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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第五章 砂の大地

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武家屋敷…?


「えーと…屋敷に城壁って必要か?」



地面をザックリ均した場所以外にも広大な土地を巻き込み城壁で囲った後に浩二は言う。

その広さ、実に10平方kmオーバー。

何処の豪邸だと言う話しだ。



「囲ってから聞くこと?」


「まぁ…な。」



シュレイド城に負けずとも劣らない立派な城壁を見上げながら溜息をつくソフィア。

コロンはコロンで、もう辛抱たまらん!と言わんばかりに浩二の胸に抱きついている。

まぁ、これだけの範囲を瞬く間に城壁で囲めたのは彼女の助けも大きい。



「まぁ、敷地を囲うだけならやってる貴族も居るわ。しかもこの場所は未開の地だもの、警戒はし過ぎて困ることは無いわ。」


「だな。なら…次は屋敷か…」



腕を組み考え込む浩二。


和風にしようか…洋風にしようか…はたまたファンタジーばりばりの魔法建築にしようか…


やっぱり和風が一番落ち着くんだろうな。



「うっし、決めた。」



浩二は少し縦長に囲われた城壁内の一角へと足を運ぶ。

そして、その場に膝間づき右手を地面に置く。


瞳を閉じて頭の中でイメージを固める。



「よし!」



軽く気合を入れた浩二は、イメージを大地へと流し込む様に力を注ぐ。


目の前にある土が異様な程蠢きその姿を変えて行く。

そして、次々と生えて来る木々達。

しかし、生えては次々と建材へと姿を変えてしまう。


これだけのスピードで不毛の地に木々を生やすなど、浩二1人では無理だった。


契約妖精であるコロンが浩二の肩の上で軽く身震いする。


それを可能にしたのは、彼女を間に挟む事で魔法が効率化されているお陰だ。

ただ、彼女に通す精神力が普通の量では無い為、多少の摩擦が生じてしまいむず痒いのだろう。

時折顔を赤らめピクピクと身体を痙攣させている。


どこか…見た事のある光景の様な気がするが…多分気のせいだ。

決してピンクの髪のサキュバスのことでは無い。



「ご、御主人…っ!もう少し…んっ!ゆっくりお願い出来ますか…です。」



何故だろう?

変に色気を感じる。



「ん?あぁ、分かった。…ゆっくりな。」



浩二は務めて流す精神力量を調整する。

ふぅ…と軽く息を吐くコロン。


妖精は言ってしまえば魔素の塊だ。

コロンに関して言えば土の魔素だが。

その身体に、土の魔素へと働きかける精神力を流しているのだ。

しかも、普通では無い浩二の精神力を。

恐らくコロンは性的何か・・・・と同じ感覚を覚えているだろう。


しかし妖精にそれ等の感覚は無い為、あの様な微妙な感じになってしまうと推測される。


因みにサキュバスは、生命力や精神力を糧とする特性上、どちらかと言えばヒトよりも妖精寄りの種族だ。

つまり、今コロンが感じている感覚は、いつもあのピンクのサキュバスクイーンが感じているアレとほぼ同じなのだ。

そうアレと。



そんな事はさて置き。



コロンの頑張りの甲斐もあり、目の前でドンドン出来上がって行く建造物。



「…見た事の無い建築様式ね。」



作業スピードに呆れながらも別な感想を探してくれる優しいソフィア。



「あぁ、これは和風建築だよ。多分この世界には無い筈だ…勇者が持ち込んで無ければだけど。」



作業スピードを微塵も遅くせず、寧ろコロンの為にゆっくり目に作業している浩二は、ソフィアの問い掛けにそう答える。


もしかしたら過去の勇者が何処かに和風建築物を建てていても不思議じゃないからな。

魔法のある世界ならきっと可能だろう。

だって、今正に目の前にそれがあるのだから。


瓦屋根のついた白壁に囲まれた…何とも圧力を感じずにはいられない立派な門構え。

単独門と呼ばれる大名や有名な武家などでしか許されなかった門構えだ。


よく時代劇などで見掛ける奉行所等で見た事もあるだろう。



「和風建築ねぇ…聞いたことがないわ。もしかしたらお爺様やシルビア達エルフなら知ってるかもね。」


「あぁ、成程。長生きだもんなぁ、皆。」


「何他人事みたいに言ってるのよ。コージだってこれから軽く数百年は生きるんだからね?」


「マジかぁ…何して過ごせば良いんだろうな。」


「せっかく時間と地位と領地があるんだから、好きな様に生きてみたら?」


「好きな様に…かぁ。」



浩二はギラギラと太陽が照りつける空を見上げる。


せっかく貰った力と領地。

精一杯開拓しようと改めて思う。



「大都市にでもしちゃうか。」


「コージがそれを望むなら、それも良いんじゃない?」


「いや、俺は静かに過ごしたいよ。静かな葉音と零れる日差し、清らかで涼し気な水の音と、肌を撫でる柔らかく優しい風。…あぁ、想像しただけで素晴らしい。」



大好きだった森林浴を思い出す浩二。



「コージって、ジジ臭いって言われない?」


「うっさい。言われるけど。」


「ふふっ、私は好きよ?そう言う静かで優しい暮らし。さ、そろそろ案内してくれる?」



くるりと回りながら笑顔で門の前に立つソフィア。



「あぁ、分かった。」



浩二は敢えて正門は開かずに、脇にある出入口から中へと案内した。



「…何で門を開かないの?」


「門ってのは、威圧の為の物でもあるんだ。だから、本来ポンポン開けないんだよ。まぁ、でかい物を出し入れする時は開くけどな。普段はこっちだよ。」



門の正面には少し盛り上がった部分が見られ、それを迂回するように道に並んだ石畳の上を歩く。

今はまだ無いが、いずれこの場所には庭木を植え、門が開いても正面玄関が直接見えない様にする予定だ。



「さ、ここが正面玄関だ。あ、靴は脱ぐように。」


「え?靴を脱ぐの?」


「あぁ、和風建築は室内ほぼ全て土足厳禁だ。」



浩二に習って靴を脱ぐソフィア。

普段靴を脱ぐのはお風呂の時と寝る時ぐらいのソフィアは妙に落ち着かない様子だ。


ギシギシと板貼りの床の軋む音を立て歩く二人。



「足が少し冷たいけど…悪くないわ。」


「あんまり冷たいようなら後で内履きでも用意するよ。」



そして、一番広い部屋…家具も何もなく、ただただ広い襖を全て開け放った畳張りの空間が広がる。



「はぁ…畳の匂い…なんだか随分懐かしいや…」



その場でゴロりと横になる浩二。



「ちょっ、コージ!?」


「ほらソフィアも座って、畳が気持ちいいよ?」



寝転び首だけソフィアに向けてソフィアを誘う。



「…何だか、不思議な感じね…でも、」



ゆっくと畳に腰掛け、畳に指を這わせる。



「うん、悪くないわ。なんて言うか…落ち着く。」



そんなソフィアを見ながら微笑んだ浩二は、しばし畳の感触を楽しむのだった。

読んでいただきありがとうこざいます。

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