アニマルマシナリー(3)
「まぁ、待て。さっき身体が軽く感じるって言ってたけど、それはオルトロスの能力なんだ。身のこなしや素早さが上がる魔法が常時掛かり続ける。だから、銃身の下側に刃を取り付けた。素早さを活かして近接でも戦えるようにね。」
「ありがとう、お兄さんっ!もっともっと特訓しなきゃだねっ!」
蓮は新たに得た力を試したくて仕方が無いようだ。
恐らく犠牲者は…猛、頑張れ。
「次はソフィアだな。」
「ドンと来なさいっ!」
「…気合い入ってるね?」
「アレだけの物を見せられて平気な訳無いでしょ!でも大丈夫!心の準備は出来てるから!」
さっきから静かだと思ったら、心の準備してたのか。
「それじゃ、早速。」
浩二はずっと自分の後ろに隠れていた小さな赤いドラゴンを抱き上げソフィアに差し出す。
「…ドラゴンパピー…?」
「あぁ、少々怖がりでね。ずっと俺の後ろに隠れてたんだわ。」
ソフィアに向かい合うように抱き抱えられたドラゴンパピーは円な瞳でソフィアを見詰めている。
「可愛いわね…何よ、身構えて損したわ。…ほら、おいで。」
ソフィアが笑顔で両手を差し出すと、ドラゴンパピーは小さな翼をパタパタさせてソフィアの胸に飛び込む。
「ふふっ、いい子ね。」
ソフィアに抱かれ安心したのか、頭を擦り付けて甘えている。
しかし、どんなに小さくてもドラゴンはドラゴン。
後にそのスペックに驚愕する事を今のソフィアは知らない。
なにせ生み出したのは浩二なのだから。
「はい!ソフィアちゃん!」
「あぁ、ありがとう蓮。」
ナイフとポーションを受け取ったソフィアは指先を切りドラゴンパピーに差し出すと、パクッとソフィアの指を咥える。
全身が淡く光り出すドラゴンパピー。
気のせいだろうか…?
若干身体が大きくなった気がするが。
「クルルッ!」
「ふふっ、あなたの名前はラヴァよ。よろしくね。」
「クルルッ♪」
光が収まり再び甘え出すドラゴンパピーを優しく撫で名前を呼ぶと、嬉しそうに喉を鳴らす。
そして、少し真剣な表情に戻るソフィア。
「さぁ…ここからが本番よ。ラヴァ、お願い。」
「クルルッ!」
ソフィアに抱かれていたラヴァが彼女の願いを聞き入れその肩に飛んで移動する。
そして、眩く赤い光にソフィアごと包み込まれる。
やがて収まる光。
そこには深紅のドレスアーマーを身に纏ったソフィアが『カグヅチ』を片手に佇んでいた。
驚くべきは背中にドラゴンの翼が、更に尻尾まで生えていた事だ。
そして何より一番驚いているのはソフィア自身だった。
「翼と…尻尾…?」
確認の為軽く動かすつもりで翼をはためかせた瞬間宙に浮くソフィア。
「きゃっ!」
しかし、声とは裏腹に尻尾が上手くバランスを調整しているのか、地面から数mの所でホバーリングする。
「私…飛んで…る?」
「ソフィアちゃん!凄ーいっ!」
飛んでいる本人が一番信じられない様子だ。
蓮はそれを見てはしゃぎまくってるし。
「ソフィア!説明するから降りてきて!」
「え?どうやって?」
「さぁ?」
「さぁ?ってアンタっ!…あ、降りられたわ。頭で考えるだけで良いみたい…便利ね。」
「いきなり飛ぶからだよ。」
「私だって飛ぶつもり無かったわよ!」
「まぁ、いっか。説明聞くだろ?」
「アンタ…憶えてなさいよ…聞くわ、お願い。」
少し涙目のまま浩二を睨むと新装備の説明を求める。
「えーと、ソフィアの『カグヅチ』に使ったのは『赤龍の鱗』だよ。」
「……え?まさか…」
「そう。ソフィアのお祖父さんが冒険中に道に迷って偶然入り込んだ『赤龍の巣』から出る時に赤龍本人から貰ったあの『赤龍の鱗』だ。」
「ちょっ!あの鱗はお祖父様に貰った大切な…」
「だって使っても良いって言ったろ?俺も一応悩んだけど、ソフィアの装備を作るならお祖父さんも許してくれるかな…ってさ。」
「……はぁ…まぁ、良いわ。…もう、またお祖父様に報告する事が増えちゃったじゃない!」
ソフィアは額を押さえ首を振る。
『赤龍の鱗』
ソフィアの祖父が冒険者だった頃。
1人で大山脈を登っていた時の事。
深い霧に包まれ道に迷ってしまった彼は偶然赤龍の巣へと迷い込んでしまった。
赤龍とは宝の番人とも言われ、自らの巣に財宝を溜め込む習性があるらしく、その宝を奪おうとする者には苛烈な罰を与えると言う。
もちろんそのつもりなど一欠片も無かったソフィアの祖父は激怒する赤龍に対して宝など興味が無い事を何度も説明した。
すると今度は「我の宝に価値が無いと言うのか!」と更に怒り出す始末。
頭を抱えつつ彼は思わず口にした。
「この様な財宝よりも貴方の鱗一枚の方が余程価値がある。」
と。
すると、その言葉を聞いた赤龍が目を丸くした後鼓膜が破れるかと思う程の大音量で笑い出したのだ。
そして彼にこう言った。
「我の集めしこの宝よりも我の鱗の方が価値があるとは…最高の褒め言葉だ。その言葉に免じて今回は見逃そう…小さき者よ。」
と。
そして、「久しぶりに愉快だった。褒美にコレをやろう。」そう言って自らの右腕から鱗を一枚剥がし彼に与えた。
赤龍自らが剥がした鱗。
その価値は計り知れない。
本来『龍の鱗』とは偶然剥がれ落ちたり、死した後剥がされたりする物なのだが、その場合「龍の力」が鱗に宿らない。
それでも並外れた硬さに軽さ、加えて高い魔法防御力まで備わっているのだ。
しかし、生きた龍から剥がした場合。
その鱗に宿る力は数倍などでは断じて無い。
ましてや龍自らが剥がしたとなればオリハルコン等よりも遥かに高価値なのだ。
その鱗はある意味「龍の分身」と言えよう。
幼い頃祖父の冒険譚が大好きだったソフィアは彼から『赤龍の鱗』を見せて貰いこの話を聞いた時、目をキラキラさせて祖父に鱗を強請ったのだ。
大切な孫の頼みだと彼はソフィアに『赤龍の鱗』を譲った。
それからその鱗はソフィアの大切な宝物になった。
実を言うと『対極の牙』も祖父にお強請りして手に入れた物らしい。
ソフィアのお祖父さんって実は凄く孫を溺愛している良いお爺ちゃんなのかも知れないな。
凄く強いらしいけど…
読んでいただきありがとうございます。




