皆で。
自信満々で誇らしげに言い放つコロン。
心做しか胸を張っているようにも見える。
「えーと、コロン?もう少し分かりやすく頼めるか?」
「…え?」
「え?」
「…私が説明致します。」
少し溜め息をつく仕草をしたタロスが補足説明をしてくれるらしい。
まぁ、補足とは言ったが、なんの説明もされていないのと変わらないが。
「妖精は主人となる者と契約すると、その者の精神力をトレースし自らを作り変えると言われています。主な理由は、主人から精神力を貰い存在を維持する為に必要なのと、主人が魔法を行使する際そのブーストの役目をスムーズに行う為だと思われます。」
「成程。つまりコロンは俺の精神力をトレースして生まれ変わったから俺の影響は受けない…と。」
「はい、恐らくは。」
当のコロンは、浩二とタロスの話を聞いて首を傾げている。
まぁ、悪い影響がある訳じゃ無いし、いっか。
二人の会話が終わるのを待っていたのか、タロスの話に納得していた浩二の目の前にコロンが飛び出し、両手を目の前で組みキュッと閉じていた口を開いた。
「御主人っ!あの3人とも契約して欲しいのです!」
□■□■
「コロン…良いのぉ?」
「何がです?」
「御主人様を独り占めしたいんじゃないのぉ?」
サヤの言葉に悲しそうな笑いを浮かべたコロンは静かに俯く。
「…それは…確かに誰にも渡したくないのです。…でも…今のコロンじゃ、御主人の望みを叶える事が出来ないのです…」
ぽたぽたと涙を落としながら語るコロンをギュッと抱き締めるサヤ。
その後から現れ優しい笑みを浮かべ2人を抱き締めるミラ。
黙って聞いていたヒューも、仲間外れは嫌だと飛び付いてくる。
「…コロンの……したい事……手伝…う……だから…泣かないで…?」
「えぇ、私達に出来ることなら何でもするわ。」
「…コロンのぉ御主人様は取らないから大丈夫よぉ。」
3人はコロンが泣き止むまで一緒に彼女を抱き締めていたが、やがてサヤが浩二の前に歩み出る。
「…もう、良いのか?」
「はい。お待たせしてすみませんでした。」
綺麗な言葉遣いで謝罪し頭を下げる。
同じく、駆け寄って来たヒューとミラも隣に並び同じ様に頭を下げた。
頭を下げたままの3人の後ろに視線を向けると、涙を手で擦っていたコロンがこちらを見て力強く頷く。
「よし、それじゃ3人とも俺と契約してくれるのか?」
浩二の声に頭を上げる3人の妖精。
「はい。コロン共々お世話になります。」
「…よろしく…お願い……しま…す。」
「コロンと一緒に頑張るわ。」
浩二の目を真剣な眼差しで見詰める3人。
「えーと、俺はまた目を閉じてれば良いのか?」
「え?いえ、その必要はありません。」
「え?だってコロンの時は…」
「あーーっ!御主人っ!その話は良いのですぅっ!」
真っ赤な顔で飛び付いてくるコロン。
「ふふっ、コロンは恥ずかしかったのよねぇ?」
「う〜…そうですぅ。」
真っ赤になって頬を膨らませる。
「なら、俺は目を閉じなくても良いのか?」
「はい。自己紹介も兼ねていますので。」
「成程。それじゃ早速始めようか。」
浩二がそう言うと、真っ赤になっていたコロンも浩二の肩に飛び乗り仲間を見守る。
最初に歩み出たのは緑の花弁のようなドレスに緑のショートヘアーの妖精…ヒューだ。
「私は風の妖精ヒューよ。これからよろしくね。」
「あぁ、よろしくヒュー。」
ヒューはコクリと頷くと、フワリと浮かび上がり浩二の額に両手を付ける。
【我は風の妖精ヒュー、今よりコージを契約者と定め、我が身滅びるまで契約者と共にあることを此処に誓う。】
そう言ってコロンの時の様に額にその小さな唇で口付けをした。
契約完了と同時にヒューはそのまま飛んでコロンと同じ様に浩二の肩で隣に並んで座る。
「次は私です。私は水の妖精サヤ…以後お見知りおきを。」
サヤと名乗った青い水の様なドレスに青いロングヘアーの妖精がスカートを摘み綺麗なお辞儀をする。
「あぁ、よろしくサヤ。」
同じくコクリと頷いたサヤはフワリと額まで飛び、両手を付ける。
【我は水の妖精サヤ、今よりコージを契約者と定め、我が身滅びるまで契約者と共にあることを此処に誓う。】
そう言って静かに口付けをする。
心做しかひんやり冷たい気がした。
そのまま額を軽く片手で軽くなぞるようにして触れた後コロンの元へと移動した。
そして、最後に残ったのは赤い炎の様なドレスを着て赤いポニーテールをした物静かな妖精だ。
「……私は…火の妖精…ミラ……よろしく……お願い…しま…す。」
「あぁ、よろしくなミラ。」
つっかえつっかえ話すミラに笑顔で答える。
静かにゆっくりと浩二の額に移動したミラは、ゆっくりと両手を額に添えた。
【…我は…火の…妖精ミラ、今より…コージを契約者と…定め、我が身…滅びるまで…契約者と共にある…ことを此処に…誓う。】
ゆっくりと、でも確実に唱え終えたミラもまた浩二の額に口付けをした。
今度は契約を終えていた3人がミラの元へと集まった。
それは丁度浩二の目の前に全員揃った事になる。
「御主人、これからもよろしくなのです!」
「御主人様、これからどうぞよろしくお願い致します。」
「……御…主人…よろしく…お願い…します。」
「あぁ、ミラは無理して話さなくても良いからな?」
「…ん。」
「御主人、これからよろしくね!」
浩二が差し出した手の指をそれぞれ両手で握り挨拶を交わす。
「あー、それで宝石はどうする?今から作ろうか?」
「あ!それなら心配要らないのです!」
コロンが浩二の掌に乗る。
「コロンの宝石に全員入れるので問題ないのです!」
「そうなのか?」
視線を4人に流すと、それぞれが黙って頷く。
「なら、提案なんだが…」
浩二は4人の妖精に向かい、一つの案を持ちかけた。
□■□■
「改めて…とんでもない人よね…私達の御主人様って。」
目の前の泉と呼ぶには広過ぎる物を眺めながらサヤは言う。
「…ん。…凄い。」
同じく目の前に聳える山と噴火口を静かに見詰めるミラ。
「私達の常識を軽く超えてくるわよね。」
何処までも飛んで行けそうなほど突き抜ける青空を、悠々と飛び回りながらヒューも二人の意見に同意する。
「これが私達の御主人なのですっ!」
腰に手を当てたコロンが、胸を張って言い切った。
読んでいただきありがとうこざいます。




