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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第四章 新しい種族と新しい魔王

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やり過ぎたお仕置き。


「…あんまり気が進まないわぁ…」


「このタイミングでそれはどうなんだ?」



丁度猛がモーニングスターを振り回し始めた頃、反対側で準備していたドルギスとミラルダが何やら揉めていた。



「だってぇ…コージ君が可哀想じゃなぁい…」


「…ギル殿はいいのか…?」


「あの爺様ならあの程度じゃ死なないわよぉ。」



恐らく浩二だって大丈夫だろう…と口に出そうとして飲み込むドルギス。

このままでは連撃が此処で途切れてしまう。


ドルギスは考えた。

ミラルダが進んで参加したくなるような魔法の言葉は無いものかと。


そして、閃く。

非常に気が進まないが…この際仕方が無い。



「ミラルダよ。コレはチャンスじゃないのか?」


「…何の事よ?」



首を傾げるミラルダ。



「今ならば、風の手越しとはいえ…コージの身体を合法的に弄るチャンスだと思うのだが…」


「………っ!」



ミラルダはバッ!と音がする程の勢いで振り向き、ドルギスに向かって叫ぶ。



「…ドルギスっ!貴方天才なのっ!?」


「………」



ドルギスにとって非常に不本意だろうが、ミラルダのヤル気が馬鹿みたいに上がった様だ。



「そうと決まれば…犯るわよ!ドルギスっ!」


「…お前…」



ミラルダの言葉に不穏な響きを感じつつも彼女の両肩に手を置き力を込める。


丁度ギルと浩二が逃げ出そうとしている。

絶好のタイミングだ。


ミラルダは膝を付き徐に自らの影に両手を突き入れる。


次の瞬間、ギルと浩二の影から現れる無数の腕。



「逃がさないわよぉ~?」



逃げない様に風の手を二人の足に絡み付かせながら妖しく笑うミラルダ。



「ふふっ♪コージ君♪お楽しみの時間よぉ♪…主に私の!」


「…程々にな…」



□■□■



「コレは…思った以上に…っ!」



執拗に絡み付く影から伸びた風の手。

浩二の方の手が若干邪な雰囲気を感じるのは気のせいだろうか?



「ドルギスの『影縛り』が付加されておるようじゃ…厄介じゃの…それに、見てみい。」



ギルは顎で上を示す。


その先には太陽があった。

正確には「太陽の様に輝く」猛のオリハルコン球だが。



「…アレ…ヤバくないですか…?」


「…ヤバいのぉ。」



浩二は急いで魔核を作り出すと、数種類の魔法を込めギルへと渡す。



「取り急ぎそれが限界です!何とか耐えて下さい!」


「これは何じゃ?」


「説明してる暇はありません!懐にでも放り込んでおいて下さい!」



言われるままにギルが浩二から渡された魔核を懐に仕舞い込んだ直後、真上から声が聞こえる。

小さな太陽の影になり見えにくいが…チラリと輝く銀髪が見えた。



「ナイスパスだよっ!猛っち!」



猛烈な回転による遠心力から解き放たれた太陽の様なオリハルコン球が向かう先には銀髪を揺らし、場違いなメイド服に身を包んだナオが待ち構えていた。


物理結界で足場を作り、パスと言うには些か速過ぎるオリハルコン球を全身のバネを使って蹴る。


真下にいる二人に向かって。


小さな太陽はナオの蹴りで鋭角に軌道を変え目にも留まらぬスピードで着弾した。



眩い光がシュレイド城を包む。


少し遅れて爆音と共に激しい揺れが城を揺らす。



「…危なかったぁ…」



見下ろすように城壁の上に居たシルビアが冷や汗をかく。

あの小さな太陽を見た瞬間、嫌な予感がしたシルビアは急いで物理結界と魔法結界を20枚づつ追加していた。

そして、今目の前で18枚目の魔法結界がガラスを割った様な音を立てて砕けたのだ。



「それにしても…」



視線を結界内へと向ける。



「…コージはともかく…ギル…生きてるかしら…?」



シルビアが、世界最強と言われる程の男であるギルの心配を始めた。

今彼女の眼下ではそれ程の事態が起きているのだ。


大爆発を伴い渦巻く灼熱の炎。

地面を焦がし、それでは飽き足りずやがてそれを溶かし始めた。

それ等は全てシルビアの張った結界により内側に封じ込められている。


結界の内側は語弊なく地獄だ。


若干引き気味にその光景を見ていたシルビアに上から声が掛かる。



「あの程度であの二人がどうにかなる訳無いでしょ!良く見なさい!」



そこには、ドラゴンの翼を羽ばたかせ宙を舞うソフィアの姿があった。

シルビアはソフィアに促され、注意深く結界の中心部を見た。



「あっ!」



目を凝らして見たそこには、炎など何の障害にもならないかの如くギルを心配する浩二と、青白いフィールドに包まれたギルの姿があった。



「分かったら、物理結界よろしくっ!気持ち厚めでねっ!」


「あ、ちょっと、ソフィアっ!」



シルビアの言葉に耳を貸さずソフィアは燃え盛る結界の真上へと飛び去る。

そう、真上へと。



「…嫌な予感しかしないわ…」



シルビアは慌てて物理結界を追加し始めた。

ソフィアがこれからするであろう攻撃に備えて。



□■□■



「大丈夫ですか!?ギルさん!」


「あぁ、お主のくれたコレのお陰で暑いぐらいで済んどるわい。」



胸の辺りで輝く魔核を服の上から軽く叩く。



「良かった…」


「…しかし、凄まじいのぉ…見渡す限り地獄絵図じゃ…」



浩二の渡した簡易結界で防ぎ切れない熱気を受け滝の様に汗を流しながら辺りを見回し呟く。



「…ギルさん、多分ですが…まだ終わりじゃありません。」


「なぬ!?」


「まだソフィアが残ってますから…そして、ソフィアの事だから…俺の『絶対魔法防御』じゃ防げない手で来ます。」


「……頑張るかの。」


「……ですね。」



□■□■



結界の真上に来たソフィアは『カグヅチ』を軽く振り回すと両手でしっかりと握り直す。

そして、下腹に力を込め軽く振り上げると、その場で高速で縦回転を始めた。


同時にカグヅチの魔核が光り輝き圧縮空気のハンマーヘッドを作り出す。

しかし、魔核の輝きは治まらない。

どんどん圧縮されてゆく空気。

その硬度は軽々とアダマンタイトを超えた。



「行くわよっ!」



たっぷりと遠心力を加えられた、直径3m余りの圧縮空気製ハンマーヘッドは結界の中心部目掛け振り下ろされた。


次の瞬間、あれだけ渦巻いていた灼熱の炎が嘘のように円形に避けた。

正確にはハンマーの風圧で霧散したのだ。


その中心には両手を上へ向け受け止める体勢の二人の姿が。



「喰らいなさいっ!」


「ちょっ!待つんじゃ!ソフィアっ!」


「ソフィアっ!手加減しろって!」



何やら騒ぐ二人に構わすハンマーを振り抜くソフィア。

そして、二人の手にハンマーが触れた瞬間、カグヅチの赤い魔核が輝く。



「メテオインパクトォッッ!!」



ソフィアの叫びと共にブースターの如くハンマーヘッドの反対側が火を噴く。

更に加速したハンマーは難無く二人を地面へと押し込み、更に大地を抉る。


今日一番の地響きと共に吹き上がる土砂と土煙。


やがて地響きと土煙が収まると…訓練所の半分程のクレーターが形成されており、その中心に立っていたのは肩をカグヅチでトントンと叩くソフィアただ一人だった。


そして、


遂に我慢の限界だったのだろう…


城壁がガラガラと崩れ落ちたのだった。

読んでいただきありがとうございます。

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