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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第五章 砂の大地

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拠点設備充実作業。


大灯台の光源がある部屋の床下。

そこに新たに部屋を作った浩二は、何も無い部屋の真ん中で何やら作業をしていた。



「取り敢えず壁は取っ払って柱に変えるか。」



そう言って壁側まで歩くと、壁に触れた右手に力を込める。

すると、厚さ1mあった壁が次々と柱へと姿を変えてゆく。



「次は…風魔法か…いや、先に物理結界だな。」



部屋の中心に戻った浩二は、床から天井まで届く円柱を作り出し、その中に『物理結界』と『魔素急速収集』を書き込み結界の範囲を指定した魔核を埋め込む。

すると程なくして六角形の結界が組み合わさる様に大灯台を中心に城壁ごと辺りを覆ってゆく。



「よし、そんじゃ次は風魔法だな。」



同じ要領で魔核に『風魔法』と『魔素急速収集』を書き込み円柱へと埋め込む。

それとほぼ同時に暴風とも言える程の風が物理結界をなぞるように城壁の外へと吹き降ろす。

風の発生源は部屋の中心と柱の丁度中間辺りらしく、浩二の立つ円柱付近は風の影響を受けない様だ。



「次は城門っと。」



次々と作業を終え、暴風が吹き出す柱の間から外へと飛び出すと出来立てホヤホヤの物理結界の上を滑るように城門へと向かう。



「おぉ!意外と楽しい!」



物理結界で出来た緩やかな傾斜を華麗に滑り降りながら、予想外の楽しさに思わず口にする浩二。

傾斜は若干緩やかだが、後ろから吹く強めの風が良い具合に加速をアシストしてくれる。



「ほっ!…と。もう少し長くても良いな。…っと、先に風の魔道具設置しなきゃな。」



距離が少し物足りなかったのか、残念そうに大灯台を見た後城門の改修にかかる。


門のアーチ状の形をそのまま伸ばすように石英ガラスのトンネルを10m程作り、その先に新たに門構えだけを作る。

こちらはゴテゴテした装飾等はせず、シンプルにアーチをなぞるような形にするに留めた。


次にトンネルの真ん中辺りの左右に、大灯台で作った物と同じ円柱を建てる。



「少し遊び心を出してみるかな…」



そう呟いて円柱に触れた手に力を込めると、城門に埋め込まれたものと同じ様な東洋の龍が円柱に巻き付くように現れ、その大きく開いた顎を城壁に沿うように向けていた。



「お、割といい感じ。後はこいつを埋め込めば…」



龍が持つ宝玉に『風魔法』と『魔素急速収集』を書き込み風の範囲を指定した魔核を埋め込む。

すると、宝玉が淡く光を放ち龍の口から暴風が吹き荒れる。


それを見て頷くと、逆側にも同じ様に龍を作り魔核を埋め込む。



「これで良し。さて…後は石英ガラス製造機か…」



城門を挟むように設置された二匹の龍が噴き出す風によって集められた砂が城門と逆側に溜まっている筈だ。


砂を巻き上げながら吹く強い風は一日に数度この辺りを襲う。

時間などは特に関係がないようだが、概ね日中に東の海側から吹く事が多い。

西側には低めの山脈があり、こちら側からは滅多に吹かない様だ…とは言え、まだここに来てから二日しか経っていないのだから、この統計は当てにはならないだろうが。


それはそれとして、少なくとも一日で大灯台をぐるりと囲む様に作った幅5m、深さ1m程の水源を半分以上埋めてしまう位の砂は毎日届くのだ。


それを利用すれば、少なく見積もってもあの枡で作った石英ガラスが200個以上出来る。



「…製造機はともかく…保管場所も作らなきゃ駄目だな。」



ざっと計算しただけだが、その生産量に嫌な汗が出る。



「…まぁ、一応備蓄って事で。」



先の事ばかり考えても切りがないと無理矢理納得した浩二は、ガラス製造機を作るべく城壁沿いに走り出した。



□■□■



「やっぱり数体のゴーレムは必要か…」



出来上がった製造機を目の前にして腕を組みながら一人呟く浩二。

足元には既に出来上がった石英ガラスが十数個無造作に転がっていた。


製造機自体は簡単に出来た。

高圧縮して作った土の枡を縦三列、横五列隙間なく並べ、そこに吹き込んだ砂が溜まったら『土魔法』で石英ガラスを作り出し、枡が纏めてぐるりとひっくり返れば足元には石英ガラスがゴロゴロ転がり落ちる…という、何とも雑な作りではあるが。


一応、『土魔法』が発動中は砂の入口が閉じ、ひっくり返った枡が定位置に戻ると同時に開くようになっている。


多少無駄な砂が出てしまうが、まぁ今の所は許容範囲だろう。


それよりも問題なのは…


このガラスを誰が整理するか…という事だ。

そうこうしている間にまた新たな石英ガラスが15個追加された。



「…取り敢えず、倉庫を作ってそこに積み上げるとして…後は散らばったガラスを集めるゴーレムと運ぶゴーレムが必要だな。」



一体はこの場所で落ちてくるガラスを受け止め、運びやすい様に積んで置く係。

もう一体はひたすら倉庫へと運んで積み上げていく係。



「作るにしても、材料は必要か…仕方ない、ソフィアにお願いしよう。…本当に世話になってばかりだな…」



浩二は小さな溜息をつくと、簡素な作りの石英ガラス工場を後にした。



□■□■



「あ、お帰りコージ。ナオとタロスもお疲れ様。」



今日の作業を終え、訓練所へと転送して来た浩二達をたまたま見掛けたソフィアが走り寄り話し掛けてきた。



「ただいまソフィア。」


「ただいまー!」


「ただ今戻りました、マスターソフィア。」



笑顔で迎えてくれたソフィアに三者三様の言葉を返す。



「あ、コージ。今時間あるかしら?」



思い出した様に浩二に問いかける。

多分石英ガラスの件だろう。



「あぁ、大丈夫だよ。丁度俺も話があったんだ。」


「なら都合が良いわね。私の部屋で話しましょ。」



訓練所に残ると言うタロスとナオに手を振り、ソフィアと共に彼女の部屋へ向かった。



□■□■



「単刀直入に言うわ。あの石英ガラスをもっと大量に欲しいの。」



部屋に着いてソファーに腰掛けたソフィアは、メイドに頼んだ紅茶が届く前にその口を開いた。



「大量?」


「えぇ。あの石英ガラスのインゴット…ドワーフ領にある兄の工房へ持ち込んだ途端に奪い合いが始まったわ…」


「マジか…」


「まぁ、こうなる事は分かってはいたんだけどね…あの石英ガラスの価値は計り知れないもの。」



小さく溜息をつきながらヤレヤレと首を振るソフィア。

そして、真面目な顔で浩二に向き直り言葉を続ける。



「このままでは収拾がつかないから、サンプルって事で大量に用意して工房へと卸すことになったんだけど…大丈夫かしら?この間、案外簡単に作れるみたいな事を言っていたから安請け合いしちゃったけど…」



少々申し訳なさそうに浩二を見る。



「それに関しては全く問題ないよ。で?どの位必要なんだ?」


「…そうね…差し当ってあのインゴットで200は欲しいわね。あぁ、勿論代金は払うわ。」



サンプルで200個。


あの倉庫に在庫が有り余る心配は…取り敢えず無さそうだ。

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