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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第五章 砂の大地

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創造。


浩二はゆっくりと腰を落とし地面に右の掌を付ける。


タロスの引いてくれた黒いライン。

よく出来た執事たる彼は、分かりやすいように色を変えただけではなく、その材質まで変化させ、浩二がこうして見えない範囲まで把握出来るようにしていたのだ。


しかし、思った以上にその範囲は広大だった。

瞳を閉じてゆっくりと意識を集中し、そのラインを読み取り頭の中に描く。

やがて10数分後、隅々まで意識が行き届き、頭の中に魔法による変化後の湖予定地の全体像が浮かんだ。


次の瞬間、ズゥン…!と腹の底に響くよう不気味な地響きと共に黒い線の引かれた内側が全て10cm程沈んだ。


それでも地響きは収まらない。

浩二のいる中心に進むにつれ、徐々に低くなる様に少しづつ少しづつ深くなってゆく。



「…皆、宝石の中に入っていた方が良さそうなのです…!」


「…同感よ。ヤバイなんてもんじゃないわ。」



二人の言葉に頷いたサヤとミラと共に妖精達は、浩二の右腕に光る腕輪の宝石へと飛び込んで行った。



今浩二は、大気中のありとあらゆる魔素を土の魔素へと無理矢理変換して土魔法により大地の形を変化させている。

更に不足分を自前の精神力と生命力で補いながら。


コロンの判断は正しい。

妖精とは言って仕舞えば魔素が意思を得たものだ。

一応契約という名のタグ付けがされているとは言え、これ程の範囲から強制的に魔素を徴収している中、魔素の塊が至近距離に存在した場合…分解され無属性魔素に変換されてしまっても不思議ではないのだから。


まぁ、それを浩二が望まなければ…そうはならないのだろうが。


そうこうしてる間にも湖を作るという名の地殻変動は続いている。

中心にいる浩二の位置がどんどんと沈んで行き、周りが少し暗く感じる程だ。

やがて600m程大地が沈んだくらいで地響きが静かに治まった。


浩二は立ち上がり辺りを見回す。

湖予定地のラインが円形では無いため、綺麗なすり鉢状とはいかなかったが、急激に深くならないようにした結果、歪なクレーターの様になっていた。


最大長500km、最大幅250km…の北から南へ縦長の楕円をした、広さにしてざっと日本の半分程の超巨大なクレーターだ。

深さが600m程ある為、浩二のいる場所からは状況が全く把握出来ない。


浩二は、徐に跳び上がると縮地ブーストで大地から距離を取る。

そしてその全貌を把握した。



「…うん、我ながら凄い事したわ。」



空中で自然落下しながらボソリと呟く。


すると、第一拠点側の黒いラインの手前で呆然と佇む数名の人影が見えた。

浩二は器用に空中で方向転換すると、その人影目掛け加速し数m背後で地面を削りながら着地した。



「よう、見学か?」



何事も無かったかのような物言いに深い溜息をつく一同。



「アホかっ!?地震起こしといて何言ってんだよっ!」



食いつく猛。



「遂に天変地異まで起こせるようになったのね、アンタ。」



呆れながら冷たい目で見詰める麗子。



「浩二っ!これ何作ったの?実験か何か?」



興奮気味に予定地を指差し問い掛けるナオ。


何やら今日は麗子もガラス工場の手伝いに来たらしく、3人でせっせと働いていたら、不気味な地響きを感じ慌てて大灯台にいるタロスに聞くと「あぁ、これは恐らくマスターですね。」と涼しい顔で言われ、ここまで10数キロ走って来たそうだ。



「静かにゆっくりやったつもりだったんだけどなぁ…そんなに響いたか?」


「腹にビリビリ来る感じが何とも不気味だったよ。」


「で?この大穴は何?まさか穴を開けてみたかったとか言わないわよね?」



ナオと並んで浩二の答えを待つ。



「あぁ、タロスから聞いてないのか。今から湖を作るんだ。」


「…………うん。分かった、湖を作るのね?」



まるでソフィアの様に額に手を当て無理矢理納得しようとする麗子。



「…本当に兄貴はアホだよなぁ…」



もう付いて行けない規模にそんな言葉しか出ない。



「へぇー!随分大きいね。」


「このぐらいのデカくないと気候に変化が出ないんだ。…まぁ、直ぐに変化が起きる訳じゃ無いけどさ。」


「ふーん…大体どのぐらいの大きさなの?」


「わかり易く申し上げれば、日本の半分程の面積です。」



ナオと浩二の会話に突然入って来て説明するタロス。



「ひゃーっ!大っきいねーっ!」


「…なぁ?聞いたか今の…」


「……聞こえたわよ…本当に頭の悪い規模ねっ!」



まぁ、今回の規模は自分でもヤバいと思う。

一応残りの精神力やら生命力やらを確認したが、特にキツいとか不足した様な事は無く、それ所かこれだけの規模の魔法を使っておきながら、何かがごっそり吸い取られる様な感覚さえ今回は無かった。


実は、妖精と契約した事により世界中に漂う魔素を集める力が強くなったと言うか…簡単に言えば「要領が良くなった」のだ。

今まで知らなかった使い方を、妖精を通す事で覚えた…と言う事だ。

まぁ、浩二自身が意識して使っている訳では無いのだが。



「さて…タロス?」


「はい、何でしょうか?マスター。」



多分気付いてはいるだろうが、あえて聞くことにする。



「このまま湖に水を注いだら溢れるかと思うんだが…」


「その事ですが、ここから南へと山脈の麓伝いに海まで続く元々川だった跡地が残っています。所々補強や修正が必要でしょうが、ほぼそのまま使えると思われます。」



やっぱり次の案があったか。流石と言うかなんと言うか。



「よしタロス、それじゃ案内して貰えるか?」


「かしこまりましたマスター。」


「あ!っとその前に…」



浩二はタロスをその場に待たせ湖の中心部へと転送を使って跳ぶと、

地面に手を付き力を込める。

すると直ぐに地面から迫り上がる石で出来た水瓶のようなもの。

浩二はその水瓶に魔核を3個無造作に放り込む。


刻んだ命令は3つとも同じ、「魔素を集めて水を作り出せ。」だ。

基本は無制限に水を作り出し続ける。


やがて水瓶の口が光り、夥しい量の水が溢れ出す。

早くも足元まで溜まり始めた水を見ながら慌てて上へと駆け上がる。



「結構速く溜まりそうだな…急ぐか。」



浩二は急ぎタロスのもとへと跳んだ。



「お帰りなさいませマスター。」


「あぁ、ただ今。予想より水が溜まるのが速そうだから少し急ごう。」


「はい、マスター。」



浩二はタロスに続き、遥か昔に干上がったであろう川の跡を整備しに並んで走り出した。



読んでいただきありがとうこざいます。

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