転移陣設置。
「この辺りが妥当かな?」
いつもより少し早めに領地へと転移して来た浩二は、シュレイド城からの転移先の当たりを付けていた。
今は転移陣を置く為の場所を作るだけが目的なので1人で現地入りだ。
予定地は丁度昨日猛を連れて転移して来た場所だ。
ここからなら大灯台も見えるし、距離も近い。
「あまり拘らないでチャッチャと作るか。」
形は直径10m位の円形。
地面から2m程高くして、階段で出口まで繋げる。
端に10本の柱を立て、その上にイスラム教のモスクに見られる様なあの丸い先の尖った屋根を被せる。
先端を尖らせたのには理由があり、そこに魔核を仕込み「風の結界」を張るためだ。
「その前に…」
浩二は屋根から突き出た尖塔を巻き込む様に少し隙間を開けて建物全体をドーム型の石英ガラスで覆った。
隙間を開けたのは空気を循環させる為だ。
更に万が一割れたりしないようにガラスを高圧縮した。
しかし、このままではビニールハウスの様に中が灼熱地獄になってしまうので、屋根の内側に自動点灯式の灯の魔道具と共に、あの気温を快適に保つ魔道具『エアコン』を取り付けた。
「よし、外観はこんなもんだろ。後は出入口だけど…」
建物を覆ったドーム型のガラスの前で腕を組む。
「誰でも出入り自由…って訳にはいかないよな。」
これから繋いでもらうゲートは、直接シュレイド城に繋がる。
向から来る分には拠点を守る城門があるので問題ないが、こちらから行けば転移陣が山程あるあの部屋に繋がるのだ。
万が一悪用されれば、一気に本丸のド真ん中に転移出来てしまう。
馬鹿みたいに警戒する必要は無いが、ある程度の警戒は必要だ。
「やっぱり手形式が一番簡単だな。」
今の所、猛の『エアコン』や、タロスとナオの魔核、アニマルマシナリー達がその手形に当たる。
要は「浩二の魂を刻んだ魔核を使った何か」を持っていなければ、門が開かない仕組みにするのだ。
単に純度を落とした魔核に浩二の魂を刻み、首飾りか腕輪にして信用出来る相手に渡しておけば、その人が付き添わなくては扉が開かない事になる。
今の所、この世界に浩二の魂を刻んだ魔核を使った武器や魔道具を持つ人物は、ソフィア、ミラルダ、人族組全員、ナオ、タロスになる。
門を通るには、ナオとタロス以外はアニマルマシナリー同伴、ミラルダは『オロチ』を持参してもらうことになるが。
「ドルギスさんとシルビアさんにも何か渡しておかなきゃ。」
そんな事を考えながらガラスのドームに右手で触れ、力を込める。
イメージは自動ドア。
開くのでは無く、左右にスライドする感じだ。
そして、ドアになる部分のガラスの内部に拠点の門にあるものと同じ様な龍を向い合せで埋め込む。
違うのは互いの龍が外を見ているのでは無く、互いを見ている感じだ。
そして、その手には淡く光る宝玉が握られている。
この中に浩二の魂を読み込む魔核が埋め込まれているのだ。
「よし、実験だ。」
建物の中心…転移陣を刻む場所まで戻ると、扉の前まで歩く。
階段を下り、丁度扉の目の前に来たとほぼ同時に龍が持つ宝玉が輝き、静かに扉がスライドする。
ドームも扉も透明度の高い石英ガラス製な為、龍が埋め込まれていなければ開いたかどうか分からないかも知れない。
しかし扉が開いた途端、熱気を含んだ空気が浩二を出迎えてくれる。
今の浩二には何も感じないが。
「動作確認終了っと。」
再び扉の閉じた建物を振り返って眺めた浩二は、満足げに頷きゲートを開くと、その穴へヒョイと飛び込んだ。
□■□■
「お帰り、コージ。」
訓練所で出迎えてくれたのは、まるで今浩二が帰って来るのが分かっていたかのようにひとり佇む『魔導の魔王』シルビアその人だった。
「ソフィアから聞いてるわ。もう現地の準備は出来たんでしょ?直ぐ行きましょう!」
「朝から元気ですねシルビアさん。」
「ソフィアから色々聞いたからね、その拠点早く見たいわ!」
目をキラキラさせ、浩二に躙り寄るシルビア。
「えーと…シュレイド城側の陣は…」
「終わったわ!」
「ですよね。分かりました。それじゃ行きましょう。」
戻って来て数分と経たないうちに逆戻りする羽目になってしまった。
二人は再び開いたゲートに飛び込み姿を消した。
□■□■
「思っていたよりシンプルね。」
転移陣を刻んで貰う建物の前に降り立った二人。
建物を見て開口一番シルビアが言う。
「あんまりゴテゴテしたのは好きじゃないんです。」
そう言って扉の前に歩み出る浩二。
次の瞬間静かにスライドする扉。
「…機能はシンプルじゃないのね。」
ボソッと呟くシルビア。
自動ドアなど初めて見たのだろう。
キョロキョロと辺りを気にしながら浩二の後に付いて歩く。
「ここです。この中心に陣を刻んで貰えますか?」
階段を上り建物の中心付近でそこを指差す。
「…ここ、涼しいわ。あと、今勝手に明かりが灯ったわね。」
聞いちゃいない。
「後から説明しますから、先に転移陣をお願い出来ますか?」
「むぅ…分かったわ。でも!後でちゃんと…」
「大丈夫ですから。」
「りょーかい!」
嬉しそうに返事をしたシルビアは、早速陣を刻み始めた。
それと同時進行で浩二はシルビア用の『エアコン』を作り始める。
今回のは腕輪版であり、『魔素急速収集』が付いた特別製だ。
「出来たわっ!」
浩二が腕輪を作り上げるのとほぼ同時にシルビアが転移陣を刻み終え激しく浩二へと詰め寄る。
この人…コレさえ無ければ美人さんなのにな…残念でならない。
「俺も丁度出来上がりましたよ。はい、シルビアさん。」
「これは?」
突然渡された腕輪を両手で受け取り首を傾げる。
後ろで浩二が魔道具を作っていたのにすら気付かないぐらい集中していたのだろう。
この人は仕事はちゃんとする人だからな。
「これは通行証みたいなものです。俺の魂を刻んだ魔核を使ってますから、これさえ身に付けていれば、領内何処でもフリーパスです。」
「へぇ…でも、それだけじゃないわよね?コレ。」
流石に気付くよな。
伊達に『魔導の魔王』やってないんだし。
「はい。体表温度管理魔道具の『エアコン』に、『魔素急速収集』をプラスした魔道具です。」
「体表…何?」
「えーと、身体の周りに適温に調整された風のフィールドを纏う魔道具です。」
「…相変わらず宝具クラスの魔道具をポンポンと作るのね。…まぁ、ありがとう。一応は領内の出入りが認められたって事ね?」
「一応所か、いつでも遊びに来てください。『エアコン』があれば領内何処でも快適ですから。…まぁまだ何にもありませんけど。」
「ふふっ、うん。ありがとうコージ。」
浩二の言葉にシルビアは微笑んでお礼を言い直した。
読んでいただきありがとうこざいます。




