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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第一章 ドワーフは魔族!?

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パワーレベリング。


「パワースラッシュ!!」



勇者の木剣が淡い光を帯びて剣速が上がる。

ただの薙ぎ払いだとふんでいた浩二は慌てて勇者の懐に入り身体を回転させると、その身を勇者に預ける様に倒れ込み回転を利用して後ろへ回り込む。



「危ねぇっ!何だよ今のはっ!」


「チッ!避けんなやっ!」


「無茶言うなっ!」



当たれば明らかに痛そうな剣戟をなんとか避け、距離を取る。


昨日に引き続き、勇者達の攻撃が明らかに変わっていた。

昨日までは重くなっていただけだった攻撃に「必殺技的な何か」が追加されていた。

下手に受け流そうものなら、身体ごと持って行かれそうになる。



(せめて攻撃出来れば……あ!……良し、試してみるか…!)



浩二は何かを試す様に身体を動かし始める。



「無視すんなや!このッ!パワースラッシュッ!!」



それを見た勇者は、自分に構わず何やら始めた浩二にイラついた声を上げ、再び力の乗った横薙ぎを放つ。


横薙ぎに振るわれた剣の先端が浩二を襲う…が、又もや身体を回転させるよう懐に入ると、後ろ足に重心を乗せ左手を軽く突き出す。



(ここだっ!)



半歩踏み込み引かれた左手の代わりに軽く握られた右拳が前に出る。

狙うは木剣の付け根。

瞬きする間の出来事だった。


ゴッ!と硬いもの同士がぶつかる音がしたと思ったら、浩二の身体の右側から何かが回転しながら飛んでいき、訓練所の壁に当たると甲高い音を立てて転がり落ちた。


すぐに勇者と距離を取る浩二。

目の前には持ち手から先のない木剣を握った勇者が立ち尽くしていた。



(ふぅ…何とか成功したか…。)



浩二は折ったのだ。

勇者を攻撃出来ないならと、勇者の持つ武器を。

スピードの乗った先端ではなく根元を狙って。



「クソったれッ!」



勇者は悔しそうにグリップだけになった木剣を地面に叩き付けると、次の勇者と交代する為下がって行った。


しかし、次の勇者がなかなか場に現れない。

何かと思い辺りを見回すと何やらザワついている。



「おい…アイツ折ったぞ…?」


「あの木剣ってかなり丈夫じゃなかったか?」


「全力で打ち合いしても折れないんだぜ…?」


「アイツの拳って何で出来てんだよ…。」



兵士達がヒソヒソとこちらを見て話している。

どうやら驚かせてしまったらしい。

そんなに丈夫なのか?ここの木剣って。


しかし、目を見開く兵士達の中から場違いな声も聞こえてきた。



「ガハハハハッ!盛大に折れたなぁ!良かったな、勇者様!折れたのが木剣(・・)でよぉ!ガハハハハッ!」



スミスだ。



(…全く…まぁ、スミスさんはあの拳の痛み知ってるからなぁ…。)



相も変わらず空気を読まずに勇者達を煽る。

しかし、煽られた勇者達は何故か青ざめている。


勇者達はスミスの言葉で気付いたのだ。

浩二がわざと(・・・)木剣を狙った事に。

そして、想像したのだ。

その拳が自分に(・・・)当たればどうなるかを。



「し、終了だ!終了っ!さぁ!勇者様方っ!アチラで休憩を!」



こちらを睨みつけながら何時もの共犯者が勇者達を訓練所から連れ出す。



(あの兵士のオッサンの方が空気読めるじゃないか…。)



遠くでこちらにガッツポーズをしているスミスを見て浩二は溜息をつく。


ふと勇者達の方を見ると、先程木剣を折られた勇者が凄い形相でこちらを睨んでいた。



(やれやれ…コレは面倒臭い事になるかもな…。)



頭を掻きながら浩二は勇者が居なくなるまで訓練所に立ち尽くしていた。



□■□■



「パワーレベリングだな。」



スミスが浩二の拳を何やらサワサワしながら言った。



「パワー…レベリングですか?」


「あぁ、手っ取り早くステータス上げたいなら、それが一番早いからな。」


「普通のレベリングとは違うんですか?」


「んーとだな…普通は己の技量に合った敵を倒してレベル上げるだろ?に対して、パワーレベリングは己の技量以上の敵を弱らせて貰って(・・・・・・・)止めだけ刺すんだよ。まぁ、ズルだな。」



確かにそれなら普通に入る経験値なんか比べ物にならないぐらい経験値が入るだろうけど…



「でも、それじゃ…」


「気付いたか?」


「技量が付いていかないんじゃ…。」


「その通りだ。ステータスに対しての技量不足、これがパワーレベリングの弊害だな。」



己の技量に合った敵と戦い続ければ、自然とそれに見合った動きを身体が覚えていく。

しかし、ステータスだけが先に上がってしまうと、筋力やスピードに頭がついていけない。

攻撃や回避のタイミングが合わなくなるのだ。



「まぁ、それもその内慣れてくるでしょうね。」


「だな。コージとの訓練は正にうってつけって訳だ。」


「なんて迷惑な…。」



体を張ってるこっちの身にもなって欲しい。


ところで



「何故にさっきから俺の拳をサワサワしてるんです?生憎俺はそっちの気は無いんですが…。」


「いやぁな、あの木剣を折っておいて傷一つ無いからよ。実際硬いんだぜ?あの木剣。」



実はあの木剣、龍樫と言う物凄く硬い樫の木から作った物らしい。

値段もそれなりに高く、今ではなかなか手に入らないものみたいだ。



「実の所、俺にも分からないんです。ただ…」


「ただ?」


「師匠が言うには、「気」を使い内気圧を高める事で外部からの衝撃に強くなる事は出来る…らしい。」


「気って何だよ。」


「んー…俺も詳しくは知らないですけど…師匠曰く「己の内より出でて己にのみ作用するもの」だったかな?」


「なんだそりゃ。」


「さぁ?俺だって知りたいですよ。でも、立禅はこの「気」を練ることも目的のうちみたいですね。」


「魔力みたいなもんか。」


「俺はその魔力の方を知りたいですよ。」



何も無い場所から火の玉を出すんだから。



「今度舞の嬢ちゃんに聞いてみたらいいんじゃないか?」


「あぁ、確かに。でも、そうそう簡単にここには来れないでしょ?」


「まぁな。」



なんてフラグじみた話をしていると



「あーーっ!いたいた!」


「蓮ちゃん!ちょっと静かにしないと…!」



しっかりフラグを回収したナオを抱いた舞と、あの火の玉少女が連れ立って地下牢に現れたのだった。





何故か浩二がスミスに対してタメ口になってしまっていた会話を修正しました。


読んでいただきありがとうございます。

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