アニマルマシナリー(5)
「で、ここからが本番だ。その盾は鉄球になる…正確にはオリハルコン球だが。」
「マジか!?…マジロ。…おおっ!」
マジロに声を掛けると、盾だった物がまるでマジロが球体になる時の様に瞬時に球体へと姿を変えた。
そして左腕の手首辺りから鎖が伸びその球体に繋がっている。
右手で鎖を持った猛は球体をブンブンと振り回す。
そしてその軽さに驚く。
「なぁ、コレ随分と軽いけど…」
「そりゃ、猛の体の一部みたいなもんだからな。契約に血を使った理由もそれだよ。」
「へぇ…実際はどの位あるんだ?」
「んー…軽く5、60kgはあるんじゃないか?」
「はぁ!?」
素っ頓狂な声を上げる猛。
そりゃ、無造作に振り回している鉄球がそんな重さだと知ったら驚くだろう。
「それから、その鎖もある程度自由に長さを変えられる上に、火属性の魔法を流し込んで鉄球に付与出来る。つまり『紅蓮の篭手』の力をそのまま鉄球に付与出来るって事だ。」
「それって…バーストエンドも…」
「多分OKだ。」
「おお…戦闘の幅が広がりまくるな!」
「後、盾の形も色々変えられる筈だから色々試してみてくれ。」
「了解だ!サンキューな兄貴!」
「おう!」
鉄球を盾に戻した猛が浩二に礼を言う。
「さて、最後は麗子だな。」
「…御手柔らかに頼むわ。」
浩二の肩に留まる鷲をチラリと見ながら麗子は浩二の前に歩み出る。
しかし、一向に浩二の肩から離れようとしない鷲。
ただただ麗子の事をその鋭い双眸でじっと見詰めている。
無言で見詰め合う麗子と鷲。
麗子も目を逸らすのは負けた気がすると言わんばかりに鷲の事を睨み付ける。
どれ位そうしていただろう、数分か数十分か。
そして、変化は突然訪れた。
麗子の両手が光り輝き、右手にはオリハルコン製の黒光りした弓懸が、左手には弓の握りのみが現れた。
弓懸は人差し指、中指、親指の三本が覆われた三掛と呼ばれる形の皮手袋の様な物だ。
本来は鹿の皮を使うらしいが、今麗子が装備しているのはオリハルコン製だ。
当然柔軟性は持たせてあるが。
「何よ…コレ…」
「…へぇ。」
「…何よ…ニヤニヤして。」
浩二は鷲の意図を理解しニヤリとする。
カンに障ったのか麗子は浩二に食いつく。
「多分だけどコイツの考えが分かってね。」
「何なのよ…教えなさいよ!」
「恐らくコイツは麗子と決闘がしたいのさ。」
「決闘!?」
麗子が浩二の言葉を聞いて驚く。
「あぁ、コイツは生まれてすぐに俺に襲い掛かって来る様なじゃじゃ馬だからな。まぁ、瞬動で首根っこ捕まえたら大人しくなって今はこうだけど。」
「…可哀想に。」
「…えーと…襲われたの俺だよ?」
鷲の事を同情混じりの視線で見詰めると、バツが悪かったのか鷲はプイッと首を回して視線を逸らした。
「ふふっ、何だがその子とは仲良くやれそう。」
何だか自分と似ているからと笑う麗子。
「そうなれば俺も嬉しいよ。先ずは先に説明しとくか。この鷲だが、麗子用に作ったその弓と弓懸、弓の方は『ミラージュ』弓懸の方が『メビウス』って名前なんだが、その二つに『皇帝鷲の風切り羽根』って素材を追加して作ったんだ。」
「皇帝鷲って…まさか…」
「あぁ、確かエンペラーイーグルって呼ばれてる筈だ。」
「鳥類系の最上位種じゃない!」
「まぁ、コイツがそのまま最上位種って訳じゃないしな。何せ俺程度に首根っこ掴まれるんだから。」
「…比べる相手を間違えてるわよ、それ。」
浩二の肩の上で縦ラインが見える程ズーンと沈んでいる鷲。
可哀想な話だが、浩二からしてみれば例え最上位種とは言えど鷲は鷲なのだ。
「もう、許してあげなさいよ…それより、説明の続きをお願い。」
「そうだな。まず『ミラージュ』から。その弓…ってかグリップは握ったまま麗子が頭で思い浮かべた弓がそのまま形になる。和弓であろうが洋弓であろうがね。」
「へぇ…なる程ね。」
言葉にした麗子の左手には既に和弓が握られていた。
「恐らく弦の強さや張り、弓のバランス何かも想像通りの筈だ。」
「…この弓…向こうでは値段が高くて友人から借りて数回しか使った事が無かったのよ。…でも…この感じ…うん、間違いなさそう。」
親指に弦を引っ掛け数度引いた後麗子がそう呟く。
彼女が言うのだから再現度は申し分無さそうだ。
「次は『メビウス』だ。そのグローブ…弓懸って言ったか?その弓懸には四属性魔法を込めた魔核を仕込んである。だから頭で考えただけでどんな属性の矢も具現化出来る。しかも魔素が続く限り無限に。」
「『メビウス』なんて大層な名前だと思ったら…」
麗子が一本の赤い矢を具現化し、弓に番え空に向かい放つ。
勢い良く放たれた矢は赤い軌跡を残しながら城の結界にぶつかり霧散した。
「…なる程ね…大体理解したわ。」
「よし、それじゃ好きなタイミングで始めてくれ。」
その言葉を発した瞬間、浩二の肩から飛び立つ皇帝鷲。
そのまま上空でホバーリングする。
本来なら鷲はそんな事は出来ないのだが…風魔法の応用だろうか?
等と考えていると、物凄い勢いで麗子に迫る皇帝鷲。
寸での所で側転で躱した麗子の髪を鋭い鉤爪が掠める。
「いきなりなのね…全く。」
冷や汗をかきながらも何とか軽口たたく。
間髪入れずに次々と滑空してくる皇帝鷲。
そのスピードは攻撃魔法のソレを軽く超えていた。
しかし、
「ふふっ、どうしたの?当てる気が無いのかしら?」
挑発じみた口調で煽る麗子。
その動きに余裕など感じられないが、何故か口元には笑みが浮かんでいる。
ソレがカンに障ったのだろう、明らかに皇帝鷲の回転が上がった。
だが、その攻撃を紙一重で躱し続ける麗子。
(今のヤバかったぁっ!…でも、躱せ無いスピードじゃない!…ナオのお陰…かな?)
心の中を読まれないように努めて平常を装う。
もっともっと皇帝鷲のプライドを刺激する為。
そして、攻撃が大振りになるまで。
弓の弦に親指を掛けたまま、ただひたすらに避けて避けて避けまくる。
(来たっ!)
麗子は待ちに待ったタイミングに合わせるべく弓を持つ左手に力を込めた。
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