露骨な拒否をされちゃ無理矢理マシナリーにって訳には行かないだろうな。」



拒否と言うルドラーの言葉に浩二の身体がピクッとする。



「………マシナリーの居場所が分かれば、ブッ壊してくるのに…」


「物騒な独り言を聞こえるように言うのは止めろ。」


「マスター、居場所なら分かりますよ?」



夜も遅くに何処から帰って来たのか、帰宅して直ぐのタロスが浩二の言葉に反応する。



「本当か?タロス。」


「えぇ、この世界で私達以外のマシナリーは珍しい上、明らかに挙動不審だった為、ドローンの内の1機を隠密追跡させています。」


「しかし、そのマシナリーが俺達が探しているマシナリーとは限らんぞ?」



ルドラーの言葉に首を振るタロス。



「普通ならばそうでしょうが…姿がアゲイト族のものでしたので。」


「成程、それは間違い無さそうだ。」


「タロス!でかした!今すぐブッ壊しに行くぞっ!」


「はい、マスター!」



八つ当たりの捌け口を見つけた浩二は嬉嬉としてタロスへと指示を出す。

それを物凄く嬉しそうに了承するタロス。

そして、若干引き気味のルドラー。


しかし、命令を受け隠密行動中のドローンにアクセスしたタロスの動きが若干鈍る。



「タロス、どうかしたか?」


「はい、マスター。若干急を要する事態のようです。」


「まさかっ!?ドルギスさんに何かあったのか!?」


「はい。今現在、謎のマシナリーとドルギス様が接触中です。室外からの透視観察の為、音声の取得は不可。今すぐに荒事になる雰囲気はありませんが…急いだ方が宜しいかと。」



浩二はタロスの話を受け頭をフル回転させる。



「ルドラーさんは手を出せないんですよね?」


「あぁ、すまない。下界への干渉は極力避けよとの御達しだからな。今回の情報は俺の失敗故のサービスだ。」


「了解です。タロス!」


「はい、マスター。」


「今から勇者共を叩き起して第一拠点に飛んで、シュレイド城の転移陣から直接バルへイムに飛んでくれ。」


「了解しました。それで、アゲイト族を保護すれば宜しいんですね?」



一瞬で主の意志を読み取る出来た執事がいた。



「あぁ、頼む。大魔王がドルギスさんとの約束を守るなんて未だに思えないんだわ。」


「了解です。今すぐ皆さんを叩き起し…ふふっ、ナオ様以外を叩き起して現場へ向かいます!」



タロスの視線の先には、戦闘用メイド服に身を包んだナオの姿があった。



「浩二っ!殴り込みカチコミだねっ?」


「あぁ、大魔王をブッ壊しに行くぞ!」



飛び付くナオの手を取った浩二は、すぐ様ゲートを開きナオ共々飛び込んだ。


静かになった…いや、屋敷の奥で何やら騒がしい声が聞こえる。



「ふふっ、大魔王も可哀想に。」



ルドラーはそんな中、茶を啜りながら呑気に笑っていた。



□■□■



彷徨い歩く。

月明かりだけが照らす草原を。


グゥ~…


不意に空腹を訴える音が腹から鳴る。



「腹減った…」



呟いた彼の視線の先に動く影。

ガサガサと鳴る茂みに視線を向けると…


そこには兎…と呼ぶには大きく、額に立派な角を生やした1匹の魔物がいた。


無意識…と呼ぶには余りにもコチラの意思を尊重してはくれない動きで勝手に兎へ走り寄った俺は、無造作に片手で首根っこを掴み持ち上げ、嫌な音をたてながら締め上げる。

1m強はあろうかという巨体を…だ。



「…何なんだろうな俺は。」



半ば諦め気味に笑いながら呟いた彼は、目の前で一角兎の首が変な方向へ曲がるまでただ黙って見つめていた。


【生命力吸収・クリア】

【無意識単純戦闘・クリア】


「また何か出て来た…一体何なんだ。」



兎の皮を毟り血の滴る肉にそのままかぶり付きながら、もう何度目かの疑問を口にする。

生のまま味付けも無しに口に放り込んだ一角兎の肉は予想以上に悪く無く、空腹で泣く腹を満たしてゆく。


【食物魔素変換・クリア】


【生体機能・オールクリア】

【準備が整いました。『大魔王システム』起動しても宜しいですか?】

【Y/N】


「…は?」


視界の端に映る緑色の文字。

ツラツラと垂れ流していた今までの報告とは違う。

視界を移す度に点滅する『Y』の文字と『N』の文字。


初めて委ねられた決定権。

何故だか分かる『Y』と『N』の意味。



「ははは…意味わかんねーのに…意味が分かる。」



そして、どうすれば良いのかも。



「…はぁ…」



彼は溜息を一つ零して『Y』の文字へと照準を合わせる。

そして、瞳を閉じた。


【『大魔王システム』起動します。】



「…はぁ…強制なら『N』の選択肢なんて要らねーだろーがっ!」



悪態をつく。

そして彼の意識は…大きな存在によって上書きされた。

彼の意思ではない『Y』を選んだ事によって。


ここまでで『仮初めの魂』の仕事は終わったのだから。

読んでいただきありがとうこざいます。

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