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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第五章 砂の大地

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コロン頑張る。


「いつか、道の両脇に街路樹みたいに木でも植えたいな。」



出来上がった正門までの道を眺めて呟く浩二。

それを腕輪の宝石の中から聞いていたコロンは、その願いを叶えてあげたいと本気で思った。

今の自分では無理な事は分かっている。

木を植えたり、生やすことは出来るだろう。

それこそ、土の妖精の面目躍如だ。


しかし、それでは駄目なのだ。

それでは樹木が木々が森が育たない。

適温に保ち、程よい水分を与え、新たな種を運べなくては、一代限りどころか数日と経たずに枯れて砂漠の砂となってしまうだろう。


温度を上げる『火の妖精』

水分を調整し温度を下げる『水の妖精』

それ等を風に乗せ運び混ぜる『風の妖精』


協力者が必要だ。

自分はそれ程優秀ではない事ぐらい分かっている。

だからこそ…

自分に出来ない事は出来る奴に頼む。


本当は…誰も大好きな御主人に会わせたくはないけれど…



□■□■



ここは楽園だ。

遮る物も無く、力一杯吹き抜けられる。


この地に来てどれ位になるだろう。

果てしなく続く砂の大地に溢れ返るほどの風の魔素。


ここに来て本当に良かった。

大妖精を目指した事もあったが、もう随分昔に諦めた。

私を養える程の力がある奴なんて、最初からいる筈が無かったのだ。


ある日、ソレは突然現れた。


風の魔素で満たされた空間を文字通り切り裂くソレは、この上空には有り得ない人の形をしていた。

この場所に辿り着ける存在など、かの龍種と上位種の鳥類だけの筈だ。

少なくとも私が知る限りは。


最初は私の眷属の密度に耐えられず直ぐに諦めるように落ちていったが、次に現れた時にはもう眷属達など物ともせず、轟音を響かせ飛び回っていた。


アレは一体何だったんだろう?


私は少しこの地の空が怖くなった。



次にソレと会ったのはまた空の上。

今度は足に奇妙な物を付けて飛んでいた。

以前と違うのはそれだけじゃなく、スピードも遥かに増していた。

風の妖精の私すら追い付けない程に。


何より、ソレに従う風の魔素達が少し嬉しそうなのが気に入らなかった。


それから少しして私と同じぐらいに生まれた土の妖精が契約を果たしたと噂で聞いた。

驚いた。

もう最後に妖精が契約を成功させたのは数100年前だと聞いたし。


しかもその妖精は…私の知り合いだ。


名前はコロン。



□■□■



「ヒュー、お願いがあるのです!」


「なぁに?私なんかに用なんてあるの?契約妖精のコロンさん?」



ヒューと呼ばれた妖精は、コロンを見て少しムッとしたが直ぐに笑いながらそう言った。


常春の国の大樹の天辺辺り。

コロンは彼女に会うため常春の国に戻り、彼女が好きだったこの場所に来た。

一時は2人で大妖精を目指して、一生懸命修行をしていた仲だ。

しかし、やがてヒューが大妖精を諦め始めた辺りから疎遠になり…

契約妖精になってから初めて会った彼女はやっぱり何処か悔しそうで…



「…私は確かに契約妖精になったのです…でも、それは私の力じゃなく御主人の力なのです…」


「…ふん!…で?お願いってなに?」



素直に自分の未熟さを認めるコロンにバツが悪くなったのか、そっぽを向きながらコロンに問いかける。



「草木の育成を手伝って欲しいのです!今の私だけじゃ無理なのです!」


「草木?アンタの得意分野じゃない。」


「普通の場所なら…得意なのです。でも…御主人の領地は違うのです。」


「どんな所よ?アンタが無理だなんて…」



何だかんだ言ってもヒューはコロンを認めているのだ。

その彼女が弱気になる様な場所とは一体何処なのだろう?

純粋に興味があった。



「…サーラ半島なのです。」


「…!?…確かに、あの場所じゃキツいわね。」



あの場所は火と風の楽園だ。

逆に言えば、水と土にとっては地獄に等しい。



「土を生き返らせる為には、風と水の協力が必要なのです!お願いなのです!」


「…別に手伝っても良いけど…」


「本当です!?ありがとうなのですっ!」


「ちょっ!?」



涙を浮かべガバッ!と音が聞こえるぐらいの勢いでヒューに抱き着くコロン。

顔を赤くしながら必死に引き剥がそうとするヒュー。



「でも…私そんなに長くそっちに居られないわよ?」



コロンを引き剥がしたヒューは気を取り直す様に口にする。

そう。

妖精達は精霊石を使い色々な所に出入口を作り出すことが出来るが、その出入口を維持しておける時間には限りがある。

精霊石は常春の国でしか精製出来ず、一度出入口を作るとその場で砕けてしまう。

よって、向こうの世界に留まったまま出入口が閉じてしまった場合、帰るには偶然仲間が開いた出入口を見つけるしかない。

事前に示し合わせていたならばまだしも、全くの偶然で他の妖精が作った出入口を見つけられる確率など無いに等しい。

ある程度の無属性魔素がある場所ならば生きていく分には問題ないが、それが無い場合黙って消えてしまう運命だ。

だから、妖精達は自分の属性以外の属性魔素を無属性魔素へと変える訓練をするのだ。

少しでも生存率を上げるために。


しかし、契約妖精は違う。

契約者から自分専用の部屋を貰えるのだ。

そう部屋・・を。

宝石の中に作られる空間は普通部屋程度の広さなのだ。

それは同時にその空間に満たされる魔素の量にも比例する。


普通は一部屋に1人の妖精が限界である。

その話は妖精達の間でも一般常識なのだ…が。



「コロンの部屋に住めば良いのです!」



だから、コロンのこの言葉が何を言っているのか分からなかった。

その部屋を見るまでは。



「…え?何よ…この広さ…」


「これがコロンが御主人から貰った部屋なのです!」


「…部屋って…コレは城じゃないっ!」



その空間には草木が咲き乱れ、小高い丘の上には立派な白亜の城が聳え立っていた。

一体どれだけの精神力を込めればこれだけの空間を維持できると言うのか。



「コロン…アンタの御主人って一体…」


「私の御主人は魔王なのですっ!」



コロンは満面の笑みでそう言った。

読んでいただきありがとうこざいます。

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