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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第五章 砂の大地

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フェアリーパレス再び。


「3人が居心地の良い場所を追加しようか?」



ただ頷くだけの4人に浩二はそう告げる。



「そんな事出来るのです!?」



最初に反応したのはやはりコロンだった。



「あぁ、多分な。何となくだけど…あの魔核…いや、宝石にはまだまだ書き込めそうな気がしてるんだ。」


「なら、お願いするです!コロンだけお城があるとか狡いですから!」



自分専用の宝石を提供しようと言うのに全くこの妖精は。


浩二はコロンをそっと掌に乗せ、座りながらこちらを見ているいじらしい妖精の頭を指先で優しく撫でる。

目を細めて気持ち良さそうにするコロン。


それを見ている3人も心做しか羨ましそうに見える。



「分かったよ、コロン。それじゃ、3人に聞くけど…どんな場所が落ち着く?」



コロンを肩に移した後、浩二は腕輪を外し宝石に触れながら意識を集中する。



「私は空、自由に飛び回れる広い空が欲しい。」


「ヒューは空か。空…空…うん、了解したよ。」


「私は泉が欲しいです。」


「サヤが泉…と。……うん、OKだ。」


「………火山……出来…る?」


「あぁ、多分問題ないよミラ。」



それぞれの望む場所を追加すべく目を閉じ、宝石に触れながらその場所を想像する。

何かが自分の身体から吸い取られる感覚と共に、成功したことを漠然と理解した。



「よし、成功した…と思う。」



少し自身なさげにコロンへと告げる。



「それじゃ、確かめて来るのです!」



成功を信じて疑わないコロンは、早速とばかりに宝石へと飛び込んだ。


数秒後。



「皆っ!来るですっ!大変ですっ!」



トンボ帰りしたかのようなスピードで帰って来たコロンは慌てて三人を呼ぶ。


3人は急ぎ宝石へと飛び込みその光景に驚く。



「…え?」


「……」


「…何…コレ…」



それぞれが違う反応を示すも、方向性は変わらない。


先程まで…浩二との契約を結ぶまで4人で居たはずの場所とは明らかに違っていた。


中心に城があるのは変わらないのだが…

向かって左側に明らかに毛色の違う景色が見える。



「…本当…に…火山が…ある…!」



小高い丘を越えて少し進むと、そこからは荒れた大地が続き遠目には1000m級と決して高くはないが噴煙を上げる活火山が見える。



「ちょっと!こっちに来てっ!」



丁度火山と城を挟んで反対側の丘の上からヒューが3人を呼ぶ。



「え…?これって…湖?」



泉を願ったサヤが動揺しながらも何とか言葉にする。


丘の上から見下ろすその景色は圧巻だった。

波一つ無い穏やかな水面。

湖を取り囲むように瑞々しく繁る木々。


そして、何よりその規模。

サヤは一瞬海と勘違いした程だ。

向こう岸に見える木々が無ければ、きっと湖だとは気付かなかっただろう。



「えーと…私空とか言っちゃったけど…まさか…」



2人の貰った物を見て不安になるヒュー。


4人揃って空を見上げる。

何処までも突き抜ける程に青い空。

所々に散らばる雲が空の高さにアクセントを加えている。



「ヒュー、一緒に飛んでみるのです!」


「そうねぇ…行きましょう。」


「ん。」


「…うん、行こう!」



何処までも広がる青い静寂な世界を、4人は連れ立って飛び上がる。



「ん〜〜っ!気持ちいいっ!」



我慢出来ずに1人飛び出したヒューは、身体を捻るように錐揉みしながら誰よりも速く飛ぶ。

何処までも自分を受け入れてくれそうな…そんな空に抱かれて。



「ヒュー、気持ち良さそうです。」


「そうねぇ…ん?どうしたの?ミラ。」


「ん!」



ヒューの曲芸飛行を見ていたサヤの肩をミラがちょんちょんとつつく。

その指は自分達の下の方を指していた。



「…うわぁ…これは…凄いわね。」


「ん!」



眼下に広がる広大な大地。

火山があり、湖があり、草花が咲き乱れ丘の上には白亜の城。

そして、何処までも続く青い空。



「…コレ…全部私達4人の為だけの場所なんだね…」


「…そうなのです。御主人は、少し凄すぎるのです。」


「御主人様には、沢山ご奉仕しなきゃねぇ。」


「…ん!」



4人は並んで自分達だけの世界を見下ろす。

そして、改めて浩二に対する認識を新たにし…感謝した。


これだけのものを貰ったのだ。

中途半端な事は出来ない。



「皆、手伝って欲しいのです!御主人の領地を緑でいっぱいにするです!」


「手伝うよコロン。私に出来る全力でね。」


「コロン、私も御主人様に精一杯尽くしますわぁ。」


「ん!…頑張…る…!」



彼女達は自分達の世界の空で4つの小さな手を繋いだ。

少し怖くて無茶苦茶な…でも優しい御主人様を助ける為に。



□■□■



宝石から戻った4人の気合いの入り様を見れば、気に入って貰えたことが手に取る様に分かった。


直ぐにでも行動に移したいらしく、コロンに急かされた浩二はゲートを開き第一拠点へと飛んだ。



「それじゃ、御主人!コロン達は別行動するです!」


「あぁ、分かった。魔素使い切る前に帰って来いよ?」


「大丈夫なのです!もう十分過ぎるぐらい補給したのです!」


「それなら良いんだ。何かあったら遠慮なく言ってくれ。俺はその辺でこの拠点を道で囲こむ作業してるからさ。」


「了解なのです!」



後ろに並ぶ3人までコロンに合わせてビシッ!と敬礼をした後、最初に作った転移陣と正門を結ぶ道の方へ飛んで行った。



「敬礼なんて、どこで覚えたんだろうな。…ま、いっか。」



浩二は飛んでゆく妖精達の後姿を見送り、自分も作業を開始した。



□■□■



「取り敢えずここからなのです。」


「ん〜…先ずは水が必要ねぇ。後は…水が干上がるのを防がなきゃ…ヒュー、この辺りの風の流れ変えられるぅ?」


「風の魔素はたっぷりあるから楽勝だよー。」


「それじゃ、今から私とコロンで土を起しちゃうから、渇かないように風で天井作ってくれる?」


「りょーかいっ!」



空中でビシッ!と敬礼をするヒュー。



「さぁ始めるわよぉコロン。私が地面を湿らせるから、コロンは耕して土に水を含ませてぇ。」


「分かったです。でも、サヤは大丈夫です?この辺りは水が全然無いのですよ?」


「ふふっ、大丈夫よぉ。さっき宝石の中の湖からたっぷり拝借して来たわぁ。」



その小さな身体からは考えられない程の濃密な水の魔素を両手に纏わせながら、サヤは少し悪い顔で笑った。

読んでいただきありがとうこざいます。

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