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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第五章 砂の大地

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共通点。


「ここがサーラ半島よ。」



ソフィアは地図の一箇所を指し示す。


ほぼ成り行きのように『魔王』となった浩二は、自らの領地へと帰る魔王達を見送った後、ソフィアに頼み自分の領地となった「サーラ地方」とは何処にあるのかを訪ねた所、地図を見せた方が早いと言う話になりソフィアの部屋へと一緒に来た訳だが…


浩二は自分の領地の事よりも更に気になる事が出来てしまった。



「…どうしたの、コージ?そんなに真剣に地図を見て…」


「あ、いや…ちょっと気になる事があってさ…」


「…何?」



浩二は言葉を選びなからゆっくり話し始めた。



「この地図が『ラシア大陸』の地図なんだよな?」


「そうよ。このラシア大陸がこの世界にある唯一の大陸よ。」


「…いや、この大陸の形…見た事があるんだ…向こうの世界で。」


「…え?向こうって…浩二の元居た世界?」



そう。

きっと誰でも見た事がある筈だ。

『ラシア大陸』って名前も多分そこから取っているんだろう。


その地図に書かれていた大陸は、どう見ても『ユーラシア大陸』だったのだ。


大まかに見ても分かるぐらいほぼ正確なユーラシア大陸の地図。

大陸以外に島など無く、日本も見当たらない。

アフリカ大陸も綺麗に切り取られ、本当にユーラシア大陸だけが切り抜かれた地図だった。


そして、ソフィアが指差す場所。

この大陸の最西端にある巨大な半島…サーラ半島とは、見まごうこと無く『アラビア半島』だった。



「まさか、こっちの世界でも砂漠地帯だとは思わなかった。」



確か記憶ではアラビア半島って南端以外は広大な砂漠地帯が広がっていた筈だ。

浩二は『ラシア大陸』と『ユーラシア大陸』の共通点などを踏まえてソフィアに説明した。



「へぇ…そんな事ってあるのね。」


「…いや、地図を見てびっくりしたよ。…それにこの大陸が唯一の大陸なんだろ?」


「そうよ。この大陸以外は世界の果てまでずーっと海よ。」


「世界の果て?」


「ええ、先には何も無い…ただ暗い世界に海の水が流れ落ちている、文字通り世界の果てよ。」



…え?

この世界って…球体じゃないのか…?


混乱する浩二。

どうやらこの世界は大昔の人が本気で信じていた『平面説』を地で行くものらしい。

後から女神さまに聞いてみよう。


地図を改めて良く見ると、山岳や平地の位置が微妙に違う事に気づく。

恐らくはあくまで『ユーラシア大陸』の形がモデルであって、そのものでは無いのだろう。


興味は尽きないが…取り敢えず自分の領地の確認が先だ。



「このサーラ半島ってここからどの位の距離なんだ?」


「そうね…ここから南西に大森林を抜けるのに100Km位で…そこから更に300Km位かしら?」


「…遠いな。」



歩いて行ける距離じゃない事は確かだ。



「一応近くの獣人領に転移陣があるにはあるけど…浩二には使えないわよね。一番手っ取り早いのはミラルダに頼んで『転送』で送って貰う方法ね。彼女なら、その一番近い獣人領まで飛べるから。」


「ミラルダさんか…後から頼んでみよう。」


「え?何?直ぐに行くの!?」



椅子に腰掛けていたソフィアが慌てて立ち上がる。



「出来れば早めに行っときたい。一度行けば転送で帰って来れるし。何より、自分の目で見てみたいんだ…自分の『領地』って奴をさ。」


「そっか、浩二なら直ぐに帰って来れるんだもんね。…あそこは不毛な土地だから、暫くは通いで開拓する事になるわね。食料とか現地調達なんてきっと出来ないだろうし。」


「行ってみないと何とも言えないけど…多分暫くは厄介になると思う。…領地貰っといて情けないけど。」


「何言ってるのよ。そんなの気にしなくて良いわ。」


「助かる。ありがとうソフィア。」



浩二の言葉に笑顔で頷くと椅子に座り直したソフィア。

安心したのだろう…いきなり浩二が居なくなってしまうと思って慌ててしまったのだから。

いつかはその時が来るのだろうが…今はまだ浩二やその仲間と楽しく暮らしたい。

そして、落ち着いて別れの時が来たら、笑顔で送り出そう…ソフィアは少し寂しく感じながらも、その素振りを見せないように振る舞う。



「何時でも何でも言ってね?もうコージは私達と同じ『魔王』なんだから。」


「そうだった…俺は『傀儡の魔王』なんだもんな。これからもよろしく頼むよソフィア。」


「ええ、ドンと来なさい!」



ソフィアは笑顔で胸を叩きそう答えた。



□■□■



「着いたわよぉ♪少し遠くに見えるあの森に獣人族の『王族』が住んでるわぁ。」


「街に直接ゲートを開かないんですね。」


「あぁ…獣人族ってのはぁ、ナワバリ…だっけ?そういうのに凄くうるさいのよぉ。」


「成程…送って貰ってありがとうございました。ここからは自分で行きます。」



ミラルダにペコリと頭を下げて背を向けた浩二の腕をガッチリ掴むミラルダ。



「水臭いじゃなぁい…私も一緒に行くわぁ♪」


「でも…ちょっと特殊な方法を試してみようかと思ってたんですが…」


「特殊な方法…?」


「はい。」



浩二は今から自分のしようとしている『特殊な方法』をざっくりとミラルダに説明する。



「…それ…大丈夫なのぉ?」


「…多分。」



心配するような…呆れるような、微妙な表情で訊ねるミラルダに自信なさげに答える。



「ん〜…一応全力で追いかけてみるわぁ。無理そうならそのまま帰る事にする。」


「分かりました。それじゃ、行ってきます…!」



少し覚悟を決めるような素振りを見せた後、浩二は斜め上の方へと軽く飛び上がる。


次の瞬間、遥か上空へと移動した浩二が何かに吹っ飛ばされるように急加速して見えなくなった。



「…アレに…追いつけるかしら…?」



ミラルダは溜息を一つつくと、全速力で浩二の飛んで行った方向へ走り出した。



□■□■



浩二が何かに吹っ飛ばされるように消えた直後、それは起きた。



「……っっ!!!」



慌てて進行方向へと足を向けその先に何十枚もの物理結界を重ねて展開する。

そして、結界を薄いガラスを次々と蹴り割るようにして徐々にスピードを落とし着地した浩二は、足で地面を削る様にして10m程進む事でやっと停止した。


全速力で追いかけて来ていたミラルダがその光景を目にし、慌てて駆け寄る。



「コージ君!大丈夫!?」


「あぁ…ミラルダさん…」



膝に手を付き肩で息をする浩二を心配そうに見詰めるミラルダ。

最上位種たる浩二がこれ程疲労する事態だ。

余程の事があったのだろう。


やがて息を整えた浩二がミラルダに向かい口を開く。



「…緊急事態です…」


「…何があったの?」



一拍置いた浩二が口にした言葉は驚くべきものだった。



「息が出来ません!」



別の意味で。

読んでいただきありがとうございます。

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