価値。
「売るって…ソフィアちゃんが売って欲しいって言ったの?」
「あぁ、取り敢えずドワーフ領へ持って行ってどのぐらいの需要があるか確かめて来る…って言ってあの石英ガラスの塊を持って行ったよ。今日俺達が城に戻るまでには結果が分かるらしい。」
「そっか、楽しみだね!」
「んー…楽しみと言うか…怖いと言うか…」
喜ぶナオを他所に微妙な表情の浩二。
素直に喜べないのは、金儲けが目的では無いからだろう。
軽い気持ちで聞きに行ったは良いが、まさかソフィアから売ると言う文字が出て来るとは思っても見なかったのだ。
浩二自身、求められれば無償で作る事さえ別に構わなかった。
相手に喜んで貰えるならば。
「正直金を貰ってもなぁ…って。」
「ならさ、物々交換にしたら?」
「物々交換?」
「そう。本当はお金を貰ってそれを買えば良いんだけど、お金を貰うことが心苦しいなら直接浩二の欲しい物に替えてもらえば良いんだよ。」
ナオの言葉にハッとする。
多分これから領内では手に入らないものが必要になる時が必ず来る。
今までは着の身着のままな事もありソフィアの世話になってばかりいた。
それが今は領地を貰った立派な領主。
いつまでもソフィアに甘えてもいられないだろう。
もしかしたら…ソフィアもその事を心配して『売る』なんて言葉を出したのかも知れない。
「そうだな。これから自領を運営するなら、きっと色々入り用になるだろうし…金は必要かもな。」
「納得出来た?」
「ああ。俺はさ…自分の作った物の価値を金って言うもので判断して欲しくなかったんだ。でも領地を貰ったからには、いつかは領民も養わなきゃならなくなるんだもんな…」
「そうだね。まぁさ、今は『今後の蓄え』って事にしておけば?」
「そうだな。ありがとうナオ。」
「良いよぉ、私は浩二のパートナーなんだから。」
浩二の感謝の言葉に照れ臭そうに笑うナオ。
そんな彼女な頭をクシャクシャっと撫でる。
耳がピクピクと跳ね、気持ち良さそうな表情を浮かべている。
「さて!気を取り直して城壁作っちゃうか!」
「うん!」
浩二は大灯台を中心に半径1km程を城壁で囲む事にした。
手狭になれば何時でも拡張すればいいのだから。
「高さは…10m位で良っか。」
遠目に大灯台を見ながらそう呟いた浩二は、地面に右手を置くと頭の中でイメージを固める。
城壁の上を歩ける位の厚さで、砂嵐の侵食に負けない様自動修復も付与する。
取り敢えず城門は後から設置するとして、形はシュレイド城の城壁をモデルに。
「よし!ナオ、気を付けてな。一気に行くぞっ!」
「はーい!」
イメージが固まった浩二は右手に力を込める。
次の瞬間、地響きと共に地面からせり上がってくる城壁。
砂煙を伴い辺りの岩盤と砂を巻き込みながら、どんどんと高く伸びてゆき…やがて地上10m辺りで静かにその動きを止めた。
「うん、こんなもんか。」
腕を組み頷く浩二の目の前には、大灯台をぐるりと囲む様に立派な城壁が聳えていた。
その色は石英を含んだ砂も巻き込んだからなのだろうか、大灯台より若干白っぽく、石材を綺麗に組み上げたような模様をしており、厚さが3m程ある城壁の上には見張り用の通路を挟むように凸凹とした低い壁が見えた。
「おお!立派な城壁だねー!」
軽々と飛び上がったナオは城壁の上ではしゃいでいる。
「よし、次は結界…と、その前に出入口作らなきゃな。」
このままではタロスが戻った時困るだろうからな…まぁ、タロスならばこの位の城壁なら軽々と飛び越えそうだが。
そんな事を考えながら、向かって大陸側…北の方角の城壁に右手を着くと、みるみる城壁が左右に割れ、綺麗なアーチ状の穴が開く。
それに合わせて周りの城壁も姿を変え立派な門構えを作り出す。
「なぁ、ナオ。城門って鉄製が良いのかな?」
「んー、どうなんだろう?シュレイド城は木製の扉に鉄で補強って感じだったけど。」
「開閉はゴーレム式にすれば重さはあんまり関係ないけど…もう、いっその事石英ガラス使っちゃうか!厚めに作って、中に竜の像を埋め込む感じで…」
そう言って近場の砂を集めてミニチュアを作りナオに見せる浩二。
「強度的に大丈夫かな…って浩二が作るなら問題ないか。」
「あぁ、そっちの方は圧縮率変えれば問題ないと思うけど。」
「良いんじゃないかな?別に城門で隠したいものも無いんでしょ?」
「無いな。よし、んじゃちょっと作って来るわ。」
そう言い残し霞のように姿を消した。
砂を取りに砂漠に向かったのだろう。
そして、小1時間後…巨大な石英ガラスの扉を二枚持って現れた浩二。
「…いやぁ…流石にこの重さの物を持って砂漠を歩くのは無謀だったわ…」
話によれば、何度か砂に埋まったらしい。
足元に『物理結界』を作ってその上を歩けばいい事に気付くのに暫くかかったそうだ。
「浩二って…時々抜けてるよね。」
「うっさい。」
気を取り直し扉を設置する浩二。
「うん、思ったよりずっと良いな。」
「うん、格好良いね!」
出来上がった城門を見上げる二人。
無色透明な城門は城壁の中をそのまま写しつつも、石英ガラスの中に埋め込まれた東洋の龍が、左右にまるでこちらを睨みつけているかのように浮いて見える。
互いの手には宝玉が握られており、それが淡く光り輝いていた。
一応ゴーレム式になっている為、事前に登録したもの以外が開こうとすればその超重量によりびくともしないだろう。
逆に登録さえしてあれば、まるで家のドアを開けるように軽々と開くことが出来るのだ。
因みに、今は浩二の魂が登録してあり、ナオ、タロスは問題なく開けるようになっている。
「さて…城門もこれで良しとして、取り敢えずタロスの様子でも見に行くか。」
「え?タロス探しに行くの?」
「いやいや、大灯台の上からタロスが設置した光源を見に行くだけだよ。日も暮れてきたし、そろそろ帰って来るだろうしな。」
時刻は既に夕暮れ時であり、地平線に太陽か隠れ始め辺りをオレンジ色に染めている。
「うわぁ…綺麗だね…」
「本当だな。」
大灯台の展望台の上で広大な領地を眺めながら溜息を漏らす。
沈みゆくオレンジ色の太陽が、遮蔽物の少ない砂漠の大地を文字通り一色に染めていた。
やがて数分と経たずに太陽がその姿を隠すと、静寂と共に極寒の夜がやって来る。
それと同時に見えてくる転々と灯された明かり。
「…おいおい。」
浩二が思わず突っ込みを入れる。
「うわぁ…タロス頑張ったねぇ…」
二人の眼下には数十という数の明かりが領内の彼方まで灯されていた。
読んでいただきありがとうこざいます。




