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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第四章 新しい種族と新しい魔王

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新しい魔法。


「…ふぅ。」


「…っっ!!」


「うおっ!?危ねぇっ!」



ソフィアの終了の声を聞いて浩二が姿を現す。

そこへすかさず放たれたアイスニードルを浩二は左手で消しさる。


視線の先には…怒りに震える麗子の姿があった。



「…アンタは私の魔法に恨みでもあるのっ?!」



拳を強く握り怒りに震えている。



「そんな物は無いさ。でも当たりたくは無い…麗子の魔法は痛そうだしな。」


「アンタはいつもいつもそうやって余裕ぶって…っ!」



いつの間にか麗子は涙を流していた。

相当悔しかったのだろう。



「…壁は高い方が良いだろ?まだまだ当たってやる訳にはいかないよ。」


「…この…ドS…っ!」



麗子は袖で涙を乱暴に拭うと浩二を睨み付ける。

しかし、その拳の力は既に抜けていた。



「…いつか絶対にクリーンヒットさせてやるんだからっ!」


「おう!頑張れよ。俺も負けずにもっと鍛えるからさ。」



浩二はそう言ってニカッと笑う。

麗子はまだまだ強くなる。

ゲームに負けただけでこんなにも悔しがれるんだから。


正確には浩二に負けて…だが。



「…コージ…何でグラビティゾーンの中で変わらず動けたの?」


「あぁ、ちょっとズルしたんだ。」



そう言って鎖を二本左手に持ちブラブラさせる浩二。



「アンタまさか…全力出したの…?」


「あぁ、流石に同じ様には動けなかったけどな。」



会話に割って入って来たソフィアの問に頷く。



「でも、上がるのは筋力と頑強だけじゃ…」


「これも筋力だろ?」



太股を軽く持ち上げパンと叩く浩二。



「私はてっきり『絶対魔法防御』をオンにしたのかと思ったわよ。」


「またまたぁ、兄貴はそんなズルしないって知ってる癖にぃ。」


「うっさいっ!!」



麗子に変な突っ込みを入れた猛の脇腹に肘がメリ込む。



「ぐあぁっ!」



脇腹を押さえ地面を転がる猛。

その姿を顔を赤くした麗子が睨んでいる。



「コレはちゃんと付けたままだよ。間違って結界に突っ込んだら大変だからな。」



浩二は首から下がったネックレスを摘まみ上げる。

そこには小さめの魔核がぶら下がり淡く緑の光を放っている。


今浩二の見せたネックレス。

これが以前ソフィアがシルビアに言っていた予防策である。


超高圧縮空気を身体全体に薄く纏い、体表面に展開している絶対魔法防御のフィールドに触れられないようにする魔道具だ。

名を『風の衣』と言う。


しかし、コレはあくまでも予防でしか無く、強力な魔法ならば貫通するし、浩二が本気で拳を振るえば容易く突き破れてしまう。

更に言えば、超高速移動をすると圧縮空気の膜がスピードに付いて行けず意味を成さなくなる。


もし、あの場にシルビアのグラビティゾーンが無ければ、足枷の鎖を外した浩二のスピードには耐え切れずグラビティゾーン自体も掻き消されていただろう。


しかし、グラビティゾーンが健在だった所を見れば、どうやら今回はギリギリ耐えてくれていたようだ。



「ねぇ、シルビア…」


「…何よ?そんなに真剣な顔して。」


「お爺様とコージの戦いの時…グラビティゾーン展開したままにしてくれるかしら…?」


「はぁ!?嫌よっ!ってか無理よ!アレは精神力消費半端ないんだからね?今回は訓練所の敷地半分を重力10倍にして5分保たないのよ?二人の戦いが5分で終わる?ってか10倍で足りると思う?」


「…足りないわね…ってか10倍位なら普通に城とか壊しそう…」


「でしょ?無意味なら疲れるだけ無駄よ。」



二人は顔を見合わせ疲れた顔をして溜息をつく。



「アレ…重力10倍もあったのかよ…」



肘打ちの痛みから蘇った猛が呟くように口にする。



「そんな中で姿が見えないレベルで動けるものなのか…?」


「鎖を両方外せば筋力10倍ですからね…それでもキツいと言えばキツかったですよ。」



舞と栞を引き連れ会話に混ざって来たシュナイダーに浩二が答える。



「…本当に兄貴は化け物だよな。」


「ええ、紛うことなき変態ね。」


「失礼だよなお前ら。」


「いやぁ、俺さっさと退場出来て本当に良かったわ。」



猛がしみじみと言う。



「猛はまだまだだな。俺と一緒にもっと鍛えなきゃな!面白い魔法も覚えた事だし。」



そう言って右手の掌を上に向け作り出す漆黒の球体。



「あっ!」



球体を見てそれが何かに気付くシルビア。



「重力魔法、約束通り見習いさせてもらいました。ありがとうございます、シルビアさん。」


「あはは…参ったね、全く…まぁ、約束してたし構わないよ。有効に使ってね。」


「はい。ありがとうございます。」



いつの間にか見習いされていた重力魔法を軽々と使う浩二に乾いた笑いを漏らすシルビア。

もう彼女の中で浩二は恐怖の対象から呆れた対象に変わっていた。



「ぐあぁっ…重いっ!重いって!」



浩二の重力魔法を足元に展開された猛が足をブルブル震わせながら浩二に訴える。


仲間内で笑い合う彼の姿は少なくとも世界の敵ではない…そう信じてシルビアはその輪の中に加わる。



「コージ君、もう少しこうした方が…」


「…あぁ、成程。」


「…え?ちょっ、シルビアさん?何兄貴に入れ知恵してるんスか!」



効率が上がり更に増す重力。



「ぐあっ!無理無理無理っ!足折れる!足折れるって!」


「頑張れっ!行ける行けるっ!」


「無責任な応援してんじゃねーよ!テメーも来い!」



不用意に近付いた蓮が猛に引きずり込まれる。



「うわぁ!お兄さんっ!無理っ!これ無理だよっ!」



猛と並んで足をブルブルさせながら無理無理叫ぶ二人。



「コージ君、魔法の維持キツくないの?」


「んー…あと半日ぐらいならこのまま行けますね。」


「アホか!半日とか死ぬわ!」


「出るよっ!猛!」


「ガッテン!」



プルプル震える足に鞭打って何とか加重力の範囲から脱出しようとする二人。



「そうはさせないわよ?」



麗子のアイスニードルが脱出しようとして踏み出した猛の足元に着弾する。



「うおっ!?麗子!テメーも…っくそっ!」



範囲に引きずり込もうとした猛の手が空を切る。

しっかり猛の手の届かない範囲から狙撃する辺り抜かりが無いな麗子。


しかし…



「私達も行くよーっ!」


「え?きゃっ!」



その麗子の腰を抱える様にしてわざわざ一緒に加重力の範囲に飛び込むナオ。



「ナオっ!アンタ…覚えてなさい…よっ!」


「あははっ!」



楽しそうに加重力の中を走り回るナオと予想外の事態に足を震わせながら叫ぶ麗子。



「浩二っ!もっと範囲広がらないの?」


「よし、んじゃ手狭みたいだし少し広げるか。」


「ちょっ!まっ!」



猛が拒否の言葉を口にする前に半径5m程だった範囲が一気に倍ほどに広がる。



「ナオのアホっ!」


「馬鹿じゃないの!?アンタ!」


「あーーっ!ダメダメっ!もう無理っ!」


「えー…楽しいよ?さっきのやつよりも重く無いし。」



責められるナオと怒る二人とマイペースな蓮。

流石はナオだ、良い具合にズレている。


これは良い訓練になるな…等とドMな事を頭で考えながら浩二は優しい目で悶える三人を見守っていた。

読んでいただきありがとうございます。

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