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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第一章 ドワーフは魔族!?

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策士(小悪党)策に溺れる。


「さて、睡眠もバッチリ。今日も元気にお相手しますかね。」



昨日あれからずっと修練を続けていた浩二だったが、どうやらポーションを飲む前に力尽きたようで…

今朝方、ポーションの木箱に覆い被さるようにして爆睡しているところをスミスに発見された。


余程面白い体勢だったのか、朝から大爆笑されたものの身体はすこぶる快調。

いつもの日課に「気」の運用も取り入れたのだが、明らかに精度も上がっていた。



「睡眠って、やっぱり大事だなぁ。」



睡眠と言うか…単に力尽きて倒れただけだったりするが。

すっかり慣れた様子で訓練所でストレッチをしながら勇者達を待つ。



「今日は操気術(そうきじゅつ)も試してみよう。」



徐に左手に薄く青い光を纏いながら呟いた。

浩二はこの気の運用法を、操る気の術と書いて「操気術」と名付けた。


未だ全力全開で運用出来る程手慣れてはいない為、纏っていた気を振払うように消し、静かに立禅の体勢をとると丹田にて気を練り始めた。


そうこうしている間に勇者達が集まってくる…が、いつもと様子が違う。

具体的に言えば、持っている「武器」が。



「おいおい…遂に金属製品のお出ましかよ…」



刃は潰してある…が、紛れも無く金属製だ。

武器同士の打ち合いならまだしも、こっちは素手である。

しかも、ボロボロの布切れの様な服しか装備していない。



「…昨日のアレが余程気に入らなかったらしいな…」



派手に木剣を折ったのが効いたらしい。

翌日即対応とは恐れ入る。


勇者の数人はこちらを見ながらニヤニヤしている。

昨日木剣を折られた彼に関しては下卑た笑みにすら見える。



「気合を入れ直さなきゃダメみたいだな…」



両手で頬を張る。

「パァン!」と良い音がした。


頭の中がクリアになっていく。

昨日操気術を覚えておいて本当に良かった。

じゃ無きゃ嬲り殺しにされる所だ。



「毎度武器を壊されてもたまらんのでな、今回…」

「大丈夫ですよ。早く始めましょう。」



恐らく入れ知恵と武器の用意をしたであろう容疑者であり、共犯者でもあるいつもの兵士のオッサンの言葉を遮るように訓練の開始を促す。

勿論わざとだ。

全く、どれだけ魔族が憎いんだか…。



「フンッ!まぁ、良い。せいぜい死なない事だな。」



最初は眉間にシワを寄せてこちらを睨んでいたオッサンも、頭が冷えて勇者達が有利なのを思い出したのか、ニヤけた顔で口を開く。

開いて出た言葉がコレとか…。


この世界ってやっぱり命の価値が低いんだろうか?

それとも単純にこのオッサンの頭が湧いてるのか。

まぁ、良いや。

こちらも簡単に殺されてやる気は無いしな。


等と考えていると、相変わらずこちらの意思確認など無く勝手に訓練は開始された。


さて…始めようか。



□■□■



「蓮が最後なのは…決定事項なのか?」


「うん!だって、疲れてなきゃお兄さんに勝てる気がしないもん!」



金属製の剣は重くて嫌だという蓮はいつもの木剣を左手に持ちながら今日も元気に火の玉をバラ撒く。

言ってる事は結構強かだが。



「最近は、お兄さんに勝つ事を目標にしてるんだっ!火炎球っ!」


「ホッ…と!目標?随分低い目標だな。」


「そんな事ないと思うけどなぁ…結局皆やられちゃったしねっ!周りを見てみなよ…って火炎球っ!」


「周り…?うおっ!汚ぇっ!」


「ほら、やっぱり当たらないじゃん!」


「ほらじゃねーよ!ほらじゃ!」



なんてやり取りをしているが、実際は言葉の隙間隙間に火炎球をしっかり置いていく。

しかも複数。

彼女もしっかり成長している様だ。



(まぁ、それは俺も同じか。)



決して余裕があった訳じゃない。

しかし、今回は浩二の新しい武器「操気術」があったから…では無い。

そう、武器のせいだ。

容疑者の口車に乗せられて勇者達が選んだ武器。

そのせいで、ろくに戦えずに訓練を終えたのだ。


理由は一つ。


『重さ』


ただでさえアンバランスなレベル上げをしているのに、木剣よりも重い武器を使えばどうなるか。

答えは簡単、身体が剣に振り回されるのだ。


ろくに素振りすらせず、ただただ数字のみを上げ続けた弊害。

時間をかけてゆっくりと頭と身体の摺り合わせをしていれば、全く違った結果になっていただろう。



「レベルが全てじゃない良い見本だな。」


「へ?何、お兄さん。」



「あ~~~っ!もうダメっ!参ったぁ~っ!」と叫びながらその場に座り込んでいた蓮が浩二の独り言に反応する。



「いや、何でもない。所で、蓮は今レベルいくつなんだ?」


「ん?えーとね、この間ぴったり30になったよ。」


「30か…」



はっきり言って凄いのかどうなのか分からない。

だから聞いてみた。



「レベル30って凄いのか?」


「んー…確か、一般の冒険者が25ぐらいでー、騎士さんになると35から40ぐらいだって言ってたような…」



つまり、普通のそこらに居る冒険者って呼ばれてる人達よりは強い…筈なんだよなこいつ等。


恐らくは冒険者の方が強いだろう…

浩二は確信めいた何かを感じていた。


方や職業として常に危険な仕事を請け負う冒険者。

方や強いヤツの金魚の糞。


レベルという数字だけでは測れない、経験とか熟練度等が圧倒的に違う筈だ。

まぁ、一概には言えないが。


しかし…このままじゃ…



「なぁ、蓮。勇者達って戦場に出されたりするのか?」



一抹の不安を覚え尋ねてみる。


別に勇者達がどうなろうが実の所知った事ではない。

が、既に知り合いも出来た。

ただただ無駄死にさせるのは寝覚めが悪過ぎる。



「多分、ある程度のレベルになったら前線に投入するみたいだよー」



やはり、蓮の答えは浩二の予想を裏切らなかった。



(はぁ…どうせアイツらは聞く耳もたないんだろうなぁ…)



浩二は自分がこんなにお節介だとは思わなかった…と深い溜息をついた。


読んでいただきありがとうございます。

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