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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第五章 砂の大地

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修羅場。


「ただいまーっ!」



正午を少し過ぎた頃、タロスとナオが残り全ての探索を終え帰って来た。

しかし、浩二の返事は無い。



「どうやらマスターは不在の様ですね。」


「だね。ガラス工場の方かな?」


「行ってみますか。」


「うん!」



二人はそのまま戻る様に外へと出ると、迂回するように反対側のガラス工場へと向かう。



「あー、これ中からも行けるようにしないと色々不便かもね。」


「そうですね…後からマスターに進言してみましょう。」



そんな事を話しながらも、直ぐに現場へ到着する。


最初に気付いたのはナオだった。



「…猛っち、どうしたんだろ?」


「…何やら騒がしい様ですが…」



続いてタロスが異変に気付く。


二人は急ぎ扉を開け放つとそこには…



「マジで無理だってっ!何なんだよっ!この生産量はっ!」



用意されていた木箱は既に満載で、その隣に堆く積まれた石英ガラスのインゴット。

そして、水槽とインゴットが積まれた場所をまるで反復横跳びのようにひっきりなしに移動を繰り返す猛の姿があった。

誰に聞かせる訳でもない愚痴を叫びながら。



「どうやら此処にもいないようです。」


「そうだね。まだ仮拠点の方かな?」


「恐らくそうでしょう。」


「どうしようか?」


「このまま拠点で待ちましょう。そう遅くならない内にお帰りになるでしょうし。」


「だねー。」



そして、そっと扉を閉じようとする二人。



「テメー等っ!こっちは突っ込み我慢してんのに帰ろうとすんなや!」


「助けが必要でしょうか?」


「お願いしますっ!」



思わず敬語になる猛。

最早余裕は無いのだ。

そうこうしている間にも石英ガラスは水槽から溢れ出しそうになっている。



「何をしたらいい?」


「取り敢えず、ひたすらガラスをこっちに運んでくれ!」


「ラジャー!」


「了解しました。」



ナオとタロスは猛の指示通り、水槽内の石英ガラスを運んで行き、それを猛がひたすら積み上げる。

そして半刻程経過した頃、労働力が増えた事で少しづつだが余裕が生まれてきた。



「はぁ…山場は越えたな…」



ガラスを積み上げながら溜息混じりに猛が漏らす。



「多分だけど…今日は砂嵐が多かったのかもね。一応浩二も結界張る前に城壁の内側に積もった砂を見て逆算してたみたいだし。」


「推測ですが…やはり砂嵐の到達は不規則、もしくは長いスパンでの規則性があるのかもしれませんね。いずれにせよ、統計を取るには情報が少な過ぎます。」


「…まだ3日目だっけか?なら仕方ねーよ。そんだけの日数じゃ、不測の事態なんていくらでも起きるだろ。」



猛の言葉に深く頷く二人。



「恐らくマスターはこれからも常軌を逸したスピードで開拓を続けるでしょう。私に出来る事は少ないかも知れませんが、全力でサポートせねば。」


「タロスは本当に浩二が好きなんだね。」


「好き…と言うよりは敬意や畏敬の方が近いかも知れません。私はマスターの為ならば、生命を捨てる事に何の疑問も感じませんので。」



何の躊躇いもなく言い放つタロス。

間違いなく本心なのだろう。



「あー…多分だけど、兄貴はそう言うの望んでないぞ?」



タロスの言葉を聞いた猛は少し呆れながら口にする。



「これはあくまでも俺が兄貴と知り合ってからの話だからどうか分からんけど、多分タロスの事は家族みたいに思ってるんじゃないか?」


「家族…?」


「そ。もし、タロスが誰かに傷つけられたり破壊されたりしたら…兄貴が鬼の形相をしながら敵討ちに行く姿がリアルに想像できるよ。」


「あー、浩二なら間違いなくそうするね。」


「ほらな?長い付き合いのナオが言うんだから間違いねーよ。まぁさ、主人の役に立ちたい気持ちは分かるけどよ、生命捨てても構わないとかは兄貴の前では言わない方が良いな。」


「…分かりました。心に留めておきます。」



何やら思案顔をしつつも深く頷くタロス。

タロスにとっても、浩二が不快になる事を望んではいないのだから。



そんなこんな話をしていると、誰かが扉を開く。

この場合、誰かと言えば1人しか居ないのだが。



「おっ!みんな集まってなにしてるんだ?」



先程までの修羅場を知らない浩二はあっけらかんと口にする。

それに早速食いついたのは猛だった。



「兄貴、ちょっとコレ見てくれ。」


「ん?コレって…うおっ!?」



堆く積み上げられた石英ガラスを見て普通に驚く浩二。



「丁度昼ぐらいから今さっきまで、此処は修羅場だったよ。二人が来なけりゃ、間違いなく俺はガラスに埋まってたね。」


「…これはまた…予想を遥かに越えて来たなぁ。ごめんな猛。これは完全に俺のミスだ。…二人も、手伝ってくれてありがとうな。」



浩二は三人に対して深々と頭を下げる。

その反応に慌てる二人…猛とタロスだ。



「いやいやいや、そんなに謝らなくても良いって!完全に予想外だったんだろ?仕方ねーよ!」


「マスター!頭をお上げください!このぐらいの事でマスターが気に病む必要なんて微塵もありません!」



ワタワタしながら必死にフォローする。



「でも、何とかしないとね。一日にこの量来ちゃうと1人じゃ絶対捌けないよ?」


「だな。やっぱりもう少し日を重ねて統計取らなきゃダメだな。後、ここの対策も。…んー…猛?」


「なんだ?兄貴。」


「バイトの人数増やすか?」



人手が増えれば確かに問題は解決する…が。



「でもよ、明日もこの量来るとは限らないんだよな?兄貴の予想ではどのぐらいだったんだ?」


「せいぜい多くて400…そこの木箱8つ分位だと思ってたよ。」



浩二は部屋の隅の木箱を指差す。

浩二がシュレイド城から貰って来た木箱だ。

一応多目にと10箱貰って来ていたのだが。

今はその木箱も全て満載。

更にその横に木箱に入り切らなかった石英ガラスがその倍以上あった。



「ぱっと見後20は木箱が必要だな。」



ざっと石英ガラスのインゴットが1500個。

前日の分があったにしても、浩二の予想の4倍程になる。



「んー…ここまでの量が続くとは思えないんだが…何とも言えないからなぁ…」



どうしたもんかなぁ。

読んでいただきありがとうこざいます。

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