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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第四章 新しい種族と新しい魔王

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『魔導の魔王』


目の前に出来上がる六角形のゲートを見てシルビアが浩二へと向き直る。



「コージは『絶対魔法防御』を持ってるのよね?何で魔法が使えるの?古い文献によれば『絶対魔法防御』を得た人物は必ず魔法が使えなくなるって記されてたけど…」



浩二が『絶対魔法防御』を手に入れるまで、この世界でこのスキルを得た人物は数千年前が最後であり、残されている書物もかなり古い物になっていた。

だからだろう、シルビアは浩二が『絶対魔法防御』を持つと聞いてから久しぶりに湧き上がる好奇心を抑えられずにいた。


エルフという種族は長命で知られ、その長い時間を使って行う何らかの趣味を持つ。

そして、種族のほぼ全てが高い魔力を有しているエルフは大抵魔法や魔術等を趣味とし、長年に渡り研究を続けたりしているのだが…

例に漏れず彼女…『魔導の魔王』シルビアもその一人だった。


類希な魔法の才能を発揮し、数々の魔法や魔道具を作り出し、本来数十人規模で行う儀式魔法ですら彼女たった一人で行うことが出来た。

故に『魔導の魔王』なのだ。


魔法に関してはほぼ知らぬ事は無い程の彼女が実際に見た事の無い魔法『絶対魔法防御』

可愛そうだが、魔法馬鹿であるシルビアに目を付けられた時点で浩二の逃げ場は無い。

それ程までに彼女の魔法に対する知識欲は強いのだ。

一番の方法は、当たり障りなく彼女の知的好奇心を満たしてやる事だけ。



「えーと、リッチーとの戦いで右腕を切り落とされた時に『再生不可の呪い』を右腕の切り口に施されたんです。多分そのせいで切り口の部分だけは身体の一部として認識されてないみたいで…」


「成程…その切り口が魔法の出入口になってるのね。…コージ、やっぱり貴方面白いわ。」


「…はぁ。」



どうやら一応は彼女の中で満足出来る答えが出たようだ。


急にグイグイと迫って来るシルビアに若干引き気味の浩二。

嫌ではないが、色々調べられてるみたいで落ち着かないのだろう。



「ほら、シルビア。チャッチャと終わらせちゃいましょ。」



そんな浩二の気持ちを察したのか、ソフィアが助け舟を出す。



「あぁ、そうね。それじゃ、行きましょうか。」



そう言うとピョンとゲートに飛び込むシルビア。



「あんなだけど悪い人じゃないのよ?ちょっと長生きしているせいで珍しい事に出会う機会がなかなか無いからコージに興味を持ったみたいね。」


「いや、大丈夫だよ。何だか魔法に詳しそうだから俺も色々聞いてみたいし。」


「そりゃ、伊達に『魔導の魔王』やってないからね。」


「ほらぁーっ!早く来なさいよ!」



ゲートの向こうからシルビアの催促する声が聞こえる。



「それじゃ、行きましょ。」


「あぁ。」



二人は顔を見合わせて笑うとゲートへと飛び込んだ。



□■□■



「えーと…私の知る限りサキュバス領にこんな壁無かったんだけど…」



サキュバス領をぐるりと囲む10m級の土壁を見てシルビアが唖然とする。



「あ〜ソレはコージ君が作ったのよぉ~♪」



浩二の腕に絡み付いていたミラルダが何処か自慢げに語る。

次の瞬間ギュン!と音がするぐらいの勢いで浩二の方を向くシルビア。

若干反応が怖い。



「あぁ、それは…」


「ちょっと待ってコージ!シルビア、先ずは転移陣を完成させてからよ。その後でゆっくり話すわ。」



素直に答えそうになっていた浩二の言葉を遮りソフィアが口を挟む。

ここで起きた事を今話し始めたらいつまで経っても転移陣が完成しない気がしたのだ。



「むう…絶対よ!ほら、ミラルダっ!何時までもコージに絡み付いてないで行くわよっ!」


「あぁん…もう、分かったわよぉ~…コージ君、また後でねぇ♪」



グイグイと引っ張るシルビアに引き剥がされ残念そうな顔を浮かべながら連れ去られるミラルダ。



「全く…あの好奇心の塊は何とかならないのかしら…」


「何か…色々凄いねシルビアさん。」


「何他人事みたいに言ってるのよ。アンタがこのサキュバス領でやった事忘れたの?多分それ全部説明付きで回る事になるから覚悟しときなさい。」


「マジか…」



浩二はこのサキュバス領で10m級の土壁で領を囲み、堰き止めた川の代わりに水源を作り、溜池には水を魔素へと変換する魔道具まで作っているのだ。



「今日一日で終われば良いわね…」


「…うわぁ…俺、今の内に帰って良い?」


「…コージ、それは無理そうよ…」



ほら、とソフィアが指差す方向にはこちらに向かい猛ダッシュしてくるシルビアの姿があった。


浩二はその日、サキュバス領をシルビアと共に走り周り何とか全ての場所を周り終えた時には空は既に明るみ始めていた。



「…えーと、シルビアさん。お話があります。」


「ん?何かな?」



やっとの事でミラルダの家まで辿り着きソファーに深く腰掛け額を抑えたまま浩二はシルビアに告げる。



「…もう少し自重して下さい。流石にコレはキツい。」


「えー!これでも控え目にしてるつもりだよ?」


「…マジですか…?」


「うん、こんなに楽しいのはもう数十年ぶりだしね。」



数十年ぶりとか、余程刺激に飢えていたのだろう。

強めに言い含めようとしていた浩二も少し気の毒になって来ていた。



「でも、うん。そうだよね。これじゃコージ君に何のメリットも無いもんね。…ん~…それじゃ、コージ君の望む魔法を見せてあげるよ。君の『見様見真似』を使えばコピー出来るんでしょ?」


「…ソレは…なかなか魅力的な提案ですね。」


「でしょ?早速今回のお礼に何か見せてあげるよ。何が良い?」



腕を組み唸りながら考える浩二。

見せて貰えるなら、今覚えている四属性以外の魔法が望ましい。

しかし、浩二はそれ程魔法に詳しい訳では無い。

ならば聞けば良い。

目の前に魔法のスペシャリストがいるのだから。



「えーと、シルビアさん。火、水、風、土、以外にどんな魔法があるんですか?」


「そうだなぁ…光、闇、重力、空間、時なんかがあるかな?」



何だか急にファンタジー色が強くなって来たな。

時魔法とか時間を巻き戻したり出来るのだろうか?

空間魔法ってゲートとかのアレだよな?


精神的に疲れていた筈の浩二だったが、新たな力の入口を目の前にして年甲斐も無くワクワクが止まらなかった。



読んでいただきありがとうございます。

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